パブリッシャー の状況は悪化も、2Q以降の業績は前年よりは好調との予測

DIGIDAY

2023年第2四半期も終わりに近づいている。パブリッシャー各社は、低調だった上期を振り返り、下期も同じ傾向が続くかどうか、見通しを立てられずにいる。

某メディア企業の幹部は、「状況はかなり悪い」と述べている。しかし、米DIGIDAYが本記事執筆にあたって取材したほかの企業幹部5人の見方は一様に、そこまで悲観的ではないようだ。

実際、第3四半期については年初にパブリッシャー各社が発表した通期業績予想と異なり、確たる見通しを示せない状況だが、取材に応えた5人のうち2人は、第2四半期の売上(着地予想)は前年比で横ばいだ、としている。また、もうひとりは「2023年下期には、自社によるRFP(提案依頼書)の提出件数、提示額、成約率のすべてが前年を上回る見込みだ」と述べた。

米DIGIDAYでは6月第2週、前出のパブリッシャー幹部5人を対象にオンラインインタビューを実施し、各社のメディア事業の現状を取材した。幹部による回答の抜粋を以下にまとめる。

第2四半期について

「(第2四半期は)2022年末時点の予測より、売上の伸びが鈍化してきた」と、アパートメントセラピーメディア(Apartment Therapy Media)のプレジデントであるリヴァ・シロップ氏は語る。

一方、新鋭のニュースパブリッシャーであるセマフォー(Semafor)の最高収益責任者(CRO)、レイチェル・オッペンハイム氏は「第2四半期で第1四半期の2倍の売上を達成する見込みだ。詳細な数値は開示できないが、金額ベースで8桁を超えており、誇らしいかぎりだ。足元の業績には勢いがある」という。

シロップ氏の見立てでは、「第2四半期売上の着地予想はいまのところ、ほぼ前年並み」だといい、「実は、事業環境がもう少し早く改善して、2022年の実績を上回るだろうと期待していた。とはいえ、現時点での予測にとくに不満があるわけではない」と話す。

このほか、今回取材した3人目のパブリッシャー幹部は、匿名を条件にこう語った。「ビジネス全体としては順調だ。一部の分野では需要が弱含みとなっているが、対処できないほどの問題ではない。一方で、取引成立件数が過去最高を記録した分野もある」。

続けて、「需要はおおむね安定している。コロナ禍当時のような大幅な需要増が期待できるかといえばそれは違うが、クライアントの広告主とは実のある話ができている」という。

広告購入行動とキャンペーンの変化

一方、シロップ氏は最近の変化についてこう述べている。「第2四半期で興味深いのは、クライアントの広告購入行動における変化で、主に直販でその傾向がみられる。とくにデータへの注目度が高まっており、収集した大量のデータをキャンペーンのクリエイティブに活かす事例が増えている」。

また、「もうひとつの大きな変化は、2022年の第4四半期と2023年の第1四半期に実施された広告キャンペーンが『ボトムオブファネル』のオーディエンス向けだったことで、当時はどのブランドも使える予算はすべてつぎ込んで短期決戦で販促活動をしていた」と話す。「一方、我々のクライアントであるブランド広告主の多くはいま、売上増のみにこだわるよりも、消費者の商品購入検討プロセスにいかに影響を与えるかに注力している。自社ブランドを前面に打ち出すだけの単純なキャンペーンは望まない」。

3人目のパブリッシャー幹部はプログラマティック広告のキャンペーンについて、「間違いなく進化している」と述べる。「なんでも自動化すればいいというわけではないが、キャンペーン運用の管理はやりやすくなった。クライアントとは現実に即した議論をしており、不満な点があればクライアントが伝えてくれるうえ、予算配分についても、何をどうすべきか率直な意見が聞ける。恵まれた関係だ。実践的な方法で協業できるのはありがたい」。

シロップ氏は2022年を振り返ってこう語った。「2022年の第2四半期、当社は大がかりなエクスペリエンシャルマーケティング施策を計画していた。体験型イベントのSmall/Cool(自宅の一室を対象としたデザインコンテスト)もそのひとつだが、結局は2023年秋に延期した。賢明な判断だったと思う。当時、没入体験ができるポップアップストアや、大規模イベントの需要が弱かったうえ、当社のクライアントもその種の施策を望んでいなかったからだ」。

15万ドル以上の直接取引は予想がつきにくい

もうひとり、匿名を条件に取材に応じたデジタルメディア企業の幹部は、「中規模の契約が取れにくくなっている」と述べた。「理由は予算削減で、クライアントはリテールメディアネットワークのような下部ファネル向け施策を推し進めている」。

このメディア企業幹部によると、直販の場合15万ドル(約1950万円)までの広告の需要はまだ堅調だが、それ以上の価格帯になると予測がつきにくいという。コンバージョン率では40万ドルから50万ドル(約5200万円から約6500万円)規模の広告がもっともよく、費用対効果が高い。それ以下の価格帯だと効果があまり期待できないようだ。

