「アパレルには特に物理的環境が必要だ」:カナダグースやザ・ノース・フェイスがいま、実店舗に投資する理由

DIGIDAY

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ベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)ウォルマート(Walmart)メイシーズ(Macy’s)などの小売業者の店舗閉鎖が相次ぐなか、いくつかのアパレルブランドは対面販売の買い物客へのアピール拡大を推し進めている。

カナダグース(Canada Goose)は今後5年間で実店舗の数を倍増することをめざしており、ラルフローレン(Ralph Lauren)は今後3年間で250店舗の新規出店を計画している。ザ・ノース・フェイス(The North Face)は2027年までに北米に70店舗を新たに開設することを望んでいる。一方でアウトドアブランド用品販売のREI(アールイーアイ)は春にカリフォルニアに新店舗を、2024年にはオクラホマに新しい生活協同組合店を開設する予定だ。また、ブオリ(Vuori)は夏の終わりまでに9店舗の新規出店をめざしていることが米モダンリテールの調べでわかった。

「人々は物理的な環境に戻ることを望んでいる」

アパレルやフットウェアの企業は、経済の不確実性の影響をもっとも激しく受ける傾向があり、コアサイトリサーチ(Coresight Research)によると、アパレル分野は2022年に米国において、ほかの分野よりはるかに急速に閉店が進んだ。それにもかかわらず、対面でのショッピングエクスペリエンスを求める顧客への対応を改善するため、実店舗に投資するアパレル企業は増えつつある。多くの人々はパンデミックの初期にはショッピングの大部分をオンラインで行っていたが、店舗内でのショッピングは回復しつつある。コンサルティング会社のPwCの新しい調査によれば、ショッピングの方法として、実店舗は43%と依然としてもっとも多く選ばれ、次点でモバイルやスマートフォンでのショッピングが34%となっている。

実店舗について、「あらゆる部分でトラフィックが増えている」と、PwCの米国小売リーダーを務めるケリー・ペダーセン氏は米モダンリテールに語った。「人々は現在、物理的な環境に戻ることを激しく望んでいる」。さらに、eコマースは『フルフィルメントのもっとも高価な形態』であるため、小売業者は消費者が店舗に戻ることを強く歓迎している」と、同氏は続ける。

過去数年間にわたって、多くの企業は販売とマーケティングにオムニチャネルの手法を取り入れてきた。しかし、デジタルチャネルに強く特化するあまり、「我々は、オンラインの要素に、オフラインの要素には決して与えないような多くの信頼を置いてきた」と、プレイサーエーアイ(Placer.ai)のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるイーサン・チェルノフスキー氏は米モダンリテールに語った。「オフラインの重要性は1年前、2年前、5年前と比べてすこしも減少していない。依然として非常に重要であり、成長し続けている」。実際に、「物理的な店舗はこれまでになく重要になってきている」と、同氏は付け加えている。

アパレルが実店舗を重視する理由

アパレルは、人々が棚を見回して、さまざまな布地の感触をたしかめ、商品を試着してみることで特に利益を受ける企業であるため、この点に注目している。カナダグースは現在、全世界に51店舗の常設店舗を保有しているが、投資リリースによれば、「アジア太平洋、EMEA、北米で店舗を増やし、合計店舗数を130〜150店舗にする」ことを望んでいるという。同ブランドは2028年までに収益で30億ドル(約4050億円)に達することを計画しており、成長の大部分はD2C(ダイレクト販売)事業によるものだ。

ラルフローレンの収益のほとんどは小売事業によるもので、それに卸売事業とライセンス供与事業が続く。同社の現在の実店舗数はカナダグースよりはるかに大きいが、「全世界の顧客が当社のブランドと直接かかわれるように、新しい実店舗を開設する」方向ですでに進展していると、CEOを務めるパトリス・ルーベ氏は最近の決算発表で語った。

フットウェアニュース(Footwear News)によれば、ラルフローレンの市場展開は現在、北京、上海、ミラノ、ミュンヘン、ロサンゼルス、シカゴ、マイアミ、アトランタなど30都市で進められている。同社の最新の決算発表では、2021年12月25日の時点で、ラルフローレンの直営店は全世界で505店舗、認定売場は676店舗だった。これらの数値は、2022年12月31日の時点で、それぞれ549店舗、728店舗に増加していた。

一方、ザ・ノース・フェイスは体験型店舗の構築に重点的に投資してきた。同社ではじめてのこの種類の店舗は2019年にニューヨーク市で開設した。同社は当時、その店舗が「実験のためのベースキャンプ」になることを望むと述べ、すべての新店舗がFSC認定済みの再生木材、鋼鉄、花崗岩を使用すると発表した。リテールダイブ(RetailDive)によると、同社は今後5年間で全世界の小売店およびパートナー企業の店舗を合計300店舗に増やしたいと考えている。

オンラインショッピングは便利で、時間を節約できる。しかし、「何かを発見するのには向かない」と、チェルノフスキー氏は説明する。特にアパレルの場合、「最初の訪問は依然として、物理的な環境で行う必要がある。なぜなら、そこで試着ができ、そのブランドを気に入るようになるのは、物理的な環境だからだ。エクスペリエンスがもっとも重要で中心にあるという認識が、今、実店舗の環境に注目が高まっている原因だと、私は考えている」。

[原文:‘Physical retail has never been more important’: Why apparel companies like Canada Goose and The North Face are investing in stores]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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