TikTok はいまや検索エンジン。ただし、検索広告プロダクトの登場はまだ先か

DIGIDAY

TikTokの検索広告を長いあいだ待ち続けてきた人は、まだまだ待つことになりそうだ。

検索広告がいつ実現するのかはまだわからない。テストは行われているが、TikTokはまだ完全には満足していないようだ。少なくとも、本格的な広告プロダクトとしてリリースするほどの出来ではないらしい。

「人々がTikTokに来て情報を探しているというのは、極めて興味深い状況だが、現時点では検索に特化した広告フォーマットは販売していない」と、TikTokで英国のグローバルビジネスソリューション担当ゼネラルマネージャーを務めるクリス・ボーガー氏は、米DIGIDAYに対して語った。このプラットフォームにとって、検索はいまのところ焦点ではないという。

Z世代を中心に検索エンジンとして使われるTikTok

広告主は検索結果とともに表示される広告インベントリを購入できるものの、Googleのようにマーケターが自社の製品やサービスに関連した特定のキーワードやフレーズに入札できるわけではない。マーケターにできるのは、避けたいキーワードのブロックリストを作成することだけだ。すると、アルゴリズム、動画の説明、コンテンツに基づいて、広告とオーディエンスの検索語句がマッチングされる。

つまり、TikTokの検索広告は抽象的な概念であり、人々のこのアプリの使い方が自然に進化したのに合わせて、後付けで作られたようなものなのだ。確かに、TikTokはバイラルなダンス動画やコメディ動画を楽しむ場所として知られている。だが、若者たちのあいだでは、検索エンジン的に使われることも増えている。彼らは、視聴したコンテンツに合わせて動画をパーソナライズするアルゴリズムを利用して、自分の好みに合った情報を入手している。

実際、Googleでシニアバイスプレジデントを務めるプラバーカル・ラガヴァン氏は昨年の「フォーチュン・ブレインストーム・テック(FORTUNE Brainstorm Tech)」イベントで、若者のおよそ40%がGoogleではなくTikTokやインスタグラムを検索に使っていることが、社内データで明らかになったと述べている

さらに、モーニング・コンサルト(Morning Consult)が2023年2月に発表したデータによれば、Z世代の14%が重大なニュースについて調べるためにTikTokを利用していると答えたという。ほかの世代では、この割合は1%に過ぎなかった。

Googleが長年示してきたように、検索結果に表示される広告の販売は、収益性の高いビジネスになり得る。TikTokがこれに挑戦しようとするのは当然のことだ。実際、TikTokの最近の媒体資料には、検索広告が「2023年のプラットフォームの優先事項」のひとつとしてまだリストアップされていた。そして、今年もすでに5カ月が経過していることから、2023年の後半に何かが登場する可能性もある。ただし、ボーガー氏は検索広告が実現する時期について、具体的なスケジュールを明らかにしておらず、「(検索の)周辺には興味深いものがたくさんあるが、広告プロダクトはまだ作っていない」と述べた。

検索プロダクトに対する需要はまだ大きくない?

しかし、TikTokが広告費の獲得をめざして検索プロダクトを改良する時間はまだありそうだ。いまのところ、このプラットフォームを現在のかたちで検索に利用することについて、マーケターの意見は分かれているからだ。

メディアおよびパフォーマンスエージェンシーのロースト(Roast)でペイドメディア責任者を務めるウィル・ジェニングス氏は、熱心なオーディエンスへのリーチという点でTikTokに対するクライアントの関心は高まっているとしながらも、検索プロダクトに対する需要はまだ大きくないと話す。

一方、スリーパイプ・リプライ(Threepipe Reply)の共同創業者で販売およびマーケティングディレクターを務めるジム・ホーカー氏によれば、クライアントのなかには「検索」をどのように支配できるか検討しているところもあるという。「(彼らは)従来の検索プラットフォームとそれ以外の場所の両方で、ユーザーが求めている検索のタイプを調べているところだ」と同氏は語った。

ただし、TikTokの検索機能はまだ登場したばかりで、「データの構造もフォーマットも未熟なため、すぐに現実的な議論ができる段階にはない」と、同氏は指摘する。「商業的成果を大規模に上げられるようになれば、ブランドや商品の発見に極めて大きな役割を果たすようになるかもしれないが、それはまだ先の話だ」。

あらゆる広告ビジネスの構築をめざすTikTok

とはいえ、検索広告の最大の買い手といえるパフォーマンス重視の広告主は、TikTokに検索広告がなくても問題はなさそうだ。

状況が変わらないなかで注目を集めているものに、TikTokの「スマートパフォーマンスキャンペーン(Smart Performance Campaign:以下、SPC)」がある。このプロダクトは、もっぱらパフォーマンスを重視する(待ち望んでいる)マーケターが対象だ。もちろん、それが唯一のセールスポイントではないが、大きな特徴といえる。実際、TikTokのSPCは多くの点で、メタ(Meta)の「Advantage+ Shopping Campaigns」ツール、Googleの「P-MAX キャンペーン(Performance Max campaigns)」ツールによく似ている。

SPCの場合、マーケターはトラッキング情報、ターゲティング要件、キャンペーンに必要なすべてのクリエイティブ資産、および入札戦略をプラットフォームに提供する。すると、SPCがこれらの情報をすべて活用してキャンペーンを実施し、その結果を報告する。つまり、SPCを利用すれば、従来のキャンペーン管理で必要な手作業が不要になるのだ。

TikTokの広告マネージャーによると、SPCは可用性が高いため、あらゆるタイプのキャンペーンに対応できるだけでなく、特定のタイプのキャンペーンで時間を節約し、パフォーマンスを向上させることができるという。実際、TikTokは「SPCのパフォーマンスが従来のキャンペーンを最大80%上回る」と主張している。

SPCか検索広告かにかかわらず、TikTokがマーケティングファネルのあらゆる場所で、あらゆるマーケターにアピールできる広告ビジネスを構築しようとしていることは間違いない。このような広告予算をすべて獲得できなければ、TikTokの成長は頭打ちになり、広告プラットフォームとしての地位を獲得できずに終わるだろう。Google、メタ、Amazonのような企業が、広告予算のありとあらゆる使い道を取り揃え、あらゆる企業に対応できる広告ビジネスを構築しているのはそのためだ。TikTokはまだその段階にはない、ということだろう。

[原文:Marketers are going to have to wait for search advertising on TikTok

Krystal Scanlon(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:島田涼平)

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