昨今のクリエイターエコノミーの隆盛を背景に、洗練度では劣るユーザー作成コンテンツ（以下、UGC）が、プロ制作のコンテンツよりも優れたパフォーマンスを示すようになり、ますます重要になってきている。
こうしたなか、ホテルチェーンのレッドカーネーション（Red Carnation）は過去7年にわたり、ブランド認知を高めるコスト効率にすぐれた方法として、UGC戦略に力を入れてきた。新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックが沈静化したあとの旅行の回復も、これに拍車をかけている。
コンテンツの大半はユーザー生成コンテンツを転載したもの
レッドカーネーションは創業約40年の高級ブティックホテルチェーンであり、ロンドンからアフリカまで世界各地で存在感を示している。18カ所以上に展開する同社にとって、UGCは出張や撮影のコストをかけずにそれぞれのホテルのブランド認知を高める有効な手段であると、同社のB2Bマーケティングマネージャーを務めるシアラ・フィッツパトリック氏はいう。
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「残念ながら、自分のクローンをつくることはできない。ならばどうするか？ 人々の力を借りればいい」と、フィッツパトリック氏はいう。「我々には、ソーシャルメディアに投稿してくれる忠実なファンの支持がある」
レッドカーネーションのコンテンツの大半は（ユーザーの許可を得て）インスタグラム（Instagram）から転載されたもので、同社のアカウントのフォロワーは1万人を超える。また、インスタグラムの写真や動画を自社のソーシャルメディアチャンネルに転載するだけでなく、ウェブサイト、Eメール、ブログといったそのほかのデジタルマーケティングツールでも使用している。とりわけインフレによって日常生活のコストが上昇して以来、こうした取り組みを加速させている。
「電気代やガス代など、何もかもが高価になった」と、フィッツパトリック氏はいう。「フォトグラファーを何人も雇わなくても、ゲストの力を借りられるのは、我々にとって極めて有利だ」。プロの写真家を雇ってコンテンツ制作を行なう代わりに、ゲストにコンタクトをとってコンテンツの使用を許可してもらえるか尋ねることが、レッドカーネーションの戦略の根幹となっている。この方法なら、同社が支払うのはライセンス料金だけで済むと、同社のマーケティング部門を統括するフィッツパトリック氏は語る。
UGCは、ソーシャルメディア上の洗練された画像にはできないような形で、オーガニックな本物のつながりを生み出す。マーケターがこれらに注目するのは、ユーザーが過度に「プロっぽい」投稿を敬遠するためだと、PRとデジタルマーケティングを手掛けるエージェンシーのクロウ（Crowe）で、シニア総合マーケティングストラテジストを務めるヘイリー・ウォーカー氏は語る。
「要するに、UGCはコンテンツマーケティングの世界での『口コミ』であり、どんなブランドのマーケティング目標にとっても重要なアセットなのだ」と、ウォーカー氏は米DIGIDAYの取材に対しEメールで述べた。
UGCはすでにマーケティングの必須ツール
UGCに加えて、レッドカーネーションのマーケティング戦略のもうひとつの根幹がデジタル展開であり、とくにニュースレターとPRへの投資に力を入れていると、フィッツパトリック氏はいう。ただし、レッドカーネーションのデジタル広告支出の内訳は不明だ。本記事の執筆にあたり同社に詳細な情報を求めたが、回答は得られなかった。
カンター（Kantar）によれば、レッドカーネーションの2021年の広告支出はわずか1558ドル（約21万円）だ。同社の広告費について、これ以外のデータは入手できなかった。
クリエイターエコノミーが成長し、ブランドがますますクリエイターやインフルエンサーに頼ってメッセージを伝えるようになった今、UGCはすでにマーケティングの必須ツールであると、ウォーカー氏は主張する。「現在のUGCのエコシステムは急速に成長している」と、同氏はいう。「ブランドによる利用が一般化したおかげで、UGCクリエイターと呼ばれる、新たなプロフェッショナル集団が台頭しつつある」。さらには、DIGIDAYが以前に取り上げたとおり、プラットフォームによるUGCクリエイター支援も始まりつつある。
フィッツパトリック氏は、レッドカーネーションのデジタルマーケティング戦略は常に変化していると、見つめる。しかし、旅行人気の高まりが続き、同社のホテルを利用する人々がますます増えているうちは、UGCはレッドカーネーションのマーケティング計画の中心であり続けるだろう。「まだ具体的な計画は固まっていないが、すでに来年UGCを大幅に強化する方向で話し合っている。（UGCは）一過性のものではない」と、同氏は続けた。
［原文：Why this luxury hotel chain bets on user generated content’s ‘power of the people’］
Kimeko McCoy（翻訳：的場知之／ガリレオ、編集：島田涼平）
