創業45年を迎える植物性食品ブランドのシルク(Silk)が、同社初の試みとして、TikTokの活用に注力している。組織の刷新と若者を含むより多様な購買層にアピールするためだ。
人気が急騰するTikTokは、いまや広告主のソーシャル予算の主軸となりつつある。イーマーケター(eMarketer)の調べによると、今年、米国におけるTikTokの広告純収入は推定で59億6000万ドル(約8034億円)に達する見込みだ。この金額は、2500億ドル(約33兆円)近くにのぼる米国のデジタル広告費の2.4%に相当する。
「カルチャーが生まれる場所」
「カルチャーが生まれるその場に身を置かなければ、それを活用することはできない。TikTokはカルチャーが生まれる場所のひとつだ」。シルクの親会社であるダノンノースアメリカ(Danone North America)で、植物性食品および飲料部門のプレジデントを務めるジョン・スターキー氏はそう語る。
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スターキー氏によると、TikTokへの進出はZ世代の買い物客に注目してもらうための試みであると同時に、TikTokで起こる文化的なイベントやトレンドを活用するためだという。TikTokの影響力や効果が確認できれば、シルクのメディアミックスや広告予算のより大きな部分を占めるようになると、同氏は述べている。シルクの広告予算に与えるTikTokの影響は不明。スターキー氏は詳細な情報の開示を差し控えた)。
「TikTokへの投稿を通じて、常に一貫してユーザーの目に触れることができる。また、従来のマーケティング施策では見せられなかった、ブランドの別の一面を見せることも可能だろう」。TikTokでは編集の少ないコンテンツが優先される傾向を指摘して、スターキー氏はそう語った。
調査会社のカンター(Kantar)によると、2021年にシルクが支出した媒体費は約1700万ドル(約22億円)で、2020年の1800万ドル(約24億円)を若干下回った。カンターはSNS広告費を追跡していないため、これらの数字にソーシャルメディアへの支出は含まれない。一方、今年になってシルクがソーシャルに投じた媒体費は、Facebookとインスタグラムを合わせてすでに85万ドル(約1億円)を超えている。パスマティクス(Pathmatics)の調べによると、昨年のこの数字は470万ドル(約6億円)で、2020年の260万ドル(約3億円)のほぼ2倍だった。
なお、TikTok以外の広告費の支出先は、リニア(従来型)テレビ、オンライン動画、ソーシャルメディアとなっているが、具体的な支出額は開示されていない。
広告主にとって主要な選択肢に
シルクは、この4月にシンガーのケリー・ローランド氏と連携した「#SwapItWithSilk」というハッシュタグチャレンジを皮切りに、TikTokでの活動を開始した。同キャンペーンでは、ローランド氏のほかに、320万人のフォロワーを持つグルメ系TikTokクリエイターのジョニー・モラレス氏や、170万人以上のフォロワーを持つオスカー・ペレス氏らを起用している。これまでに8560万回の再生回数を記録したこのキャンペーンは、スターキー氏によると、年内いっぱい継続する予定だという。
米DIGIDAYが以前の記事で報じたように、TikTokチャレンジは同プラットフォームでは比較的高額な広告商品のひとつで、価格は約13万ドル(約1752万円)となっている。たいていのブランドは、幾ばくかの予算を節約するために、インフルエンサーを起用するか、さもなくば、イチかバチかオーガニックコンテンツの拡散に望みを託すかになりがちだ。しかし、TikTokの人気が高まるに伴い、TikTok向けのマーケティング予算も増えており、広告主にとっては主要な選択肢となりつつある。
「TikTokがメタ(Meta)やGoogleと肩を並べるようになるのはまだ2年ほど先になるだろうが、その途上にあるとは思う」と、広告エージェンシーのロージーラブズ(Rosie Labs)で最高経営責任者(CEO)を務めるデイヴィッド・ソング氏は述べている。
シルクのハッシュタグチャレンジは、同社にとって「TikTokでの最初の一歩」だとスターキー氏は話す。TikTokがブランド認知の向上に有効である限り、将来的にもっと多くの施策を展開する計画だという。
「TikTokなどのソーシャルチャネルを活用して消費者とのつながりを作る活動は、長期的、継続的な取り組みになるだろう」と同氏は語った。
Kimeko McCoy(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)