ゲーム開発者が「一晩でAIに仕事のやりがいを奪われてしまった」と悲痛な叫びを漏らす

GIGAZINE
2023年03月27日 21時00分
メモ



海外掲示板・Redditのユーザーのひとりであるスターン・サファリさんが、「Midjourney(画像生成AI)を通じ、一晩で仕事を好きになったきっかけをすべて失いました」と報告しています。

I lost everything that made me love my job through Midjourney over night. : blender
https://old.reddit.com/r/blender/comments/121lhfq/i_lost_everything_that_made_me_love_my_job/


サファリさんは社員10人の小さなゲーム会社で、わずか2人のアートチームの3Dアーティストとして雇用されています。業務内容は「3Dモデルを作成し、モデルをレンダリングし、ゲームエンジン用の2Dスプライトを取得する」というもの。サファリさんの働くゲーム会社では、モバイルゲームのために2Dスプライトを作成しているそうです。

しかし、2023年3月中旬に画像生成AI「Midjourney」の最新バージョンとなる「Midjourney V5」がリリースされたのち、サファリさんの業務内容は一変することになります。サファリさんは「もはや私はアーティストでも3Dアーティストでもありません。私がしているのは見栄えの良い写真を作成するようAIにプロンプトを入力し、Photoshopで画像を微調整して見栄えの良い絵を作ることです。私が3Dアーティストを目指した理由はなくなりました。3D空間で自分の手を使って形を作り、モノを創造するのが大好きでした」と語っています。

画像生成AI「Midjourney V5」登場、超高画質&AIが苦手な「手」もキレイで実写との区別はほぼ不可能 – GIGAZINE


Midjourney V5の登場以降、サファリさんの仕事はAIが生成するキャラクターを2~3日かけて3Dモデルにし、リグを組み、アニメーションをつけるというものに変化したそうです。一連の作業に以前は数週間かかっていたそうですが、Midjourney V5の登場により大幅な時間短縮に成功している模様。ただし、サファリさんは「私はこの仕事の変化を大いに気にしています。しかし、上司はまったく気にしていません。上司にとっては時間やお金の節約でしかありません」と語り、自身の仕事のやりがいが失われてしまったと嘆いています。

さらに、サファリさんは「望まれもしないのにインターネット上のコンテンツをかき集めて『アート』なんて作りたくありません。でも、AIが生成するものは私が作る作品よりも優れているんです」と語り、自身の作品よりもAIが生成するイラストの方が優れていると認めています。

また、「私は怒っています。アートチームで働く同僚は全く問題に思っていないようで、一日中AIにプロンプトを打ち込みながらイラストを作成し、それを上司に提出してほめてもらっています。アートチームで働く私と同僚が作成するものは品質面で同じレベルにありませんでした。形や質感、レンダリングなどで常にほんの少しだけ私の方が優れていました。私はいつも少しでも優れたクオリティのものを生み出すことで、仕事を失うことはないだろうと確信していました。しかし、そのアドバンテージは完全に消え去りました。自分のクリエイティブなエネルギーを使って作品を作るという希望もなくなりました」とも語っています。

最後に、サファリさんは「ゲーム業界で仕事を得ることは難しいことです。AIが私の仕事を奪ってしまったからと言って、会社や素敵なチームを捨ててしまうことは、とてもディストピア的な思考であると感じます。別の会社ではもっといい仕事ができるのでしょうか。悲しみと怒りの狭間にいます」と、自身の複雑な心境を吐露しています。

実際、画像生成AIをゲーム開発に活用するという事例は複数存在します。

画像生成AIの「Stable Diffusion」をゲームに活用する方法 – GIGAZINE


Reddit上では「これは氷山の一角に過ぎません。我々はまだ機械学習の表面をかじったにすぎないにもかぎらずです。純粋に経済的貢献だけで人の価値を判断する社会では、このようなAI活用が惨事を引き起こすでしょう」や「採用担当者ですが、既に業務の一部が積極的にAIに置き換えられています。明日には私の行っている業務すべてがAIに取って代わられる未来が見えます」といったAIに仕事を奪われてしまうという悲観的なコメントも多くある一方で、「採用関係の仕事をしていますが、文章を書くのは得意ではありません。ChatGTPは完璧な文章を吐き出してくれるので、それに手を加える形で活用することで私の仕事は大幅に楽になります」といったAIツール肯定派の意見もありました。

他にも、「AIが3Dアーティストに取って代わるのはまだまだ先のことになると思います。あなたが働くゲームスタジオがAIを業務に取り入れる方法を見出したことは残念としか言えませんが、それでも単一または類似のプロジェクトのワークフローの一部がAIに置き換えられたにすぎません。3D制作はモデリング・UVマッピング・テクスチャリング・マテリアル・リギング・アニメーション・ライティング・アートディレクション・レンダリング・ゲーム開発・UI・UXなど多岐にわたります。希望を失わず、ポートフォリオを作成して自分のスキルを広げてみてください」といった同業者らしき人からのアドバイスもありました。

また、Hacker Newsでは「Wix、Squarespace、Shopifyといったホームページ作成ツールの台頭により、ウェブデザインおよび開発業界は劇的に変化しました。小規模なデザイン・開発チームの共同創設者件主任開発者として、私は自分の仕事が大好きで、美しく機能的なウェブサイトを作成することに情熱を傾けていました。しかし、前述のウェブサイト作成サービスを使う顧客が増えるにつれ、ウェブサイト作成業務に対する高い価格設定がますます難しくなっていきました。我々の仕事はより洗練され、SEO向けに最適化されていましたが、顧客の多くは1万ポンド(約160万円)以上の報酬を支払うことに否定的でした。最終的に、我々の取引がコモディティ化されていることに気づき、事業を売却して別の方向へ進むという難しい決断を下すこととなりました。その後、私はプロダクトマネージャーとしての職を得て、何年にもわたり業績を残し、最終的にスタートアップのCTOになることができました。それでもゼロからウェブサイトを構築する過去の業務を恋しく思うことがあります」という、ホームページ作成ツールの台頭で職を失うこととなったユーザーの経験談も寄せられています。


このユーザーは、「開発への情熱を維持するために、他の手段を検討することを推奨します。サイドプロジェクトを趣味として行ったり、業界の友人と協力してインディーズプロジェクトを開始したり、他人に自身の技術を教えたりすることを検討してみてください」「あなたの仕事は変わってしまったかもしれませんが、優れた3Dモデルを作成するというあなたの情熱は今でも新しい方法を採用することで活気づく可能性があります」と述べ、仕事に対する情熱を別の方法で発揮することを推奨しています。

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