SHEIN が世界でもっとも人気ブランドである5つの理由

DIGIDAY

ウルトラファストファッションのブランド「SHEIN(シーイン)」は、カーボンを大量に排出する生産スタイルと、サステナビリティー認証の全体的な欠如により、もっとも賛否のわかれるブランドのひとつだ。いまではザラ(Zara)やナイキ(Nike)を抜き、世界でもっともグーグルで検索されるブランドになった。

中国に本拠を置くシーインの評価額は、2022年4月に1,000億ドル(約13.7兆円)に達した。ブルームバーグ・セカンド・メジャー(Bloomberg Second Measure)の調査によると、2022年3月の米国内におけるファストファッションの売上の、実に40%をシーインが占めるという。コアサイト・リサーチ(Coresight Research)のデータによると、設立から14年の同社の収益は年間57%で成長中だ。一方、シーインと競合する設立20周年のエイソス(ASOS)は、年間の成長率は約20%で推移している。

以下に概説するように、シーインの成功の要因はいくつかある。だが、労働者の権利や過剰生産、持続可能性へのコミットメントの欠如など、同社を成功に導いた戦略はさまざまな問題と表裏一体だ。

消費者の関心の変化を、シーインはAIを使って予測

シーインは毎日700~1,000点もの新しい衣服を小規模生産で生み出し、人気が集まるかどうかを大量生産前にテストできる仕組みになっている。流行中で人気のあるレプリカをAIによって毎日作成するため、顧客は常に人気のある製品を手にすることになる。シーインの衣類の多くが、デザイナーブランドの衣服や、若手デザイナーの作品、宗教的なモチーフを模倣したものだと批判されている。

スピードと低価格を重視し、製品の質は二の次

シーインの衣類の大半は、安価なバージンプラスチック素材を用いたポリエステルやナイロン、その他の合成繊維によって作られている。そのため製品の生産コストは抑えられるが、長持ちするようには作られていない。洗濯するとぼろぼろになってしまうものも多く、ごみ処理場へと直行することとなる。

同社は2022年10月に、購入者間の再販プラットフォームを立ち上げた。だが、衣類の品質が非常に低いため、再販に耐えられないのではないかと専門家は懸念する。「シーインの古着にどれだけの価値があるのか疑問だ」と話すのはサステナビリティーの専門家でライターのソフィー・ベンソン氏。「同社の衣類のほとんどは古着よりも安く、品質が低いため、複数の所有者の使用に耐えるとは考えにくい。シーインは再販のデータを利用して再生産する製品を決定しているという事実から、同社が生産の勢いを弱める気がまったく無いのは明らかだ。別の名前で実施している市場調査に過ぎない」。

ポリエステル製の衣類は、低価格で販売できる。シーインのアイテムは通常、100ドル未満(約13,800円)で大量に購入することができ、これがTikTokでZ世代のトレンドとなっている。シーインで購入した商品を紹介するハッシュタグ「 #Sheinhaul 」のビュー数は75億回を超える。

安さと速さを支える下請け会社

シーインは下請け会社が生産を担い、まるでフードデリバリー業界のような仕組みで運営している。まず製品リクエストを、小規模な下請け工場を結ぶ巨大なネットワークに送る。これらの工場の多くは、中国国内の過密な住宅街にあり、安全とはいえない。そして注文をもっとも速く履行できるところが、下請け料を受け取ることができる。この仕組みによって、シーインの主要な生産ハブである広州や、その他の省をまたぐ広大な生産ネットワークが生まれることとなった。そしてシーインは、これらの生産拠点や労働環境を監視していない。10月17日に放送されたドキュメンタリー『Inside the Shein Machine 』では、これらの工場での長時間労働や低賃金、過酷な環境が浮き彫りとなった。その後、シーインは12月に1,500万ドル(約20億円)を投じ、サプライチェーンの労働環境改善に乗り出した。同社の生産規模を考えると、今後さらに多くの改善が必要になることは間違いない。

シーインのウェブサイトやアプリには、ダークパターンが用いられている

ダークパターンとは、ウェブサイトやアプリ上で特定のアクションを行うよう、ユーザーに誤解させたり、騙したりするユーザー体験のマーケティング戦略だ。特にシーインのコア層である若いユーザーは、ウェブサイトやアプリを素早くスクロールしてコンテンツに注意を払わないという特性があり、これを活用した戦術をとっている。同社のアプリやウェブサイトでは、同時に適用可能な複数の特典を、ユーザーに何度も通知する。また、何度もアクセスしてくれるユーザーには個別のオファーを提示するなど、ゲーム的な要素も取り入れる。このような価格を宣伝することで、シーインは消費者心理を巧みに利用しながら過剰な量の製品を販売し、ハウル動画(購入商品を紹介する動画)のカルチャーに積極的に貢献しているのだ。

プラットフォーム上の若いデザイナーがブランドアンバサダー

若手デザイナーの多くは、ファッション業界に入り込めずにいる。シーインはそんな彼らがデザインした製品を同社ECサイトで販売したり、さまざまな専用プログラムやテレビ番組、ファッションショーに参加する機会を提供している。同社と提携する英国の若手デザイナー、ベッキー・ボール氏はこのように語る。「誰もが心のなかでは、サステナブルでありたい、地球のためになることをしたいと考えている。サステナブルな要素を取り入れたブランドを持つことが、私の将来の目標だ。しかしその一方で、業界はすでに十分厳しい状況にあり、この機会を手放すことはできないように感じている」。

[原文:5 reasons Shein is the most popular brand in the world

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)

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