初の サステナブル なカルトスニーカーを作るための競争:オンランニング、オールバーズ、アスレタの戦略

DIGIDAY

イノベーションとサステナビリティはより密接な関係になりつつあり、オンランニング(On Running)、オールバーズ(Allbirds)、アスレタ(Athleta)といった企業は、その両方の長所を得ることに力を入れ、プロダクトデザインや製品開発を行っている。

特に難しいのは、サステナブルな視点でパフォーマンスウェアを捉えなおすことだ。製品の耐久性が優先されるため、サステナビリティはしばしば二の次にせざるを得ない。だが、デザイン段階からサステナブルを実践しているブランドは、このカテゴリーにおけるサステナビリティの可能性を証明している。Glossyは、オンランニング、オールバーズ、アスレタでデザインを率いるチームに、パフォーマンスウェアとシューズをよりサステナブルにデザインする方法について話を聞いた。革新的な素材の活用、デザインのブリーフィングとテストの実施などが、効果的な戦略として挙げられている。

目標はイノベーターとしての道を切り開くこと

2021年に前年比70%増の7億7870万ドル(約1084億円)と過去最高の売上を記録したオンランニングでは、素材開発とイノベーションに注力している。たとえば、2022年8月に発売したシューズ、クラウドネオ(Cloudneo)はトウゴマの種子を原料にしている。これはリサイクル可能なシューズの専用サブスクリプションプログラムの一環としてローンチされたものだ。トウゴマの種子は、バイオベースのポリアミドに変えることができる天然資源であり、パフォーマンスシューズに使用することが可能だ。市場の大半は、いまだに素材にプラスチックを使用している。オールバーズでも、ウールランナー(Wool Runner)シューズにトウゴマの種子を活用しており、リーボック(Reebok)も2020年にトウゴマの種子を原料にしたスタイルを発表している。だが、この分野における素材のイノベーションという点で、リードしているのはオンランニングである。同社は2022年9月には、炭素排出物から作られたシューズ、クラウドプライム(Cloudprime)を発表した。

「当社の目標は、炭素排出を再利用することが可能であることを実証し、パフォーマンスフットウェアおよびアパレルの分野でフォーカスしたイノベーターとしての道を切り開くことだ。当社の概念実証であるクリーンクラウド(CleanCloud)は意義深い前進であり、また、まだやるべきことがたくさんあることも示している」と、同社のテクノロジーイノベーションのトップ、ニルス・アルトロッジ氏は語る。同ブランドの目標は、今後3~5年の間に、シューズだけでなくアパレルにもこの技術を拡大することだ。

オンでフットウェアデザインを率いるオッリ・ヒルヴォーネン氏は、同社では原則としてパフォーマンスとサステナビリティの両方に基づきシューズを設計していると話す。「走るという構造に基づいて、より快適に、より楽しく走れるような製品をデザインすることを目指している。それを念頭に置き、サステナブルな素材を選ぶことについても、かなり意図的になっている。現在は75%の再生ポリエステルを使用しており、未来にはすべてのオンの製品が化石資源を使用せずに循環型の設計になっているという方向に向かって、重要な対策を講じている。10年後までには、当社の製品の大半を引き取りたいと考えているし、ほかのブランドにも同じことをするよう働きかけている」。

素材のイノベーションでカーボンフットプリントを削減

オールバーズは2016年のローンチ以来、サステナブルな素材を重視してきた。同ブランドのメイン素材はウールで、この素材は同ブランドの最初のシューズであるウールランナー(Wool Runner)に使用されている。ウールはもっとも古い素材のひとつだが、パフォーマンスシューズにはまだ比較的あまり使用されていない。ほかのブランドでウールを使用しているのは、バーバック(Baabuk)やル・ムートン(Le Mouton)だ。ウールは、3~4カ月で分解される、完全にサステナブルな素材だ。

また2021年3月に、オールバーズは素材イノベーション企業ナチュラルファイバーウェルディング(Natural Fiber Welding Inc.)に200万ドル(約2.8億円)の出資を行った。そして2022年9月には、植物由来のフェイクレザーシューズを発表している。オールバーズのプロダクトデザイン・バイスプレジデントであるアシュリー・コモー氏は、「パフォーマンスをローンチするたびに、天然素材によるイノベーションと全体のカーボンフットプリントの削減というコミットメントに向けて取り組みながら、着用する人たちの体験を向上させる方法をつねに考えている」と語る

オールバーズは、素材のイノベーションを通じてシューズのカーボンフットプリントを削減するためのソリューションを見つけることにも注力している。スウィフトフォーム(SwiftFoam)を採用したツリーフライヤー(Tree Flyer)シューズは2022年5月に発売された。「より軽量で、そして性能も向上させた製品を提供したいとずっと考えていた。それを実現するためには、天然素材を使った新しいフォーム材を開発する必要があった」とコモー氏。このシューズは、ミッドソールの製造に市場でもっともエネルギーの低いプロセスを採用し、オールバーズの以前のフォーム材モデルよりも30%軽量化されている。また、クッション性とエネルギーリターンが向上し、より楽に弾むようになった。

イノベーションは高尚な目標を達成し最高峰の製品を生み出す手段

オンにとって、サステナブルなプロダクトデザインへの答えは、あらゆる段階で循環性への配慮を実行することにもある。「ブランドはリサイクル可能な製品を作ってきたが、製品のライフサイクルに関しては、返品を含めてほとんど進展がない」とアルトロッジ氏は指摘した。「循環型製品のためのサプライチェーンが存在しないことを即座に認識して、自分たちで作ることに着手した。このサプライチェーンを発展させる際には、使用する輸送手段、素材の創造、製造や出荷の最適な方法など、多くの考慮すべき点がある」。その結果が、循環型シューズであるクラウドネオ(CloudNeo)とそのリセールサイトへのアクセスを付与した、オンのサブスクリプションプログラムであるサイクロン(Cyclon)だ。サイクロンは2020年のローンチ以降、数万人のサブスクライバーを獲得している。

2018年にB Corp認証を取得したアクティブウェアブランドのアスレタも、サステナブルなイノベーションを倍増させている。「イノベーションは高尚な目標や最高峰の製品を生み出すためのひとつの手段となり得る。だが、アスレタでは、そのイノベーションはつねに顧客の視点を通して行われる」と、GAP傘下のアスレタで30年以上パフォーマンスウェアに携わってきたチーフプロダクトオフィサー、フェリックス・デル・トロ氏は言う。同ブランドは、会員制のコミュニティプラットフォームであるアスレタウェル(Athleta Well)を活用して、プロダクトデザインに関するフィードバックを収集している。

「春にローンチしたトランセンド(Transcend)は、素材を作り出すのに2年かかった。リサイクル繊維を使った第二の肌となる素材だ」とデル・トロ氏は言う。「どこで作られ、どんな染料が使われているのかといった、繊維に関する疑問はすべて、何かを開発する初期のブリーフィングの段階で問われることだ。つまり、それはあとから思いつくものではない」。同ブランドは現在、女性のパフォーマンスとカジュアルウェアに焦点を当てた、さらなる素材イノベーションを開発している。

11月9日に発表された最新の決算では、オールバーズの第3四半期の収益は前年同期比16%増の7270万ドル(約101億円)に達した。アスレタを所有するGAPとオンランニングは11月中旬に、最新の決算を発表する予定である。

[原文:The race to create the first sustainable cult sneaker]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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