ヘアケア業界 では「フケ」に大注目。スカルプケアが細分化し、フケ防止製品が増加中【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

フケというのは不快で嫌だと思われているが、ヘアケア業界は新しい魅力を見出してフケを重要視しているようだ。

2020年以降フケ対策製品が急増

2020年以来、ユニリーバ(Unilever)のBHS、ジ・インキー・リスト(The Inkey List)、フィリップキングスレー(Philip Kingsley)、ハリーズ(Harry’s)がフケ対策のコレクションや製品をローンチしている。直近では、プレステージヘアケアブランドのウェ(Ouai)が12月12日にフケ予防シャンプーをローンチ、これはD2C eコマースとセフォラ(Sephora)限定で販売されている。セフォラは、ファーストエイドビューティ(First Aid Beauty)、ブリジオ(Brigeo)、ジ・インキー・リストのフケ対策製品をすでに取り扱っている。スカルプ(頭皮)ケアがヘアケアの正当なサブカテゴリーになったことでこのカテゴリーは成熟点に達しており、スカルプにフォーカスした育毛と髪の若返り、そしてフケといった特定のニッチに細分化できるようになっている。グランドビューリサーチ(Grand View Research)によると、このようなブランドと製品のおかげでグローバルヘアケア市場は年率3%以上の成長を遂げ、2025年までに2110億ドル(約28.8兆円)に達すると予想されている。また、このような新規ブランドや革新的な製品はヘッド&ショルダー(Head & Shoulders)やセルサン(Selsun)のような市場トップのブランドに肉迫する可能性がある。

スカルプヘルス向け製品をローンチしたジュピター

「我々は『ヘアのスキニフィケーション』という表現をもう使っていない」と述べているのは、フケ対策ブランド、ジュピター(Jupiter)の共同創業者であり、カスタマーエクスペリエンス責任者のアレクサ・アドラー氏だ。「ブランドを立ち上げたときには使っていたが。だが、今ではスカルプケアは当たり前になり、消費者からは日常的なパーソナルケアの一環だと考えられている」。

2020年6月にローンチしたジュピターは、シャンプー、コンディショナー、ヘアセラム、スカルプスクラブブラシなど6製品を販売している。同社は12月にスカルプや髪に影響する可能性がある栄養不足対策としてサプリメントを発売した。この製品はD2C eコマースとバーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)で販売されている。ジュピターのシャンプーの有効成分にはフケを抑える亜鉛ピリチオンが含まれているのだが、同社チームは自社を(フケだけに限らず全体的な)スカルプヘルスのブランドだと考えている。ジュピターのCEO兼共同創業者、ロビー・ソルター氏は、当社の尽力は髪とスカルプの問題の根本原因に対処する「スカルプヘルス」に注がれており、「スカルプケア」というのはOTC成分よりも化粧品成分にフォーカスしたものだと語っている。

このサプリは、得意客には一般販売の48時間前にマーケティングメールが送信されて事前購入できるようになっていた。ソルター氏によると、ジュピターが新規顧客を獲得するためのもっとも効果的な戦略はオーガニックな口コミと、体験談やインフルエンサーなどの製品レビューだという。以前のGlossyレポートによるとジュピターは最初の12カ月で約200万ドル(約2.7億円)を稼いだということであるが、ソルター氏から最新の数値は共有されなかった。

ソルター氏は次のように述べている。「市場に出回っている既存の製品を改善する機会を見出した。既存のブランドは現代の消費者のニーズに対応していなかった」。

女性向けフケ予防製品の需要

女性はこれまでフケカテゴリーではあまり対象とされず、また女性向けの製品も十分ではなかった。(グローバルマーケットリサーチ企業の)ミンテル(Mintel)によるとフケ用シャンプーを使っている米国男性は33%、米国女性は18%。また、18~34歳の米国女性の29%がフケ用シャンプーを使用しているのに対し、18~34歳の米国男性では35%である。

「ヘアケアブランドの多くはスカルプケアをマーケティング活動の中心に据えて、フェイシャルケアルーティの延長として扱っている」と述べているのは、ミンテルのグローバルビューティー・パーソナルケア担当ディレクター、ローレン・グッドシット氏だ。「女性はヘアとスカルプの変化するニーズに対応してカスタマイズできるヘアケアの形式に関心を寄せている。一夫、男性はフケに特化した製品に惹きつけられているが、総合的なスカルプケア製品は髪全体の健康に関心がある女性に魅力的である」。

ウェのフケ予防シャンプーのキャンペーン

ウェの新しいフケ防止シャンプーの場合は、(フケに関する)汚名を取り除き、その共通性を浮き彫りして魅力的にする機会だった。TikTok、インスタグラム、ダイレクトメール、コネクトTV、ニューヨークとテキサスのOOHといった大規模なキャンペーンがこのシャンプーのローンチに合わせて実施された。キャンペーンは最低でも90日間は行われる予定で、Sephora.comや店舗、TheOuai.comへと人々を誘導している。フケというテーマにユーモアと生意気さを取り入れた広告は次のように呼びかけている。「君はフレーキーな人か?(訳注:flakyには「風変わりで頼りにならない」と「フケが多い」という意味がある)5人に1人がフケを経験している。フレーク(風変わりで頼りにならない人、フケが多い人)は誰にも好かれない」。

ウェの教育ディレクター、ダイアナ・プラタシウィッツ・バルナオ氏は、この製品の成分プロファイルとケープタウン(Cape Town)の香りを宣伝することも戦略であると述べている。同社はフレグランス製品で知られており、2021年8月にはキャンドルもローンチしている。

「抜け毛といえば男性を連想するが、フケも同じだったために製品は男性向けだった。だが、今では抜け毛とフケの影響は男女問わないことがわかっている」と、ウェのブランドマーケティング担当バイスプレジデント、ハナ・ビールズ氏は述べている。

ウェの大部分の顧客は女性であるため、これは男性の消費者を顧客に変える大きなチャンスである。ローンチキャンペーンではブランド初の男性モデルが起用された。プロクター&ギャンブル(Procter & Gamble)は2021年12月にウェを買収した。この動きから、P&Gが2021年1月にプレステージスキンケアブランドのトゥラ(Tula)を買収した後、P&Gがプレステージヘアケア部門を構築していたことがわかる。ウェは、2016年にