ブランドのパートナーはインフルエンサーから クリエイター へ:「付加価値の高いコンテンツを作り上げる必要がある」

DIGIDAY

今日、大手ブランドの大半は何らかの形でクリエイターと連携している。どの企業のCMOも、マーケティング戦略の話となると、必ずといってよいほどインフルエンサーとの取り組みに言及する。そこでこんな問いが頭をもたげる。クリエイターの起用がもはや目新しい施策ではなく、誰もがやっていることだとすれば、他社との横並びを嫌うブランドはクリエイターとの連携そのものから手を引くのだろうか。

マーケターやエージェンシーの幹部たちにそう訊ねれば、まずは「ノー」という答えが返るだろう。それでも、横並びを避けるためには、クリエイターとの取引関係を多少なりとも見直す必要はあるようだ。たとえば、一部のブランドは、単発の投稿を依頼する代わりに、1年間の独占契約を結ぶなど、より長期的な関係を模索している。また、複数のインフルエンサーを起用して、ターゲット可能なオーディエンスの幅を広げようと試みるブランドもある。いずれにしても、5万人程度のフォロワーを持つインフルエンサーを、マーケティングミックスに数人追加すればそれで終わりという時代ではもはやない。

「必要なのは多面的アプローチ」

ブランドとクリエイテターの関係はどう変化しているのか。この問いに対して、さきごろWPPに買収されたインフルエンサーマーケティングエージェンシーのヴィレッジマーケティング(Village Marketing)を創業したヴィッキー・シーガー氏は次のように述べている。「以前は、『ひと月にふたりのセレブを起用すればよい』くらいの考えでキャンペーンを展開していたが、もはやそれでは通用しない。いま必要なのは、より多面的なアプローチだ」。

そしてシーガー氏はこう続ける。「それはつまり、マクロ、マイクロ、ナノを含め、フォロワーの多寡にかかわらず、多様なインフルエンサーと手を組む必要があるということだ。さらに、インテリアデザイナーもいれば、美容やファッションの関係者もいる。あるいは母親ということもあるだろう。真に多様な戦略を持ち、それを確実に拡大していく必要がある」。

このように考えているのはシーガー氏に限らない。マーケターやエージェンシーの幹部たちは、クリエイターはキャンペーンのメッセージを伝えるための単なるメディアバイではないと考えている。むしろ、クリエイターと緊密に協力して、フォロワーから支持される付加価値の高いコンテンツをどう作るかを、ともに模索する必要があるという。そうしなければ、ブランドもクリエイターも、ファンから反発を買う危険を免れない。

グレイグース(Grey Goose)の北米担当バイスプレジデントを務めるアレコ・アスケタ氏は、同社のクリエイター戦略について訊ねられ、こう答えている。「インフルエンサーとブランドのあいだには、真のつながりが必要不可欠だ。グレイグースでは、インフルエンサーに我々のブランドをよく理解してもらうため、同じインフルエンサーを繰り返し起用する傾向がある」。

クリエイターの自由に任せる意味

この春、グレイグースはグラミー賞のスポンサーシップをアピールするために、すでに馴染みの顔ぶれを含め、複数のクリエイターを起用して、そのうち一部を授賞式に出席させた。ただし、この体験の拡散方法については特に指示を出さず、クリエイターたちの自主性に任せたという。それぞれのフォロワーに、より自然な形で伝わるように配慮した結果だ。

「彼らの真実の声で伝えてほしかった」と、アスケタ氏は話す。「誰もが自分の声で自由にブランドを語るべきだし、ブランドはそのことに寛容であるべきだ。そうでないと、彼らの声は正直な気持ちとして伝わらず、消費者に不審を抱かせるだろう」。

経験豊富なマーケターにとっては自明とも思われるが、エージェンシーの幹部たちは「一部のブランドは、何をどう伝えるべきか、クリエイターにあれこれ指図する時代遅れのアプローチを取りつづけている」と口をそろえる。クリエイターとの関係を深め、何がうまくいくのか理解するに伴い、ブランドはクリエイターとの連携をマーケティング戦略全体にもっとうまく統合する必要があると考える人々もいる。

「キャンペーンの全体像を視野に収め、その一部としてクリエイターと協力する道を模索するべきだ。クリエイターマーケティングをほかのマーケティング施策や広告活動と切り離し、別個の戦略として扱うべきではない」。そう語るのは、クリエイティブスタジオのドイチェLA(DeutschLA)でバイスプレジデントとソーシャルアカウントディレクターを兼務するケイティ・ヴェルハウゼン氏だ。「たとえば、拡散力の高いTikTok動画は、活発な意見交換をスタートさせ、斬新でユニークなアイデアを生み出す受け皿にうってつけではないか」。

オーディエンスとの関係を尊重する

新しいアイデアはさておき、マーケターやエージェンシーの幹部たちは、クリエイターがオーディエンスに対して持つ影響力について、まだ理解しはじめたばかりだと述べている。この影響力のおかげで、クリエイターとの連携はもはや特別なものではなくなったとはいえ、潜在的な価値はむしろ高くなっている。

「テレビ広告は特別なものではないが、だからといってテレビ広告が廃れてしまったわけではない」。クリエイティブエージェンシーのメカニズム(Mekanism)で、パートナー兼最高ソーシャル責任者の肩書きを持つブレンダン・ガーン氏はそう指摘する。

「特別なのはクリエイターとオーディエンスの関係だ。人々は会ったこともないクリエイターに対して一方的な親近感を抱き、いわゆるパラソーシャルな関係を形成する。一方、彼らのオーディエンスもブランドに対してパラソーシャルな関係を形成するのだが、それはブランドに対する投資といえるだろう」。

[原文:As working with creators is normalized, marketers tweak how they approach doing so

Kristina Monllos(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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