イーロン・マスク によるTwitter買収、「大きな後退」か?:広告プラットフォームの先行きに向けられる疑念

DIGIDAY

イーロン・マスク氏がTwitterの買収に正式に署名してから1週間も経たないが、すでに不安定なスタートの様相を見せている。広告主の懸念を鎮めるはずの試みが、メディアバイヤーたちからは賛否両論の評価を受けることになった。

「テスラ(Tesla)とスペースX(SpaceX)のトップとしてなら、彼はいつでも好きな発言をすることができた」とブランドコンサルタントでメタフォース(Metaforce)の共同創設者であるアレン・アダムソン氏はEメールで述べた。「物議をかもさずに注目を集めたい広告主によって収益を得ている会社(ツイッター)では、同じような振る舞いは通用しない」。

マスク氏はTwitterの新しいオーナーとなったものの、誤情報を含んだツイートをヒラリー・クリントンに返信したり(ツイートは後に削除された)、数人のTwitter役員を解雇したりして、先週末を過ごした。テスラと競合するゼネラルモーターズ(General Motors)は、マスク氏による買収を受けてTwitterでの広告を一時的に停止しており、ほかにも数人の著名人がTwitterからの脱退を発表した。

また、新たなリーダーシップの下、Twitterはアカウント認証に月額20ドル(約2788円)を課金することを計画しているとの報道もある。一方、報道によると、買収後にプラットフォーム上では中傷が増加したという。

事態を悪化させる可能性

一部の広告主はこの変更に難色を示しているが、特にTwitterがクライアントの広告予算のなかで大きな割合を占めていなかったことから、マスク氏の下でのTwitterの新しい方向性は、あまり変化をもたらさないという意見もある。

Twitterは、特に2020年の選挙とパンデミックを通じて、ブランドにとって安全なプラットフォームであることを示すのに長年苦労してきた。有害なコンテンツやヘイトスピーチを制限しようとする動きのなかで、Twitterはほかのソーシャルメディアプラットフォームとともに、広告主が安全さを感じる(そして使い続ける)ことを期待して、ブランドの安全性を推進した

広告代理店ブルーステート(Blue State)のロンドン部門でメディアプランニングのアソシエイト・ディレクターを務めるナタリー・オームロッド氏は、DIGIDAYへのEメールで「ソーシャルネットワークの安全性を高めるためにこれまで多くの進歩がなされてきたが、(Twitterをめぐる状況)は大きな後退である」と述べている。オームロッド氏によると、ブルースステートはいくつかの非営利団体に起用されているが、Twitter上での論争の高まりは、同プラットフォームがクライアントのマーケティング戦略の中心であり続けるかどうかに疑問を投げかけていると言う。

メディアバイヤーたちは、CPMの増加とデータプライバシーの取り締まりがもたらす複雑さのあいだで、不安定なデジタルマーケティング状況に直面している。マーケティング代理店モディフライ(Modifly)の創業者兼CEOであるイライジャ・シュナイダー氏は、物議を醸している今回のTwitter買収は事態を悪化させる可能性があると述べた。

「Twitterはここ数日、かなり厳しい環境にある」と彼は言った。「広告費を払って広告を出す人間としては、今、(Twitterではなく)ほかのプラットフォームにフォーカスすることは、非常に理にかなっていると思う」。

一方、彼の鋭い洞察力に期待も

買収によるこの移行は、一部のメディアバイヤーに新たな不確実性をもたらしているが、マスク氏は賢明なビジネスマンであり、Twitterのキャッシュフローを促進するために、テスラやスペースXで見られた彼の鋭い洞察力が発揮されるかもしれないという意見もある。

「人々はTwitterに存在する政治的または物議を醸すアカウントには同意しないかもしれないが、我々のクライアントが必要としてるのはインプレッションと人々の関心である」とロージー・ラブス(Rosie Labs)の広告代理店のCEOであるデーヴィッド・ソング氏はEメールで述べた。「Twitterがオーディエンスとリーチを提供する限り、彼らは私たちの購入対象であり続けるだろう」。

モディフライの有料広告部門の責任者であるブランドン・ビアンカラーニ氏はEメールで、マスク氏によるTwitter買収をめぐる論争は、実際のプラットフォームというよりもTwitterに対して人々が持っている認識を再形成する点の方が重要かもしれないと述べた。現在の状態では、Twitter内の広告購入パフォーマンスは一貫していないと同氏は付け加えた。

「マスク氏が提案するユースケースやケーススタディに、具体的な改善点が増えれば、より多くの広告主がTwitter広告に対し楽観的になる可能性がある」とビアンカラーニ氏は述べた。

[原文:Marketing Briefing: Elon Musk’s Twitter takeover is off to a rocky start, leaving advertisers with mixed feelings

Kimeko McCoy(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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