ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson&Johnson、以下「J&J」)が、アビーノ(Aveeno)をベビーケア領域に拡大してから20年以上になる。ベビーブランド「ジョンソンベビー(Johnson’s Baby)」の創設から128年経つ同社が、このたび新たなベビーケアブランドを立ち上げた。
新世代をターゲットにした商品の開発
7月21日にJ&Jが発表した「ヴィヴィ&ブルーム(Vivvi & Bloom)は、X世代とミレニアル世代の親や保護者の現代的な価値観に対応することを目指している。コミュニティ主導で開発した商品は、過去10年間の美容業界のトレンドにヒントを得て、天然の成分を多く配合している。シャンプー、ボディローション、頭皮&ボディのマッサージオイルなど5つの製品はすべて9.98ドル(約1350円)で、ウォルマート、アマゾン、そしてさまざまなドラッグストアチェーンにて販売される。すべての製品はパラベン、硫酸ナトリウム、着色料を含んでおらず、クリーンビューティを積極的に推進するNPO「環境ワーキンググループ(EWG)」の認証を取得している。ヴィヴィ&ブルームのブランド開発にあたっては、ミレニアル世代ならびにZ世代の親や保護者238名からなる多様性に富むコミュニティがフィードバックを寄せている。
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「最初からコミュニティに参加してもらい、デジタルファーストのアプローチを共に作り上げるという点で、ジョンソン&ジョンソンのこれまでのアプローチとは異なる」と語るのは、同社スキンヘルス部門の米国担当プレジデントであるデュダ・ケルテス氏だ。「これは私たちが学びたいアプローチであり、将来的にはポートフォリオ内で他にも活用していきたいと考えている」。
ヴィヴィ&ブルームは、同社のジョンソンベビーやアビーノベビーと比べるとプレミアムブランドという位置づけだ。ヴィヴィ&ブルームのウォッシュ&シャンプーは10オンス(約300ml)のボトルがウォルマートで9.98ドル(約1300円)で販売されているが、もっと大きなボトルのジョンソンベビーのシャンプーは4.28ドル(約580円)、アビーノベビーは6.76ドル(約920円)で売られている。シャンテカイユ(Chantecaille)、ドクター・バーバラ・シュトルム(Dr. Barbara Sturm)、アウレリア(Aurelia)などラグジュアリー系の美容ブランドでは2019年から、ベビーケアの製品ラインのプレミアム版やラグジュアリー版の開発に取り組んでいる。スキンケアブランド「ビオッサンス(Biossance)」を擁するアミリス(Amyris Inc.)も、ポートフォリオを拡大して保護者と子どもたちの両方にサービスを提供するため、ベビーケアブランド「ピペット(Pipette)」を買収した。
オーセンティックなブランドイメージからクリーンビューティ推しへ
妊婦が使う製品が胎児に及ぼす影響への懸念がクリーンビューティの発祥にもつながっている。多くの美容ブランド創設者が、クリーンな製品に切り替えるきっかけは自身の妊娠だったと語っている。
ケルテス氏によるとジョンソンベビーとアビーノベビーは、パラベンや硫酸ナトリウムを使用しない配合などヴィヴィ&ブルームと同様の特徴や機能を備えているものの、セールスポイントとして認識されていないのだという。2018年にジョンソンベビーは製品ライン全体を見直し、合成着色料の使用をやめ、ココナッツオイルなど天然由来原料を増やした。当時ウォール・ストリート・ジャーナルが報じたように、親たちのジョンソンベビーの印象は「古風で、化学物質を多く含んでいるもの」だった。同社のベビーパウダーががんを引き起こしたとする集団訴訟で、評判が悪化することはなかったようで、ジョンソンベビーはベビーケアのカテゴリー全体で世界シェアの10.5%を占めている。ユーロモニター(Euromonitor)の2021年のデータによると米国内のベビースキンケアでは1位、ベビーヘルスケアではロレアルキッズ(L’Oréal Kids)に次いで2位であった。
「ベビーケアのカテゴリーで1位、2位、3位のブランドを目指している。ヴィヴィ&ブルームには、トップまで上り詰めてほしい」とケルテス氏。「カテゴリーの成長を促進し、より多くの保護者がこれらの製品を試し、そして(ベビーケア製品を)長く使ってもらえればと考えている。赤ちゃんが幼児期、学童期へと成長するにつれ、製品がニーズを満たさなくなったと感じた保護者が、大人向けの製品に移行することもある」。
売上高減少の主な理由はサプライチェーンの制約
J&Jが19日に発表した2022年第2四半期の業績によると、ジョンソンベビーのほかにアビーノ(Aveeno)やニュートロジーナ(Neutrogena)などの美容ブランドを擁するコンシューマーヘルス事業は、売上高が2021年の38億5000万ドル(約5274億円)から38億ドル(約5200億円)へと1.3%減少した。同社CFOのジョー・ウォーク氏は決算発表で、売上高減少の主な理由にサプライチェーンの制約を挙げた。ケルテス氏はヴィヴィ&ブルームの売上予測について、コメントを控えた。
「マクロな逆風は、サプライチェーンの制約に関連するもので、昨年末に私たちがコメントした内容のうち、いくつかは今年の前半まで続いた。主にコンシューマー向けのフランチャイズで、供給面で制約が生じて入手困難になる製品があった。このような制約が和らいできた部分もあるため、特にスキンヘルスと美容の事業は下半期にはるかに好調になると予測している」とウォーク氏は語る。
デジタル戦略としてターゲットに近しいコミュニティを立ち上げる
ヴィヴィ&ブルームではデジタルファーストの一環として、ミレニアル世代ならびにZ世代の親や保護者約2000名を第三者パートナーを通じて募集し、消費者調査したのち、共創のためのコミュニティを代表する238名を選出した。ザ・ビレッジ(The Village)と呼ばれるこのコミュニティでは、商品開発やブランド価値、さらにはどの慈善団体と組むべきかについても議論し、その結果、非営利団体「ニューボーンス・イン・ニード(Newborns in Need)」を選んでいる。
ヴィヴィ&ブルームのローンチにあたり、まずは20日にクイーンズ植物園(ニューヨーク市)でイベントを開催し、ザ・ビレッジにメディアとインフルエンサーを招いた。ザ・ビレッジはさらにデジタルコンテンツを制作し、ヴィヴィ&ブルームを取り上げることでスポークスピープルとしての役目も担う。このコミュニティのなかでヴィヴィ&ブルームの開発中に報酬を受け取った者がいるのか、あるいは今後報酬を出す可能性があるのかについて、J&Jはコメントを控えた。
[原文:Johnson & Johnson leans on beauty trends to create Vivvi & Bloom baby care brand]
EMMA SANDLER(翻訳:田崎亮子/編集:猿渡さとみ)