「本物かつ希少であること」:キングデビッドタコスCEOのドワイヤー氏が語る、カルトなブランドの育て方

DIGIDAY

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ブルックリンのタコス屋台から始まったキングデビッドタコス(King David Tacos)は、数十店舗に拡大し、ニューヨーク市以外にまで展開するという大きな野望を抱いている。

創設者でCEOを務めるリズ・ソロモン・ドワイヤー氏によれば、これは同社の粘り強いブランディングと、熱心な顧客ベースを育てる能力によって実現したものだという。同氏は今週の米モダンリテールのポッドキャストに参加し、同社の成長と野望について語った。

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キングデビッドは、ドワイヤー氏が広告業界での仕事を退職し、食品ビジネスにの世界に飛び込むという大胆な決断をした後、2016年に開始された。同氏はテキサスで育ち、ニューヨークの朝食タコス市場には大きな空白があると考えていた。

同氏は父親に、タイムズスクエアにタコススタンドを開くよう勧められたという。「私は、それが馬鹿げた考えだと思った」。しかし父親は、「タイムズスクエアにタコススタンドがないのが不思議だ。ニューヨークの朝にはタコスがぴったりなのに」と答えたそうだ。

それからというもの、父親の言葉はドワイヤー氏の頭にしつこく付きまとった。最初は、ケータリング企業としてスタートし、その後、屋外で屋台販売をはじめた。キングデビッドタコスは現在、60以上の小売店、自社のレストラン、さらにホールフーズ(Whole Foods)の一部店舗のホットバーセクションで購入できる。

キングタコス以前のニューヨークにおけるテクス・メクスのイメージ

ドワイヤー氏によれば、的確な経営を行うためにもっとも重要な要因はブランディングだった。同氏の知る限り、テクス・メクス(Tex Mex)料理はニューヨーク市で流行ったことがなく、それはおそらくレストランによる発信の方法に問題があったという。

「朝食のタコスがニューヨークで普及しなかった一因は、どれもこれもテキサスや南部をテーマにしたものだったからだと感じた」と同氏は語る。「どれもテーマやギミックにこだわり過ぎていた」。そして同氏は、キングデビッドをより本物の味にすることを望んだ。もちろん、同氏がこれまでに広告に関する経験を積んでいたことも役に立った。

このプレイブックに従い、ビジネスは迅速に立ち上げられた。ただ、ドワイヤー氏は依然としてモデル全体を進化させる方法を模索している。たとえば、タコスは現在ホールフーズのホットバーで販売されているが、今後は、通常はブランドのないセクションで商品を目立足せる方法を見つけ出そうとしている。「これは難問だ」と、同氏は述べている。

しかし同氏は、これから商売を学ぼうとする人たちに、ひとつの重要な助言があるという。同氏のようなビジネスを作り上げるためにもっとも重要な方法は、カルトになることだ。「大量のタコスを売るためには、そのブランドが顧客の目的になることだ」と同氏は述べている。

同氏との対談から、いくつかの要点を以下に紹介する。これらは明瞭さを考慮し、多少の編集を加えたものである。

オーセンティックなブランドを作り上げることについて

「我々は、屋台を作るよりも前にブランドを作り上げる必要があった。そのために多く行ったのは、テクス・メクスがどのように試みられ、なぜ失敗したのかを調べること、そして、長続きするビジネス、会社、ブランドを作り上げるよう心がけることだった。そして、目的と意義を持ち、本物のブランドであることが必要だった。この本物というのは少々言葉のあやが入っているが、私にとってはオーセンティックなものだ。私は、朝食のタコスがニューヨークで普及しなかった理由の一部は、どれもこれもテキサスや南部をテーマにしたもので、ギミックに寄りすぎたことだったと感じている。そして私は、自分の商品をギミックにすべきでないと感じた。人々がテキサスに抱いているイメージそのままであるべきではない」。

顧客サービスが鍵に

「ブランドは非常に重要だった。自社の声は自社のブランドに影響を及ぼし、さらには顧客サービスのレベルにも影響すると考えている。我々は顧客に対して、非常に透明で、正直で、オープンであるよう心がけている。私は5年、6年前からの顧客との関係があり、今でもケータリングを注文してくれている。顧客とのあいだで非常にパーソナルな関係を築いている。それは、我々のブランドがパーソナルなものだからだと私は考えている。そして、ブランド化がその役割を果たした。人々はつながりを感じているのだと思う。我々のブランドに気おくれすることもないだろう。このブランドは過度に高慢でもないし、トレンディでもない。人々は、このブランドと簡単につながりを感じることができる。子供を持つ親であれ、流行を追いかけるブルックリンの人であれ、とにかく、ブランドの構築は重要だった。しかし、当社にとって何よりも大事だったのは、商品とその希少性だったと、私は考えている」。

新しい小売業態の課題

「ホールフーズでは、適切なサイネージを設けることなどが課題となっている。人々は賢く、タコスを見つければ、ただそれを目にしただけになってしまう。しかし、このプログラムが現在のところ最良のものだと思っているかと言えば、それは嘘になるだろう。ブランド化がされておらず、しかもある意味見過ごされてきた領域であるため、課題であると感じている。当社はこれらを店舗のフローによってより的確な方法で結び付けようとしている。それは、有人の店舗内屋台を導入することかもしれない。そして、それはブランドの存在感を示すのに役立つだろう」。

[原文: King David Taco’s Liz Solomon Dwyer on growing a cult New York food brand]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)

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