「消費者からの信頼が高まる」:業界のプロたちを奪い合うD2Cホームブランドたち

DIGIDAY

こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
※モダンリテール[日本版]は、DIGIDAY[日本版]内のバーティカルサイトとなります

家庭用品のカテゴリーで確固たる地位を築こうとするD2Cブランドは、業界のプロたちに支持されることを目指している。

その目的で、一部のD2C新興企業は、インテリアデザイナーや建築家などの業界内のプロを対象とした、特典付きのトレードプログラムを創設した。家庭用品ブランドのパラシュート(Parachute)は、さまざまな市場のトレードのプロを雇用して、自社のトレードプログラムに多くのリソースを投資しはじめ、最近になってトレードデザインスタジオ(Trade Design Studio)を開設したと語る。一方で家具会社のラブサック(Lovesac)のトレードプログラムでは、20%の割引、デザインコンサルタント、および新商品を独占的に見られる新しいカタログを提供している。

消費者からの信頼と安定した収入源

住宅価格とインフレが賃金の増加を上回っている現在、ミレニアル世代の多くは住宅の購入などの大きな節目の達成を先延ばしにしている。これは、通常はミレニアル世代やほかの消費者が新しい住宅を購入することから利益を得ているD2C家庭ブランドにとって財務上のリスクとなる。トレード顧客を増やすことにより、ブランドは消費者のトレンドの影響を受けにくくなり、より安定した収入源を得ることができると、専門家は語っている。

「インテリアデザイナーは、長期的な可能性が大きいため、会社にとってもっとも価値ある顧客だ」と、マーケティング企業のベラルディ・ウォンのプレジデントを務めるポリー・ウォン氏は述べる。「デザイナーの信頼を得ることができれば、消費者の信頼も得やすくなる」。

正確には、これらのトレードプログラムは新しいものではない。しかし、家庭カテゴリーの伸びがパンデミック中の高い水準から下落し続けるなか、プロは通常の顧客よりも家具をより頻繁に買い求め、マーケティングについていくつかの利点も提供してくれることから、より貴重な顧客グループになりつつある。

プロへのアピール

このチャネルは、的確に活用すれば、財務的な利益をもたらすことができる。たとえば、パラシュートのトレードビジネスはもっとも急速に成長しているチャネルになり、トレード顧客からの売上は前年比で112%も増加した。同社はトレードのプロを採用している。これらのプロは、プロジェクトでインテリアデザイナーを支援するだけでなく、インテリアデザイン企業や個人のデザイナーに対して、プログラムについて説明する活動も行っている。

パラシュートの創設者でCEOを務めるアリエル・ケイ氏は、以前米モダンリテールに次のように語った。「当社はD2Cに強く特化して業務を開始したが、自分たちのニーズに特化したプログラムを望むインテリアデザイナーからの有機的な関心を受けるようになった。当社はこれらのデザイナーを支援することを強く望み、可能な限り最高の体験を提供したいと考えた」。同社は2021年の収益が1億5000万ドル(約210億円)に達し、トレードビジネスが家具収益の4分の1を占めているという。

コンサルタント企業のザ・パーカー・アベリー・グループ(The Parker Avery Group)のシニアマネージャーを務めるハイディ・センシッツ氏は、トレードのプロは繰り返しプロジェクトを行うため、家具や寝具などのアイテムを、家庭用品をたまにしか購入しない通常の買い物客よりも頻繁に購入すると語る。

これらのグループの顧客がもたらす価値が大きいことから、小売業者はトレードのプロを勝ち取るためにさまざまな戦術を推し進めてきた。ラブサックのトレードプログラムは、割引を利用するときの免税や、メンバー向けの特別な注文を行える特典も提供している。一方でジョイバード(Joybird)のプログラムは、トレード専用の商品や、同社の3Dスペースプランナー(3D Space Planner)の無制限の使用などの特典がある。

