シェリル・サンドバーグ 氏 退任に対する広告業界の反応:「賞賛すべき点は多いが、負の側面の責任もある」

DIGIDAY

ひとつの時代が終わる。メタ(Meta)のCOOシェリル・サンドバーグ氏が、ソーシャルメディア界の巨人における14年の歳月に間もなく終止符を打ち、それとともに明々白々たる成功の、だが多くの物議を醸した時代が、終焉を迎えようとしている。

同社の守護神的役員、サンドバーグ氏は2022年秋に退任を予定している。現チーフグロースオフィサーのハビエル・オリバン氏がCOOを継ぐまでは、メタに取締役として残るが、「未来が何をもたらしてくれるのかは、まだはっきりとは見えていない」と、氏は語っている。

Facebook保有企業の株価がよろめきを続けるなか――退任発表日の取引終了後、2.5%下がったが、時価総額は依然、5000億ドル(約62兆5000億円)を悠々と超えていた――米DIGIDAYは広告業界に対し、彼女の退社に対する思いを訊ねた。

「唯一の大人」

ソーシャルネットワーク界における「唯一の大人」と見られていた人物、サンドバーグ氏がFacebookに入社したのは2008年。CEOマーク・ザッカーバーグ氏が同社を創業してからわずか4年後のことだった――前者がGoogleから転職してきた当時、後者はまだ23歳だった。「シェリルは我々の広告事業を設計し、優れた人材を雇用し、我々のマネジメント文化を構築し、会社を動かすとはどういうことなのか、私に教えてくれた」と、サンドバーグ氏の退任発表を受けて発行されたプレスリリースにザッカーバーグ氏は書いている

サンドバーグ氏がトップの座にいた14年間、Facebookはマイスペース(MySpace)をはじめとする、当時は圧倒的存在感を持っていた競合を追いやり、ソーシャルメディア界の頂点に君臨した。その間、同社の広告オファリングの発展に努めたサンドバーグ氏の手腕は、シリコンバレーのスタートアップから一大上場企業への変貌に極めて大きな役割を果たした。

コンサルティング会社プロハスカ・コンサルティング(Prohaska Consulting)のCEOマット・プロハスカ氏は、「メディア界屈指の2社で発揮された」サンドバーグ氏の手腕は無論、称賛に値するものだと認めたうえで、自らの眼前で生じた負の側面について、彼女に責任があるのも確かだと指摘する。

「これまで常に、ザッカーバーグ氏が同社の顔として前に出てきたが、彼女(サンドバーグ氏)が同社における全事業の頭脳だったことは、明らかだ」とプロハスカ氏。「データの使用、つまり利用と濫用の双方に関して、収益化の中核をなす決断はすべて、彼女の指揮監督下でなされてきた」。

「予想より長く君臨した」

2021年10月、業界全体が消費者プライバシーに依存するなか、Facebookは社名をメタに変えた――そしてメタバースに興味津々の広告主らを煙に巻いた。「同社は人々の目を逸らすために社名を変え、それで自ら悪評を手に入れたわけだが、彼女(サンドバーグ氏)はその結果をもたらした張本人らのひとりでもある」と、プロハスカ氏は指摘する。

また、メタとの付き合いに対する影響を懸念し、匿名を希望した別の広告会社幹部は、Facebookのメディアオファリングを巡って起きた物議は、たとえばパフォーマンス効果測定を巡る混乱にしても、さらには言うまでもなく、データセキュリティやコンテンツキュレーションの懸念にしても、同社の評判に泥を塗ったと指摘する。

「彼女は大方の予想よりも長く留まった――理由は例のメトリックスだけじゃない、ザッカーバーグ王国における風向きがピーター・ティール氏陣営に変わる、という社内政治的な部分もあった」と同氏。「広告主らはいま現在、メタを相当冷ややかな目で見ており、サンドバーグ氏が退任した程度で変わるものではない」。

強大な脅威が迫り来るタイミングでの退場

サンドバーグ氏が退任を発表したのは、NYマディソン街にそびえるソーシャルネットワーク界の巨人を象徴する「顔」のひとつと、多くの業界関係者から見られていた幹部、キャロリン・エヴァーソン氏が同社を後にしてから1年も経たないうちのことだ。

戦略マーケティング会社セイリアントMG(SalientMG)の創業者/CEOマック・マッケレビー氏は、この重鎮2名の退陣が、同社広告チームがTikTokなどの勢力や、リテールメディアといった新たな脅威との熾烈さを増す競争に、そして言うまでもなくAppleをはじめとするプラットフォームの反発に直面している最中に起きた事実に注目する。

「Amazonの広告事業の台頭、Netflixの広告戦略が持つ大きな潜在力、そしてAppleのさまざまな個人情報保護機能という逆風に晒され続けている現況を見れば、メタが広告への姿勢を再調整する時期に来ているのは、火を見るより明らかだ」とマッケレヴィー氏。「シェリルの退陣が新たな姿勢導入の、そしてカンヌにおける活発な議論の道を敷くことになるのは、間違いない」。

メタの5年、10年後は?

ブランドコンサルティング会社メタフォース(Metaforce)の共同創業者アラン・アダムソン氏はサンドバーグ氏の退社について、氏がこれまで同社経営幹部の中で重要な碇役を担っていた事実を考えると、マディソン街における評判という株価に関して、「メタが今、もっとも望んでいないことだ」と評する。

「これからの5年がこれまでの10年ほど楽しいものになることは、まずありえない」とアダムソン氏。「社の礎石がまたひとつぐらつくなか、それでもCOOはすべてを同時並行で進めなければならない。彼女の後任については、肩書きを付け替えるのは容易いが、能力については、そう簡単にはいかない」。

[原文:Adland’s verdict on the exit of Meta COO Sheryl Sandberg: ‘She hung on for longer than many expected’

(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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