マーケティングにおいて、常に変わらない法則があるとすれば、それは「常に変化が起きている」ということだろう。
ここ数年は、世界的なパンデミックや社会正義の問題から気候変動や進行中の景気低迷まで、業界に大きな不確実性をもたらしてきた。調査会社WARCの最新の「戦略の未来（Future of Strategy）」レポートでは、マーケティング・ストラテジストたちが、2023年以降に直面するであろう最大の経済的課題と業界トレンドを述べている。
マーケターとストラテジストが置かれている状況
「本レポートは、新型コロナウイルスのパンデミックを通してストラテジストたちがいかにクライアントへの影響力を強め、価値ある洞察を届けたかを明らかにした」と、WARCのブランド担当シニアエディター、アンナ・ハミル氏は報告書に述べている。「メディアのエコシステムが常に進化していることをアドバイスすること、特に不確実性が続くなかで、ブランドが新たな優先事項に対応できるよう支援する準備ができている」。
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この調査では、人材不足やCMOが直面するビジネス上の問題など、マーケターやストラテジストに影響を与えるいくつかの大きなトレンドが明らかにされている。WARCのストラテジストらはさらに、ブランドが責任と倫理的な行動を、特に持続可能性の観点からの取り組みを支援することが最優先されると述べた。
「ストラテジー関連の役職の人材を見つけるのに、以前よりも時間がかかっているのは確かだ」と、パフォーマンス・マーケティング企業ジャーニー・ファーザー（Journey Further）のCSO、ジェームズ・アデルストーン氏は言う。「これは、人員不足とそれに続く燃え尽き症候群が、雪だるま式に人員配置に関する問題を引き起こすリスクを避けるため、あらかじめ、早期に、人材を雇用することがこれまで以上に重要になっていることを意味している」。
この夏、全世界の700名のブランドおよびエージェンシーストラテジストを対象に調査したWARCの戦略報告書のハイライトを以下に示す。
依然として深刻な人材不足
WARCによると、顧客はゼネラリスト的なスキルを持つストラテジストを求める傾向が強くなっているが、エージェンシーたちは、大手のテック企業やコンサルティング企業と人材をめぐって競合することを懸念しているという。
コンサルティング会社やブランド企業が仕事をめぐって競争をする中、ストラテジストの約半数（46%）は、適切な人材の発見に不安を感じていると述べ、自分の次のストラテジー職もエージェンシーになるだろうと考えているのは、わずか30%だった。
これは、エージェンシーたちが現在、役職への厳密な適合性や経験がなくてもトレーニングして育てられる若い候補者を採用していることを意味しているかもしれない。「適切なメンターシップに沿った明確なトレーニングプログラムがあれば、最終的にはより早く役職を（人材で）埋めることができる」とアデルストーン氏は言う。
生活費上昇の「危機」は消費者の習慣に影響を与えるだろう
エージェンシーやブランドは、消費者行動に影響を与えるインフレや景気後退の恐れによってもたらされる経済動向に注目しており、69%がトーンからブランド構築までのマーケティング・コミュニケーションに影響を与えると考えている。
ジャーニー・ファーザーの米国CEOであるダンカン・スミス氏は米DIGIDAYに対し「2000年代末の金融危機の際、ブランドは2つの方法で方向転換した。それは、低コスト、価値ベースの製品開発、ポジショニング、コミュニケーションに重点を置き、販売量を増やすか、プレミアム製品のライン拡張を増やして利幅を維持し、消費者が無駄を減らす傾向にある時期における小さなぜいたく品を提供することだった」と語っている。
業界の多様性への取り組みには長い道のりがある
WARCの調査結果では、業界レベルで多様性への取り組みが進んでいないことが明らかになった。研究者らは、これらの問題についてクライアントに効果的に対応するには、雇用においてより具体的な変化が必要だと付け加えている。WARCはまた、エージェンシー自身が自社のチームに多様性を欠いており、クライアントに多様な洞察やアドバイスを提供する能力に影響を与えていると述べた。
「クライアントは、DE&Iがアジェンダに含まれていないことが社会的に受け入れられないことを知っている。（中略）だからと言って、クライアントがDE&Iを実現する方法を理解している訳ではない」と、クリエイティブ・エージェンシーのヴァーチュー・ワールドワイド（Virtue Worldwide）でAPACの戦略責任者を務めるフイウェン・トウ氏は言う。
［原文：Inside one prediction for how marketers’ strategies could be reshaped next year］
Antoinette Siu（翻訳：塚本 紺、編集：分島翔平）
