マスク 着用方針ついて、小売従業員 4人に「本音」を訊いた : ワクチン接種が進む 米国の現場

DIGIDAY

CDC(米疾病対策センター)は5月、新型コロナウイルスに対するワクチンの接種を完了した者は、地域の法律や規則でマスクの着用が義務づけられている場合を除き、屋内でのマスク着用を不要とする新たな指針を発表した。この発表が小売の現場を混乱させ、そこで働く人々に困難をもたらしている。

新たな指針の公開後、小売店舗の従業員と来店客向けのマスク着用ガイドラインの策定は、小売企業各社の判断に委ねられた。現在、ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)、トレーダージョーズ(Trader Joe’s)、コストコ(Costco)をはじめ、ほとんどの小売事業者は、地域の法令によってマスクの着用が義務づけられている場合を除き、ワクチン接種を完了した顧客は店内でマスクを着用する必要はないとしている。ただし、顧客に対してワクチン証明書の提示は求めていない。

マスクの着用方針を実際に運用する店員たちに、この新しいルールは少なからず混乱をもたらしている。米国全土でワクチン接種が進む一方、マスクを着けない顧客が自分たちの職場に入り込むことについて、現場の従業員たちにはどうすることもできない。

米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)は、いま現在、小売の現場で働く4人の人々に匿名取材をおこない、新しい方針に対するそれぞれの思いを聞いた。

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「私がマスクの着用をやめるのは無責任だと思う」

5月末には、私たちの店舗でもマスクの着用義務が解除され、来店客のマスク確認を完全にやめた。「マスクを着用してください」という掲示も、「ワクチン接種を受けていないお客様には、マスクの着用を強く推奨します」に差し替えた。私たち従業員も、人事部の担当者にワクチン接種の記録カードを提示して、接種済みであることを証明すれば、マスクを着けずに仕事をしてもよいとされている。ところが、4人の同僚と話をした際、マスクを着けていないので、てっきり接種済みだと思っていたが、4人とも接種の予定はない、もしくは決められた回数の接種を終えていないことを認めた。ワクチン未接種ならきっとマスクを着けるだろうと思えるほんのひと握りの人たちでさえ、必ずしも正直ではないのだから、店に来る大勢の人たちが嘘をついていないと誰が言えるのか。

私はすでにワクチンの接種を完了しているが、マスクをやめる必要は感じないし、やめたいとも思わない。私は毎日大勢の人と接している。マスクを着けている人もいれば、着けていない人もいる。ただちにマスクをやめるのは、私としては無責任だと思う。私の知る限り、ワクチン接種を受けた人でも、新型コロナウイルスに感染したりさせたりする可能性はある。大局的に見れば、マスクを着けることなど小さな不便でしかない。それに、もう1年以上も着けているのだから、あと数カ月くらい、どうと言うことはない。私が暮らす地域では、ワクチン接種を済ませた人は人口の50%程度にすぎない。全般的に、物事を急ぎすぎだ。マスクの着用解除が時期尚早でなければ良い、自分の心配は杞憂だと思いたい。

– マサチューセッツ州の大型小売店従業員

「私の知る限り、ワクチンの接種履歴を確認している店はひとつもない」

私は納入業者なので、ひとつの店舗、または特定の販路に縛られない。ニューイングランドの南部一帯に散らばる数百の小売店舗を担当しているが、私の知る限り、ワクチンの接種履歴を確認している店はひとつもない。良くも悪くも、ワクチン接種の確認はさしたる問題ではないようで、どの店でも自己申告制を採用している。店舗の経営幹部や部門長らと話をしたが、マスクの着用が任意である以上、誰も強制や強要はしたくないという。これでは店舗のスタッフに余計な負担がかかるのだが、会社の正式な方針に顧客の反発を招くような規則は入れたくないのだろう。

私の見たところ、店舗経営者の管理がおよぶのは、店舗のスタッフと納入業者だけだ。スタッフと業者がマスクを外して仕事をする場合、事前にワクチン接種の証明書を提示しなければならない。店舗を巡回する際、私自身はいまもマスクを着用することにしている。感染が怖いからではなく、店舗のスタッフと買い物客に不安な思いをさせたくないからだ。

– 米国北東部の小売店納入業者

「我々従業員を気まずい立場に追いやるだけだ」

マスクの着用義務は先月解除されたが、我々の店舗では、いまも来店客にマスクの着用を「推奨」している。買い物客には入店時にマスクを渡しているが、着用を拒否する客には何も言わず、そのまま店に入れている。新しい方針が導入されてから、エントランスでの業務に配属されて、カートの清掃をしたり、来店客を出迎えたりするのだが、ワクチン証明書の提示は求めていない。マスクを着けなくて良いという方針には不安を感じる。たとえば、レジの仕事では、何百人という客と非常に近い距離で接することになる。以前、マスクを着けていない客がくしゃみをしながら代金を渡してきたことがあった。コロナでなくても気持ちが悪い。

最近、マスクを着けていない来店客が私のところにやって来て、こう言った。「なぜか私だけ浮いている。私は決められた回数のワクチン接種を終えているので安全だ。なぜほかの人たちが、皆マスクを着けているのか理解できない」。そんなことを聞かれても、人それぞれだとしか答えようがない。なかには、私がワクチン接種を終えているか聞いてくる客もいる。おかしなことだ。それは我々店員を気まずい立場に追いやるだけだ。なにしろ、我々は客に言われるままノーチェックで入店させているのだから。誰もが良心的で、マスクを着けていない客は、ワクチン接種を終えている人々だと思いたいが、それを確かめる術はない。

– 東海岸のオフプライスストアの店員

「マスクの着用を義務づけられていたときも、マスクを着けたがらない客への対応に苦慮していた」

来店客がマスクを着けなくなり、不安を感じる。一時期、同僚が誰とも分からない人から新型コロナウイルスに感染するケースが毎週のように報告されていたからだ。マスクの着用が義務づけられていたときでさえ、マスクを着けたがらない客への対応に苦慮した。マスクを拒否するような人たちが、ワクチンの接種も拒否するのではないかと思う。

我々の店舗は大きなショッピングモールのなかにある。来店客がトラブルに巻き込まれるとすれば、それは誰かが大きなもめごとを起こしたときくらいだ。そういうときには、すぐに警備員が呼ばれる。厳密に言えば、我々の店では、いまもすべての来店客にマスクの着用を義務づけているが、店舗管理者はこの方針を必ずしも徹底していない。我々の会社は欧州系の企業だ。店舗がある地域でマスクの着用が義務づけられていなくても、CEOはすべての顧客にマスクの着用を求めるという具体的な方針を出している。気休め程度にはなるが、来店客に絶えず説明しなければならないことはストレスでもある。そのため、客がマスクを着けていなくても、たいていは何も言わない。

– ニューヨーク地域にあるファストファッション店の従業員

[原文:‘The no mask policy is already giving me anxiety’: 4 retail workers on changing mask regulations

Gabriela Barkho(翻訳:英じゅんこ、編集:戸田美子)

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