店舗は「発見」を促すプラットフォーム:D2Cブランド3社が小売パートナーに求める価値とは

DIGIDAY

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D2Cブランドは、人々の注目を集められる場所に存在することを選んでいる。

5月17日火曜日にニューヨークで開催された、米モダンリテールとネイバーフッドグッズ(Neighborhood Goods)共催による「フューチャー・オブ・コマース(Future of Commerce)」のパネルにおいて、サウザンドフェル(Thousand Fell)、モード(Maude)、アクトプラスエーカー(Act+Acre)の3つのD2Cブランドの創設者たちは、小売チャネルを販売のためだけではなく、発見のためのプラットフォームとしても選択していることを語った。

近年においてD2Cブランドは、小売業者、特に大手小売業者とのパートナーシップを大挙して結ぶようになった。ウォルマート(Walmart)はスキンケアブランドのバブル(Bubble)、洗浄剤ブランドのセーフリー(Safely)、生理用品ブランドのローラ(Lola)と提携した。一方でターゲット(Target)は、マットレスブランドのキャスパー(Casper)、男性用スキンケアブランドのルーミン(Lumin)、サステイナブルな洗浄剤ブランドのグローブ・コラボレーティブ(Grove Collaborative)を追加した。これに対して、ネイバーフッドグッズのような新しい店舗は、ほかの店舗では販売していないような話題の新興企業の商品を提供することを、価値提案の一部としている。

経営陣たちはこのイベントで、新興企業が提携先の小売業者を決定する上で、ブランドが販売する商品に加えて、購買におけるカスタマージャーニーも大きな役割を果たすと語った。さらに、ミッション志向のD2Cブランドは特に、自社と同じ価値観を支持する小売業者との提携を求めている。

人々が信頼している場所に存在すること

セクシャルウェルネスブランドのモードの創設者であるエバ・ゴイコシェア氏にとって、自社商品を販売する小売店を選ぶためのもっとも基本的な要素は信頼だ。同社は2018年に創設され、バイブレーター、コンドーム、ローションなどの商品を販売している。モードの商品は自社ウェブサイト以外にセフォラ(Sephora)、ノードストローム(Nordstrom)、さらにはいくつかのホテルでも販売されている。

過去数年にわたり、同社はエースホテル(Ace Hotel)などのホスピタリティ分野の事業者とパートナーシップを築いてきた。これらのパートナーシップは同社にとってB2Bの収益源ともなり得るが、同時に消費者向けのマーケティングチャネルにもなる。モードの商品はホテルの部屋に置かれており(ギフトショップでも売られているが)、消費者が手軽に商品を試せるようになっている。

「当社はいくつかのギフトショップでも販売を行っているが、人々が当社の商品を気軽に買えるようにすることを目指している」とゴイコシェア氏は述べている。

しかし、利便性が常に重要なわけではない。同氏は、セクシャルウェルネスカテゴリーの顧客はAmazonで商品を購入することを望む場合もあるが、モードは現在のところAmazonをチャネルとして使用してはいないと語る。

同氏は次のように述べている。「カスタマージャーニーについて考える必要がある。顧客はすべてのストーリーを見られる必要がある。そうでなければ、同じカテゴリーに存在するほかの企業にかき消される結果になる」。

植物をベースとしたヘアケアブランドであるアクトプラスエーカーの創設者でクリエイティブディレクターを務めるヘレン・リービー氏は、同社が顧客の信頼を得るため、人々がどこに住み、どこでショッピングを行い、情報をどのように取り入れているかを調べたと語る。同氏は、消費者が自社のパートナーをどの程度信頼しているか、顧客とどのようにつながっているかも調べていると語る。

アクトプラスエーカーは、セフォラやアーバンアウトフィッターズ(Urban Outfitters)など有名な小売業者とパートナーシップを結んでいる。しかしアクトプラスエーカーの商品は、バイオレットグレイ(Violet Grey)のような、小規模ながらも自社のコミュニティと密接なつながりを持っている小売業者でも販売されている。。

「アクトプラスエーカーが小規模な小売業者と提携する際に真に重要視しているのは、その業者が自社のコミュニティをどのように活用しているかだ」とリービー氏は述べる。また、アクトプラスエーカーにとって、小売パートナーが顧客と積極的に関与していることを見届けるのも重要だと付け加えている。

店舗内での体験を作り出す

サステイナブルなファッションを掲げる靴ブランドであるサウザンドフェルにとって、同社のミッションを伝える上でパートナーとなる小売業者を見つけることは優先事項のひとつだった。同社の店舗内エクスペリエンスはすべて、リサイクルなどの取り組みを中心としたものだと、同社の共同創設者であるスチュアート・アーラム氏は語る。

「当社は、顧客と商品との関係を一変させる、実験的リサイクルというアイデアについて、たくさん話し合いを行っている」と、同氏は述べる。また、NFC(近距離無線通信)タグのような要素を通じて、顧客が商品に関与し続けられる方法を探していると述べた。NFCタグを使えば、スーパーサークルと呼ばれる同社のリサイクル・プラットフォームをすぐに立ち上げ、登録することができる。

アーラム氏は、同社が独自の市場として循環型社会を作り上げる方法をテストしているという。しかし、市場調査に投資するよりも、顧客からのフィードバックに耳を傾けることを計画していると同氏は述べた。

サウザンドフェルは、自社のミッションに合致したパートナーを慎重に選んでいる。

アーラム氏は次のように述べている。「リサイクルと循環性を、ブランドの大量消費を正当化するための方便にしたくない。しかし同時に、循環性を参加困難なものにしてしまうことも望んでいない」。

[原文:https://www.modernretail.co/startups/how-3-dtc-brands-use-retail-channels-as-a-discovery-platform/]

Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Ivy Liu

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