幹部は続けてこう語った。「当社が保有する独自のコンテンツやプロパティは、ブランド各社のあいだで評価が高く、業界に対する影響力はかなりのもので、収益力もある。しかし、日替わりキャンペーンや長期集客型のエバーグリーンコンテンツ、新学期応援キャンペーンなど特定の目的に特化したスポンサー施策の場合、非常に厳しい。RFPに応募するにしても、40社ものパブリッシャーと競争しなければならないからだ」。

大型案件を獲得するには

「2023年上期にパートナーを組んだクライアントで、下期も再び当社と組むと確約している企業が多数ある」とシロップ氏は述べている。「我々はすでに、大手クライアント6社による下期広告キャンペーン案件を獲得した。クライアントは実績十分で信頼のおける、協業しやすい企業をパートナーに選び、自社ブランドにとって最も効果が上がると実証済みの施策を実行しようとしている」。

また、「当社の場合、2023年下期にクライアントが実施(一部は第2四半期末に開始)予定のキャンペーン向けRFP提出件数は、第2四半期には前年同期比で2倍に達し、提案の提示額は50%増となった。案件の成約率は年初からの累計で前年比20%の改善がみられた」と続けた。

前出のデジタルメディア企業幹部は、「クライアントをうまく説得できれば収益拡大のチャンスが生まれる」と話す。たとえば、「馴染み深いウォルマート(Walmart)の広告プラットフォームもいいが、次は新たなプラットフォームの案件でお手伝いさせてください」と提案して受け入れられれば、契約金額にして7桁台(100万ドル[約1億3000万円]以上)の取引につながる可能性もある、という。

「我々は5月に、7桁台の3案件の成約にこぎつけた。マーケットプレイスが活況を呈していれば10案件でもいけただろうが、今回成立した取引では300万ドル(約3億9000万円)と100万ドル規模の契約が複数あり、1件で500万ドル(約6億5000万円)を超える取引はなかった」と企業幹部は述べた。

一方、オッペンハイム氏はこう語っている。「マーケットプレイスでの競争は熾烈で、簡単に売れる広告商品など存在しない。我々は、イベントの質やオーディエンスの質で差別化したいと考えている」。

加えて、「我々はクライアントの声に耳を傾けるよう心がけている。いまの市場環境下では、収益担当幹部や営業チームには傾聴の姿勢が必要だ」と同氏は主張する。「自社が販売する商品やサービスの内容自体はそれほど重要ではない。重要なのはクライアントが解決したい問題が何かを把握することだ」。

2023年6月第2週の成果

前出のメディア企業幹部は、2023年6月第2週の成果について次のように語った。「昨日もまた、100万ドル超相当の契約を成立させた。しかし、大型契約を取れば安泰というわけではない。日々、25万ドル(約3250万円)、35万ドル(約4550万円)の中型案件を継続的に取れるようでなければ好調とはいえないが、あいにくそういった中型契約の獲得は件数、頻度ともに減ってきている」。

見通しが立たない企業が多い

今回、匿名を条件に取材に応じたある企業幹部は、「2023年四半期末近くまでクライアントの広告予算が決まらないため、我々も第3四半期の見通しが立てにくい。しかしいま、プログラマティック保証型取引による広告枠買いつけが増えてきたのは事実で、この傾向はまだ続くとみられる」と語っている。また、ほかのメディア企業幹部は、「2024年に入るまでは需要の本格的な回復は見込めないと思う」と述べている。

一方でセマフォーのオッペンハイマー氏は下期についてこう語った。「当社の場合、第3四半期と第4四半期の売上についてはある程度予想できている。ただしこれは、ローンチパートナーとの長期契約と、2022年10月に当社が設立される前に築いたクライアントとの関係にもとづく取引によるものだ」。

このほか、「いまは上期に比べ、見通しが立てやすくなった。年明けの1月は業界全体が先行き不透明で、混乱していた」とある企業幹部は述べる。

さらに、アパートメントセラピーメディアのシロップ氏は、直販事業について「2022年と比べ2023年は、直販の勢いがかなり違う。第4四半期の受注はすでに、前年同期の2倍に達した」と説明し、「クライアントの多くが予算縮小傾向から脱しつつあり、以前に比べてさほど躊躇なくマーケティング施策に投資するようになった」という。

クライアントの各業界の現状について、あるメディア幹部は「小売業界はいま、大きな困難に直面しており、売上にも影響が出ている。アディダス(Addidas)がカニエ・ウエストの人種差別言動を問題視して契約を打ち切った件や、脅迫を受けたターゲット(Target)がプライド月間向け商品を撤去した件など、悪いニュースが相次ぎ、業界全体に余波が広がりそうだ」と述べる。

また、「金融業界は回復の兆しが見えていたところへ、シリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)の破綻で水をさされた。2023年はこうした悪い流れが続いており、このまま景況感が悪化すると、各社の予算にも影響が及ぶだろう」という。

[原文:Media Briefing: Publisher execs fear lack of visibility for Q3, but feel steady year over year

Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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