センシッツ氏は次のように述べている。「これは、収益源を一定にするため、どのように管理するかという問題だ。個人、自家所有者、アパートの住人はそれほど繰り返し店舗を訪れるわけではないので、トレード関係の人間が必要になる」。

これらのトレードプログラムのほとんどは認証プロセスがあり、応募者は家庭用品業界での自分の専門を証明する書類を提出する必要がある。たとえば、ラブサックでは応募者に対して、専門的な組織の有効なメンバーシップ、リセール証明書、または何かしらの専門職資格を提供することを要求している。

大手企業も着目

大手の小売業者も、専門的な顧客によってリピーターが生まれることを認識している。ウェイフェア(Wayfair)の経営陣は、2021年の第2四半期の決算発表において、12カ月におけるウェイフェアプロフェッショナル(Wayfair Professional)の注文の80%は、これまでに4回以上注文を行っている買い物客のものだったと述べた。この時点でウェイフェアプロフェッショナルは年間に15億ドル(約2100億円)を超える純収益をあげており、複合年間成長率は30%を超えていた。

インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)のプリンシパルアナリストを務めるスージー・デビッドカニアン氏は、トレードのプロは通常の買い物客よりも一般に注文金額が大きく、衝動買いをする可能性が低いことから返品も少ないと語る。

同氏は、インフレのため消費者が家具のような高価なアイテムを購入するのを控えているため、「人々は出費も切りつめている」と述べる。「これらの家庭用品店のいくつかで、B2B市場がB2C市場よりも急速に成長しても驚かない」。

ロウズ(Lowe’s)やホームデポ(Home Depot)のような大手のホームセンター業者も、DIY顧客からの売上が低迷しはじめたのを受けて、トレードのプロを引き入れようと試みはじめている。ホームデポの第2四半期の決算報告では、プロの顧客からの売上がDIY顧客の成長率を超えている。一方で第2四半期のロウズの売上は、DIY販売の需要が減速したことの影響を受けた。ウエストエルム(West Elm)のようなほかのトレンディなブランドも、プライベートショッピングや設置サポートなどを売りにしたトレードプログラムを提供している。

プロの顧客が異なる理由

トレード買い物客の強力なネットワークを保有するのは魅力的かもしれないが、作り上げるのは簡単なことではないと、専門家は語る。専門家は、これらのプロは自分たちのクライアントのために購入する商品に対して高い基準があると語る。このような顧客は家庭用品の専門的技術を保有しているため、ビジネスを勝ち取るのは小売業者にとって困難な可能性がある。

プロと通常の顧客の両方の注目を引ければ、小売業者はより多様化された収益源を得ることができるが、両方の市場の要求に対応する試みはリスクがあると、パーカーアベリーグループ(Parker Avery Group)のシニアマネージャーを務めるキャリー・ハーベル氏は述べる。

同氏は次のように述べている。「我々は、ターゲットの市場を決めることを強調する。多くの場合、あまりに多くの異なるオーディエンスとつながろうとすれば、自分たちは何者なのを見失い、方向性を失うことになる」。

それでも、プロの承認を受けることで、単なる財務的な利点以上のものを得られる。インテリアデザイナーのようなトレードのプロは、ある意味インフルエンサーでもあると、ウォン氏は語る。一部のデザイナーは写真の投稿、好きな商品についての記事の執筆、仕事に関するほかのコンテンツの生成を頻繁に行うことで、強固な支持者を抱えている。これらのデザイナーは、いずれ自分のクライアントや、ほかのトレードのプロをブランドに紹介してくれる可能性がある。

「すべてのインテリアデザイナーは、自分自身がインフルエンサーだ」とウォン氏は語る。

専門家は、小売業者がトレードのプロを獲得するため、より多くのリソースの投入を試みることを予測していると語る。

[原文:‘It makes consumers more likely to trust you’: DTC home brands are increasingly vying for trade professionals]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Parachute

Source

タイトルとURLをコピーしました