グリーンハッシング とは何か:Glossy 101

DIGIDAY

長年にわたる抗議や訴訟のあと、グリーンウォッシングの疑惑を回避することを目的にファッション企業が取り入れている新たな企業慣習が、グリーンハッシングだ。

多くの企業がサステナビリティ認証を取得するようになり、サステナビリティレポートを発表し、国連が定めた持続可能な開発目標にコミットする中で、そうしたことを行っていないブランドはたびたび消費者の批判にさらされている。そこで登場したのが、グリーンハッシングである。簡単に言うなら、サステナビリティに取り組んでいない、あるいは取り組むのが遅すぎるせいで不利になるのを避けるために、ブランドがサステナビリティへの取り組みに関して沈黙することである。

グリーンハッシングとは何か?

「グリーンハッシングは、ブランドが環境面で不十分な点や、多くの場合、グリーンウォッシングに対して大きな批判を受けたことと、政府がサステナビリティや環境改善に向けた明確で実行可能なロードマップをブランドや企業に提供しなかった結果とが組み合わさって起きたもの」と話すのは、体験型リサイクルプラットフォームのスーパーサークル(SuperCircle)とフットウェアブランドのサウザンドフェル(Thousand Fell)の共同創業者であるスチュアート・アーラム氏だ。「企業は何をすればいいのかわからない。間違ったことをしていると非難されたくないので、何もせず、それに関しては黙っているのだ」。

サステナビリティへのコミットメントが不十分なブランドには、シーイン(Shein)、パクサン(Pacsun)、リボルブ(Revolve)、H&Mなどがある。だが、グリーンハッシングは、サステナビリティへのコミットメントを推進しない企業にも及ぶ。

気候コンサルティング会社サウスポール(South Pole)の2022年10月のレポートでは、4社に1社が科学的根拠に基づく目標を支持する行動をとりながらも、それに関して沈黙していることがわかった。12カ国の調査対象企業のうち4分の3が、過去1年間にネット・ゼロの予算を増やしたと回答している。また、ネット・ゼロの目標達成に至っていない企業の大半は、現在もサステナビリティチームを拡充している。

なぜグリーンハッシングが起こっているのか?

グリーンハッシングは、ブランドがイメージアップのためにサステナビリティを利用し、その影響について顧客に誤解を与えるというグリーンウォッシングに直接起因する。

「過去10年間、ブランドは何が環境のためによいのかわかっているという立場を取ってきた。しかし、いまだ高成長ビジネスモデルの文脈のなかでは、それは少し偽善的である。成長することにフォーカスしながら、プライオリティは何かを知っていると言ってるのだから」。そう述べたのは、オランダの非営利団体チェンジング・マーケッツ・ファウンデーション(Changing Markets Foundation)のキャンペーンマネージャーであるジョージ・ハーディング・ロールス氏だ。同団体は、消費者製品のサステナビリティの問題解決策を促進するために結成された。「いままでの情報開示はすべて自主的なものだった。ブランドは、自主的な目標を設定し、自主的に自分たちを評価し、自主的なマルチステークホルダー・イニシアチブや認証制度、それも大部分は業界自体が運営するものを作っている」。これが大規模なグリーンウォッシングにつながっている。

2022年は、ESGコミットメントに関する企業のコミュニケーションにとって大きな年となり、各ブランドは認証やサステナビリティレポートを発表したが、気候変動への影響に関するデータはまだすべて開示されていない。

アーラム氏によると、マーケティングにおいてサステナビリティ情報を前面に押し出すことには、賛否両論がある。「一方では、サステナブルな調達、持続可能な製造、再販、リサイクル、循環型など、サステナビリティの話題が消費者にとってより明らかになり、よく知られるようになった」と彼は言う。「これは大いに重要だ。このような新しいビジネスモデルや事業の実践をさらに採用し、より普及させていくためには、そうした中で市場が発展していく必要があるからだ。その一方で、こうした主張のいくつかを実証するのは困難で、顧客や利害関係者にしてみれば、何が起こっているのかを本当に理解するのは難しい可能性がある」。

パンガイア(Pangaia)やパタゴニア(Patagonia)のようなブランドは、透明性のあるコミュニケーションを成功させるブランドとして台頭した。ここ数年、ブランドのサステナビリティと影響に関して、顧客はさらなる透明性を求めるようになっている。だがブランドが自主規制したり、業界が作った仕組みに頼ったりしているため、消費者の目には、業界のサステナビリティへの取り組みが裏目に出ていることが多い。

昨年は、ヒッグ指数のような非効率的あるいは不完全なサステナビリティの枠組みの問題点が明らかになった。この指数はファストファッション大手のH&Mやエイソス(Asos)などのブランドが使用しているもので、2021年7月のH&Mに対するグリーンウォッシングに関する訴訟で中心的な存在だった。それ以降、サステナブルアパレル連合(The Sustainable Apparel Coalition)は、必要な改善に取り組むために、この指数を再検討している。現在、一部のブランドは、どの基準が十分に厳格なのかわからないと述べており、多くのブランドは同様の訴訟やメディアの注目を避けるために、自社のサステナビリティ活動について沈黙することを好んでいる。

どのように対処しているのか?

業界の自主規制に対処するために、さまざまな解決策が開発されている。たとえば第三者認証、ブロックチェーンに基づくデジタル製品IDやデジタルパスポート、そしてもっとも重要なものに、複数の消費者市場に及ぶ法制化などだ。

独立した第三者認証の数はまだ少ない。そのなかには、消費財メーカーにとってもっとも厳格な認証であるB Corp認証も含まれている。この2年間にB Corp企業にランク入りしたファッションブランドには、パンガイア、クロエ(Chloé)、ヴェジャ(Veja)、中古品マーケットプレイスのヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)などがある。しかし、認証の取得には長い時間がかかるものもあるため、一部のブランドが必要な時間的投資を避けることにつながっている。

デジタルパスポートについては、ここ2年ほどのブロックチェーンの認知度上昇に伴い、普及が始まっている。「デジタルパスポートは一度作成されると、変更や編集、破棄ができない。グリーンウォッシングやグリーンハッシングの試みに対する非難は、デジタル記録によって克服できるだろう。たとえ中古で転売されたとしても、デジタル記録はその製品を追跡するので、ブランドが製品提供における信頼性を築くのに役立つ」と、エンタープライズブロックチェーンとWeb3企業のプロトコル(Protokol)のCEO、ラース・レンシング氏は言う。しかし、サステナビリティに関するすべてのデータが、自動的にブロックチェーンに入力されるわけではない。多くはブランドによる入力が必要であり、不正確なものが存在する余地がある。

グリーンウォッシングに対処するもっとも重要な方法は、今年から業界に影響を与えることになる法律によるものだ。新たに規制される環境でどのように機能するかを考えつつ、メディアの注目や起こりうる予期せぬ影響を避けるには、沈黙を守ることが便利な方法なのかもしれない。

[原文:Glossy 101: What is green hushing?]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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