ジオロジーが男性用スキンケアから ユニセックスビューティ へと方向転換した理由【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

ジェンダーニュートラルやユニセックスな美容は注目のカテゴリーであり、既存のジェンダーブランドはその流れに参入しようとしている。

女性顧客の増加に合わせてユニセックスになったジオロジー

ユニセックスまたはジェンダーニュートラルな美容は業界で足がかりを築きつつある。性別ごとのマーケティングとブランディングに関する制約を顧客が感じなくなるにつれて、これまで性別に基づいているブランドはジェンダーニュートラルの価値を見出している。その最近の例には、ジオロジー(Geologie)がある。同社は男性のスキンケア体験を促進するために7年前にローンチした。共同創業者のデイヴ・スカフ氏とニック・アレン氏は、2021年の初めにジオロジーのスキンケアクイズ(回答者の性別を尋ねていた)のデータで女性顧客の割合が小さいながらも増加していることに気づいた。現在では女性は顧客の30%を占めている。また、同社が2021年半ばにユニセックス展開を始めて以来、女性は新規顧客の40%を占めている。ジオロジーはD2CウェブサイトとAmazonで販売されており、Amazonは売上高の10%を占める。アレン氏によるとジオロジーは2022年に年間売上高全体が2倍になったという。

美容製品のほとんどがユニセックスであることは事実だ。たとえば、特定の性別の人の使用を禁止する香水などはない。性別が決められているのはマーケティングだけである。しかし、もともとは男性向けのブランドだったジオロジーは、コア顧客ベースを遠ざける可能性を覚悟でユニセックスのポジショニングに移行した。

「若いオーディエンスは肌の健康についてすでにある程度理解しており、ジェンダーフルイドな考え方を持っている。そこから我々は学んだ。男性と女性の(ブランディングに対する)の好みはおそらくこれまでほど厳格ではない」とアレン氏。「(ジェンダーニュートラルになることは)実際、当社のメッセージを強化するのに役立った。そのメッセージとは、『スキンケアの世界には雑音が多い。しかし、(何が効果的かということについては)成分と、実証されて臨床的にテストされたものが重要だ』ということだ」。

ジオロジーが行った主な変更には、より洗練されている女性購入客のニーズに対応するためにナイアシンアミドやレチノールなどの主要成分の正確な割合を示すためにパッケージを更新したことなどがある。また、パッケージにはイエローやライトパープル、ソフトグリーンなどの色を取り入れた。さらに、新製品開発パイプラインはさらに広範なスキン・ボディ・ヘアケアのニーズをカバーするように拡大された。また、クローブやジャスミンなど一般的に魅力の高い香りが使われている。過去18カ月間で、ヘアケア、ボディケア、ビタミンCセラム、デオドラントなどの製品を大幅にポートフォリオに追加している。

ジェンダーニュートラル製品への受け入れ

顧客がジェンダーニュートラルやユニセックスなブランドを受け入れるようになっており、これまで性別を表示していたブランドが性別と製品を切り離していることが歓迎されていることを示唆する強力な証拠がある。米国の1万人を対象にした2019年のピュー(Pew)の調査によると、Z世代の約59%が個人の性別を尋ねるフォームには「男性」と「女性」以外の選択肢もあるべきだと回答したのに対し、ミレニアル世代では50%、団塊世代では37%だった。ジオロジーの男女の顧客は通常30歳未満である。(インフルエンサーマーケティングソフトウェアの)トラッカー(Traackr)のデータによると、2019年6月から2021年6月の間にジェンダーニュートラルなソーシャルメディアの美容投稿が35%増加し、また、オンラインでジェンダーニュートラルな美容について語るインフルエンサーの数が24%増加したという。

ジェンダーニュートラル分野に進出するほかのブランド

インクルーシビティを完全に受け入れているところはもちろんだが、そうではなくてもユニセックス分野に参入しているブランドはほかにもある。MACコスメティクス(MAC Cosmetics)は2016年にユニセックスの製品コレクションを販売したのち、2021年にファッションデザイナーのハリス・リード氏と共にジェンダーフルイドのラインをローンチした。最近では主にスキンケアでジェンダーニュートラルとしてローンチした話題のブランドもある。ハリー・スタイルズ氏のプリージング(Pleasing)、ノンジェンダースペシフィック(Non Gender Specific)、ベリーグッドライト(Very Good Light)、そしてZ世代対象のフィールドトリップ(Fieldtrip)だ。また、プロクター&ギャンブル(P&G)は2021年6月に性別を問わないスキンケアラインのグッドスキンMD(Good Skin MD)をローンチしている。ファッションブランドもジェンダーニュートラルでユニセックスなコンセプトに注力しており、アルチュザラ(Altusarra)のアルチュ(Altu)、マーク・ジェイコブスのヘブン(Heaven)、パクサン(Pacsun)のカラーレンジ(Color Range)といった注目すべきサブブランドが展開されている。

オンライン広告戦略も男性からジェンダーニュートラルに

ジオロジーは、リブランディングに合わせて、メタ(Meta)のオンライン広告戦略を変更する必要性にも気づいた。男性のみを対象にするオプションをオフにしたのである。メタでの主要な広告は、製品のおすすめに関するクイズに回答して得たクーポンコードを使うと、製品5点のトライアルセットが5ドル(約680円)、またはヘアケア製品が9ドル(約1200円)で入手できるというものだ。さらに、有料のインフルエンサーマーケティングの一環として、ジオロジーは2021年にプロサーファーのティア・ブランコ氏をはじめとする女性コンテンツクリエイターを大勢起用した。だが、同社のインフルエンサーマーケティング支出は男女比50対50ではない、とアレン氏。全体的に男性インフルエンサーへの支出が「わずかに」多いという。同社はTwitch(ツィッチ)やDiscord(ディスコード)などこれまでに男性対象だったチャネルを引き続き維持している。特にインフルエンサーマーケティングへの投資のほとんどをYouTubeに費やしている。

ジオロジーは自社のソーシャルメディアに関して、スキンケアに精通した女性オーディエンスに対応するために製品や成分に関する詳しい教育を追加してコンテンツを強化している。2021年以前同社のインスタグラムアカウントには、ジオロジー製品を使っている男性のさまざまな写真、スポーツ関連、顧客の体験談など多くの場合はユーモラスな内容が掲載されていた。現在では美容のヒントやハック、男性と女性の画像、女性の社員やインフルエンサーが成分や製品を説明する動画などが混在している。アレン氏によると、ソーシャルメディアや広告において女性をもっと対象にし始めてからはコメントや質問によるエンゲージメントが増加しているという。

「女性からは、もっと細かい、厳しい質問が寄せられている。そのおかげで皆を教育する機会がもっと増える」とスカフ氏。

ユニセックスブランドへ発展すると同時に製品ラインを拡大することで、ジオロジーが(ブランドたちから)切望されている小売店の棚スペースを獲得できる可能性が高まっている。アレン氏によると、同社は小売に進出する準備ができており、潜在的な「主要」パートナーと話し合っているところだという。

「当社はスキンケアで知られているが、そのうちに単なるスキンケアブランドではなく、また男性専用でもないという(考えを)定着させたいと思っている」とアレン氏は述べた。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: How one brand pivoted from men’s skin care to unisex beauty

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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