ジェンダーレス ファッションの高まる需要を満たすインディーズデザイナー

DIGIDAY

ジェンダーレス、ジェンダーニュートラル、ユニセックスといわれる、従来の性別二元制の概念にとらわれないファッションの需要が高まっている。フレッドシーガル(Fred Segal)ユニクロ(Uniqlo)などの大手ブランドは昨年、ジェンダーレスコレクションをローンチした。

だが、ジェンダーレスなデザインはラベルやマーケティングが変わるだけで、典型的な性別で分けられた服と大きく異なることはない。LGBTQの活動家たちは、ノンバイナリーの漫画家マッティ・ルブチャンスキー氏が2021年に指摘したように、ブランドがジェンダーレスとして販売している服が、メンズとウィメンズをひとまとめにした、だらしなく面白みのないデザインであることが多いと訴えてきた。

ジェンダーノンコンフォーミングのデザイン

しかし小規模の独立系のデザイナーは「茶色い袋(のように見える服)」の問題を回避して、ジェンダー・ノンコンフォーミング(ジェンダーの旧来の固定観念にとらわれないこと)のファッションをデザインする方法を見つけようと努力している。バンクーバー在住のデザイナーでジェンダーニュートラルなファッションブランド、ポードルー(Peau de Loup)の創業者であるアデル・ルノー氏は、2012年にブランドの開発を始めるにあたり、ジェンダー・ノンコンフォーミングである彼女自身が服に何を求めているのかを考えた。彼女の服は、メンズウェアからインスピレーションを受けているが、男性的な体型と女性的な体型の両方に合うように作られている。

ルノー氏は、これまで彼女がクィアフレンドリーなインスタグラムでのプレゼンスやクィアインフルエンサーとの関係によって育んできたオーディエンスを指し、「私たちの消費者の多くはバイナリーに当てはまらない」と語った。彼女はインスタグラムで頻繁に顧客とコミュニケーションを取り、顧客が服に何を求めているかを判断しているという。「多くの人がメンズウェアのスタイルを着たいと思っているが、ほとんどのメンズウェアは体型に合うようには作られていない」。

典型的な男性の体型は肩幅が広く、腰幅は狭いが、一方で典型的な女性の体型は、従来のファッションデザインではその逆だ。ポードルーの最新コレクションは11月中旬にオンラインストアで発表されたデニムのラインで、ヒップを強調しないボクシーカットで作られており、従来の男性と女性の両方の体型にフィットする。同ブランドのシャツも同じ理由で、肩の部分がよりスリムで似たようなボクシーカットになっている。創業10年となる同社は、2022年に前年比32%の成長を遂げ、年内に売上高100万ドル(約1.4億円)を達成する勢いだ。リナ・ウェイス氏やルビー・ローズ氏といったLGBTQのセレブリティが着用している。

「さらに素材にもこだわっている」とルノー氏は言う。「ウィメンズウェアの素材はより伸縮性があり、身体にまとわりつくような傾向がある。あまりにもフェミニンなルックは求めていない顧客が多いので、私たちはメンズウェアのしっかりした素材を使用している」。

従来とは大きく異なるジェンダーレスのサイズの基準

ジェンダーレスコレクションをデザインする際の最大のハードルのひとつが、サイズ展開だ。従来の性差のある服のサイズ展開は、その基準に大きな違いがある。たとえばメンズのパンツはウエストのインチ数で表示されることが多いが、ウィメンズのパンツは0から24の抽象的な数字が使われるのが一般的だ。

小規模なブランドがこの分野で成功していることで、大企業も興味を示しつつある。ポードルーは、夏にアーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)と提携し、同社のウェブサイトのノンバイナリーと分類された新しい専用のセクションにてジェンダーレスな服を販売した。

ルノー氏によると売れ行きは早く、評判も上々だ。アーバン・アウトフィッターズのように、ジェンダーレスファッションではより進歩している大手小売業者も存在する。たとえばパクサン(Pacsun)は、昨年カラーレンジ(Colour Range)というユニセックス専用のサブブランドをローンチし、新商品の導入を続けている。

創業して6カ月のユニセックスのソックスブランド、ダブルソウル(Doublesoul)の共同創業者でCEOのアリソン・ストルマイヤー氏は、商品開発にあたって彼女とチームが最初に取り組んだことのひとつが、サイズ展開だったと語った。

「トルコにある工場と取引しているが、弊社のアイデアを持ち込んだとき、先方は困惑した」とストルマイヤー氏は言った。「トルコの工場には、その工場のメンズとウィメンズの靴下の標準というものがあった。ネットで靴下を買うとき、まずやることはメンズかウィメンズかを選択することだ。でも、ただの靴下なのに、なぜ性別に分ける必要があるのか」。

ダブルソウルのソックスには4つのサイズがあり、ブランドはシンプルにサイズI、サイズII、サイズIII、サイズIVと表記している。サイズIは、標準的なウィメンズサイズ4の靴下、サイズIVは標準的なメンズサイズ14の靴下に相当する。ダブルソウルでは、独自のサイズガイドを自社のオンラインストアの中心に表示している。そのガイドには、従来のサイズ表記に慣れている人のために男女別の標準サイズも併記されているが、あくまで新しいシステムに慣れてもらうための必要悪だとストルマイヤー氏は言う。彼女はこれが将来的には不要になってほしいと思っている。

一方、H&Mの最近のイテレーションであるユニセックスショップ(Unisex Shop)は、メンズとウィメンズのコレクションからアイテムを集め、それぞれの商品を男性または女性が着用した状態で紹介し、標準的な性別のサイズ展開で販売している。

成長するユニセックスやジェンダーレスファッションの世界市場

「ジェンダーニュートラルなサイズ展開には強力な市場がある」とストルマイヤー氏は述べた。「最初の製品のバッチをインフルエンサーに送ったところ、かなりバイラルになった。投稿率は85%だった」。

そして、その市場はさらに強力になっている。業界の予測では、ユニセックスやジェンダーレスファッションの世界市場は毎年4.5%成長し、2028年には32億ドル(約4444億円)に達するといわれている。

「多くの企業はプライド月間にこの分野に足を踏み入れただけで、その後は忘れてしまう」とルノー氏は言う。「小売業者の全体のシステムは、メンズとウィメンズの服に基づいている。メンズのバイヤーとウィメンズのバイヤー、メンズのセクションとウィメンズのセクションがそれぞれ存在している。リスクを負うような体勢が整っていないのだ」。

[原文:Indie designers are filling a growing demand for genderless fashion]

DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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