市場混乱のなかで希望の光を見い出す アドテク 企業も:確実に広告費を呼び込むことができる各社の思惑は

DIGIDAY

アドテク企業の楽観的なCEOたちは、すべての光を覆う雲に薄い銀色の裏地を見い出すことができる。

広告費の伸びが鈍化していると指摘されるなか、アドテク企業のCEOたちは同意しつつも、まだ伸びていると話す。これらのCEOはまた、景気減速を乗り越えて成長するための投資は可能だとかたくなに主張している。

米DIGIDAYが今回取材した5人のCEOによれば、業界が経験している構造的な変化でさえ(それほど)不安材料ではないという。5人のCEOは皆、トップに立つために必要な調整と捉えているようだ。もちろん、合理的というより本能的な期待もいくつかある。とはいえ、これらのCEOは楽観的であることを強く主張するために、最大限の努力をしている。

CTVの成長に自信

キャンペーン管理プラットフォームを提供するライトボックスTV(LightBox TV)のCEO兼共同創業者であるマーク・ギブリン氏は、「幸い、CTVはこの不況を乗り越えて成長できる立場にある」と話す。また、「この広告形態はリニアTVに比べて簡単にオン、オフできるだけでなく、より多くの価値を保証できるチャネル、プラットフォーム、メディアオーナーに広告費が向かっているため、成長に有利な立場にある」と続ける。

しかし、何一つ保証されているわけではない。結局のところ、CTVは極めて細分化された市場だ。ただし、その問題を解決しようとしている企業、つまり、広告主が複数のプラットフォームで多くのインプレッションを手軽に購入できるようにしている企業は、少なくともこの不況を比較的無傷で乗り越えられる可能性がある。こうして考えると、ギブリン氏の自信も理解できる。

「我々が追い求めているのは、マーケターが統一されたプランでテレビ広告枠を購入する方法を提供する機会だ」とギブリン氏は話す。「さまざまなバックグラウンドを持つメディアバイヤーが、テレビのプランニング経験だけでなくデジタルの知識やアクティベーションのノウハウを必要とするハイブリッドなチームに押し込まれている。これらすべての専門分野を横断し、すべてのバイヤーがメディアプランを構築できるツールは、実際のところ、まだ存在しない」。

しかし、広告主にとって最大の問題を解決するツールがあるとギブリン氏のような幹部がいうだけで、広告費が転がり込んでくるわけではない。

間違いなく、ギブリン氏のような起業家が自らに課している任務はとてつもなく大きい。CTVのチャンスと課題を両立させるにせよ、リテールメディアにもっと広告費を呼び込む方法を見つけるにせよ、これらのソリューションの背後にいる幹部には、誰もが納得する説得力が必要だ。そして、回復を成し遂げたいのであれば、この投資にはそれだけの価値があると民間投資家、さらにはマーケターを納得させる必要がある。行動だけではなく、ストーリーへの挑戦でもあるのだ。

楽観的に嵐に飛び込む

IABヨーロッパの主席エコノミストであるダニエル・ナップ氏は、「現在は混乱期にあるが、広告にとって心躍る時期でもある」と断言する。「確かに、新しいデジタル広告の巨人が現れているが、ここ10年間ほど常にそうだったように、1社や2社ではなく、複数の企業が業界を支配する時代に突入しようとしている」。

このような変化の場合、誰がトップに立つかを予想するのは難しい。それでも、アドテクと予想した人はほとんどいなかったはずだ。広告費が一時的なものになりがちなオンライン広告の「槍」の先端で、あまりに多くのアドテク企業がビジネスに励んでいるためだ。広告費の流れが途絶えることを心配するアドテク企業経営者の数を見れば、それはわかる。

それでも、ダイレクト・デジタル・ホールディングス(Direct Digital Holdings)のCEOであるマーク・ウォーカー氏は、アドテクのチャンスを楽観視する理由もいくつかあると主張する。その根拠は、広告費が収縮するほど、より質の高いインベントリに多くの資金が向かうことだ。つまるところ、広告は不況でも止まらない。ただ、より慎重になる傾向がある。パブリッシャーは最高のインベントリーを集めてくれるアドテク企業と仕事をしたいと考え、マーケターはそのインベントリーの調達方法をコントロールできるツールを求める。ダイレクト・デジタル・ホールディングスはその両方に対応している。結局、アドテクで稼ぐ方法はいくつもあるのだ。

「我々は仲介者の役割を果たすパフォーマンスベースのソリューションだ。売上を維持し、利益を出したいマーケターが明確な関心を示している」とウォーカー氏は話す。「その一方で、価格を上げるためには、我々のようなプログラマティックパートナーをできるだけ多く活用した方がいいと考えるパブリッシャーもたくさんいる」。

公平に見て、ウォーカー氏のようなアドテク幹部はほかに何をいいたいのだろうか? ある点を超えると、皮肉は楽観的な気質より価値が低くなる。オンライン広告がどのように変化していくかについて、長期的な視点に立つアドテク企業のCEOにとっては、確かにその通りなのだ。パニックになると、その視点が失われてしまう。

変化のための人材採用

そのうえで、現在、人材採用に積極的なアドテク企業が増えている。景気後退局面で起きるのは解雇だけではないことを思い出してほしい。少数ながら、解雇に踏み切る企業も現れているが、景気後退は、永続的な優位性を求め、人材を採用する時期でもある。この四半期に起きたことがそれを証明している。

たとえば、ザ・トレードデスク(The Trade Desk)は現在、約275ものポジションで募集をしている。アドフォーム(Adform)は約60人、スマート・アドサーバー(Smart Adserver)は40人近くの求人を出している。

オグリー(Ogury)も、解雇より採用に積極的な企業のひとつだ。今年1月にCEOに就任したジョフワ・マーティン氏は、「今年、広告業界全体の成長が横ばいもしくは微減になるとしても、そのなかのデジタル部分は5~10%の成長を続けている」と話す。「私たちは全世界で従業員500人ほどのとても小さな会社だ。成長のチャンスはいくらでもある」。

ほかのCEOと同様、マーティン氏も前向きな展望を持っている。同氏は「オグリーは短期的な不確実性と長期的な可能性を併せ持つ素晴らしい会社だ」と胸を張る。

短期的な不確実性はかなり明白だ。マーティン氏が楽観的なのは、主に次の2点によるものだ。まず、オグリーはいくつかの新市場に進出しており、待望の収益増が見込まれる。次に、オンライン広告が精度から予測に移行している今、オグリーは個人情報に依存しないターゲティング企業として売り込んでいる。

誤解のないようにいっておくと、これらの企業はいずれも問題を抱えている。そのひとつが収益性だ。しかし現在のところ、メディアエージェンシーやパブリッシャーとの緊密な関係もあり、確実に広告費を呼び込むことができている。そして何より、これらの企業は広告費の流れから確実に分け前を得ることができ、さらにターゲットリーチからフリークエンシー管理まで、自分たちが付加できると称する価値をクライアントに信じてもらうことができるのだ。

[原文:Amidst the market carnage, a silver lining is emerging for some ad tech companies

Seb Joseph(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:島田涼平)

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