ノースカロライナが メタバース 分野のシリコンバレーとなる理由:「優れたインフラと、優秀な人々との出会いがある」

DIGIDAY

ハイテク企業、大学、そして最高レベルのネットワークインフラが組み合わさることで、ノースカロライナ州はメタバースをはじめとする未来の技術開発の次の中心地になるかもしれない。

ノースカロライナ州は、1950年代から技術開発の中心地となってきた。50年代に端を発して複数の地元の大学が地域に集中したことで、州内の9郡の地域は「リサーチトライアングル(Research Triangle)」と呼ばれるに至っている。

「デューク大学(Duke)、ノースカロライナ大学チャペルヒル校(UNC Chapel Hill)、ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)と、リサーチトライアングルには、アカデミズムのジェット気流が存在する」と没入型メディア企業、カトルフィッシュ(The Cuttlefish)の創設者で、6年前にノースカロライナ州に移住した元ニューヨーク市民であるエヴァン・シェクトマン氏は言った。「全国からたくさんの人がここに来て、ここに留まっている。これはあまり誰も予想していなかったことだ」。

Appleも新たなキャンパスを建設予定

実際、ノースカロライナはこの2年間で、開発者、デザイナーなど、大手テック企業やその界隈で仕事を探している人々が狙う場所の一つとなった。2021年4月、Appleはリサーチトライアングル地域に新しいキャンパスを建設するために10億ドル(約1300億円)を投資すると発表した。この決定の前には、エピックゲームズ(Epic Games)がノースカロライナ州ケーリーにあるショッピングモール跡地に新本社を建設する計画の発表があった。

ノースカロライナは、特に州都ローリーを中心として比較的強力なネットワークインフラを持つことから、メタバース志向の企業にとって魅力的な場所である。

「ここは多くの事業にとってのテスト都市となっている」とデジタルマーケティングと広告サービス企業メディア.モンクス(Media.Monks)のイノベーションと創造的ソリューション部門シニア・バイスプレジデントであるルイス・スミシンガム氏は言う。メディア.モンクスはパンデミックの間にニューヨークからローリーに移っている。「ここではGoogleファイバー(Google Fiber)を400ドル(約5万2000円)で持っている。これはあり得ない設備だ」。

「誰もが完璧なファイバーを敷設している」と、シェクトマン氏は言う。「天候も通信帯域幅に一定の影響を与えていることは言うまでもない」。

パンデミックによって授業員たちが完全なリモートワークを余儀なくされた際にも、ローリー周辺には高性能なネットワークインフラが整備されていたことで、テック業界、ソーシャルメディア、ゲーム業界など、メタバースの先駆け的な高速通信帯域分野の企業の従業員がこの地域に集まった。このようにテック従業員たちが新しく流入してきたことで、スミシンガム氏のような個人にとって新たなネットワークを作る機会を生んでいる。彼は初めてノースカロライナを訪れた際、空港のラウンジでテック業界の従業員たちに出会ったことから、そこに引っ越すことを確信したと語った。

「(空港のラウンジに)レノボ(Lenovo)のクライアントが入ってきて、AI研究者も入ってきて、私のメールを2週間無視してきたエピック・ゲームズ勤務のとある人物も入ってきて、私の隣に座った」と彼は言った。

前代未聞、州政府がeスポーツに投資

ノースカロライナ州政府が意識的に、同州のテック企業の発展を支援していることも後押しとなっている。ノースカロライナ州は、今後39年間に8億4600万ドル(約1103億円)の資金調達をAppleに約束する補助金の発表で注目を集めたが、それに加えてeスポーツ分野のエンタメ持株企業であるサブネーション(Subnation)と提携して、eスポーツへの500万ドル(約6億5200万円)の補助金を創設した。米国の州としてeスポーツをこのように公式に奨励したのはノースカロライナが初めてだ。

サブネーションの共同設立者であるセブン・ボルポーン氏は、「12月に、私たちはノースカロライナ州とジェイソン・セイン議員とパートナーを組み、史上初のeスポーツとゲーミングを対象にした税控除を生み出した。これは地方自治体への支援においても大きな部分を占めている」と述べた。「それは米国内の他の自治体、カナダ、そして今では海外にも広がっている」。

育まれる人材のプール

結局のところ、スミシンガム氏やシェクトマン氏のような住民を最も興奮させるのは、ノースカロライナにおけるテック企業の存在ではない。そうした企業が、メタバース分野でのシリコンバレー(あるいは少なくともシリコンバレー的な存在)になるにつれ、必然的にこの地域に引き寄せられ、育まれる人材のプールが彼らをワクワクさせている。シェクトマン氏は、この地域の現在の成長と、北カリフォルニアでテック業界をリードしている企業の初期の成長には類似点があると見ている。

「各社に存在する人材が本領を発揮し始めたとき、もはやイノベーションは彼らが所属する企業から生まれていなかった。各社で働いている人たちがお互いに出会い、別の会社に移ったり、ほかの夢を追いかけたりすることから生まれたのだ。アプライドマジック(Applied Magic)、パーム(Palm)、ハンドスプリング(Handspring)、これらは皆、様々な場所の優秀な人たちによって生まれた」とシェクトマン氏は言う。

「ここではそれぞれから30マイルの範囲に、一流のAI研究者たち、一流の機械学習研究者たち、メタバースへのアクセス、巨大な演算能力へのアクセスが存在している」とスミシンガム氏は述べる。「そこにエピックゲームズを放り込めば、火にガソリンを注ぐようなものだ」。

[原文:Why North Carolina is becoming the Silicon Valley of the metaverse

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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