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ユーザー生成コンテンツ(UGC)の力を活用しようとする新興ブランドが増えている。
このマーケティング戦略は目新しいものではなく、マーケターは多くの場合にこの方法を、ブランドへの認知を広めるためのよりリアルで、洗練されていない方法として勧めている。しかし、多くの新興ブランドがマーケティング予算を制限し、顧客獲得コストの低減を求めている状況において、安価に入手できるUGCは最優先になりつつある。
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この2年間で創設された、初期段階にあるeコマース企業の創設者の何人かが、インフレに対抗するために、顧客が作成したコンテンツを活用することについて、米モダンリテールのインタビューに答えた。その目標は、UGCによって多くの顧客を獲得し、マーケティング予算を有効活用することだ。
着用画像のSNS投稿を促す
6月に創設されたD2Cのソックスブランドのダブルソウル(Doublesoul)は、マーケティング材料の主な供給源として、ユーザーコンテンツを利用している。共同創設者のベン・ローゼンバウム氏とアリソン・ストルメイヤー氏は、同ブランドがZ世代に特化しているため、同社のジェンダーニュートラルなソックスをバズらせるには、洗練度の低い顧客作成の画像のほうが効果的だと、米モダンリテールに語った。
ダブルソウルは、現在の顧客に加え、潜在的な顧客にも、いくつかの方法でブランドについての投稿を促そうとしている。今年の夏のはじめ、ニューヨーカーに対して、同ブランドの屋外広告を目にしたら、インスタグラムでタグ付けするよう働きかけ、その引き換えに割引を行った。また、はじめての顧客に対し、確認注文のためのメールのなかで、ソックスをどのように履いているかを示すよう求め、その写真や動画を同ブランドのソーシャルメディアページで拡散させている。
「我々は、おもにソックスを履いている顧客について投稿し、それぞれの人がどのようにソックスを着こなしているのか紹介している」と、ストルメイヤー氏は述べている。
また同社は、モデル、写真家、ミュージシャンなどのクリエイターやソーシャルメディアのパーソナリティにソックスを贈り、その写真をインスタグラムやTikTokに投稿するよう働きかけることで、コンテンツを生み出そうと試みている。
この初期の評判は、ダブルソウルがセレブリティのスタイリストたちに有機的にリーチするのにも役立った。たとえばピート・デビッドソンのパーソナルスタイリストたちは、友人たちがソーシャルメディアに投稿したことによって初めてソックスのことを知ったと、創業者の2人は語った。ダブルソウルは、カラフルなソックスをデビッドソンに紹介し、SNL(サタデーナイトライブ)のスターである同氏がソックスを身に付けている写真を、インスタグラムアカウントに投稿した。これによってダブルソウルのウェブサイトへのトラフィックは急増した。
ピートダビッドソンがダブルソウルのソックスを着用した写真を投稿
ダブルソウルが操業を開始してからわずか数カ月で、「リピーター顧客が30%を超え、2回目の注文のバスケットサイズは最初のときより2倍か3倍になる傾向があった」と、ストルメイヤー氏は話す。また同社は、新色や新素材のリリースに合わせ、クリエイターや顧客によるソックスについての投稿をさらに増やす予定だ。
レビューの良し悪しは問題ではない
ヘンプを原料としたニコチンフリーの禁煙用タバコを製造するD2Cブランドのオクラホマスモークス(Oklahoma Smokes)は、2020年半ばに同社を創業して以来、同社にとってTikTokユーザーが作成したコンテンツが、同社の認知を広めるための主要な要因となってきた。喫煙用商品に対する制約があるため、同社は有料広告をいっさい行っていない。「しかし仮に行えたとしても、今の環境ではソーシャル広告に料金を支払いたくない」と、創設者のアシュウィン・クリシュナスワーミー氏は語る。
同社は昨年から、TikTokのレビュー作成を依頼するカードを注文ごとに送付している。「当社はレビューの良し悪しは問題としていない。無料のパックと引き換えに、タグ付けさえしてくれればいいのだ」と、同氏は説明している。この方法はオーガニックなコンテンツを作成することに成功しており、買い物客の5%は自分のフォロワー向けにレビューを投稿している。
可能な限り多くのUGCを生み出し、数週間ごとに投稿がバイラル化することに期待するという考えだ。
「これらの動画の約8割は再生回数が数百回に留まるが、10〜20%ほどは数十万回再生され、当社の売上を急増させる」と、クリシュナスワーミー氏は述べている。顧客が7月に投稿した動画のひとつは50万回再生され、1日で1万4000ドル(約200万円)の売上を生み出した。
同ブランドは3カ月前にTikTokユーザー向けの無料サンプルも開始し、クリシュナスワーミー氏はこれを一般的なインフルエンサーのギフトと区別している。「当社はTikTokを調べ、タバコや電子タバコを止めることについて話している人たちを見つけると、自社を紹介して、商品サンプルを送ることを提案する」と、同氏は述べている。このプログラムのオプトイン率は毎月200人程度だ。
「CPM(インプレッション単価)ベースでは、このプログラムのコストは約67セント(約96円)で、TikTok広告のCPMでも現在5ドル(約715円)であることを考えれば格安だ」と、同氏は説明している。
ただし、UGCキャンペーンを継続的に行うことの最大の欠点は、退屈な手順であり、多くの働きかけが必要なことだ。
若手ブランドのよりどころ
今年の夏のはじめに創業し、カフェインミストを販売している新興企業のプザズ(Pzaz)も、自社のTikTok投稿を毎日更新するため、ユーザー作成コンテンツを多用している。創業者のジョナ・レイダー氏は、TikTokが特に「UGC向けの環境が整っており、我々の商品やブランドが、クリエイターの既存のコンテンツフローと完璧に統合されているときは特に適している」と述べている。
プザズは、自社のウェブサイトや一部のコンビニエンスストアで商品を販売している。これまでのところ、プザズのチームは、商品を気に入ってブランドにコンタクトしてきた人々や、同社のサイトにすでにレビュー動画をアップロードした顧客からコンテンツを調達している。プザズのソーシャルメディアのページでは、フォロワーに対してデリやボデガを訪れ、プザズの商品を受け取るときにオーナーとスナップ写真を撮るよう促されることがよくあるそうだ。同ブランドのウェブサイトには、プザズのスプレーチューブを使用している顧客の自撮りや動画を投稿するためのカスタマーレビューのコーナーがある。「大量のUGCを作成する機会費用は低いため、ほかのマーケティング施策と連動させて、UGCが常に送られ続けるフローを維持するようにしている」と、同氏は説明する。
しかし、UGCの活用を増やそうとしているブランドにとって最大の疑問点は、予測可能性だ。それは、コンバージョンの結果がバイラル性によって大きく変化するためだと、オクラホマスモークスのクリシュナスワーミー氏は語る。「しかしコストの観点から、UGCを促進するのは、非常に効果的で受動的な方法だ」と同氏は述べている。
若いブランド、特にパンデミックの不安定な広告環境から生まれたブランドにとって、ユーザー生成コンテンツはデジタルマーケティング予算のよりどころとなる。
「これから有料広告のテストを開始するため、オーガニック・コンテンツに支えてもらうことで、今後1年間の事業を継続していきたい」と、ストルメイヤー氏は述べている。
著者:GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Doublesoul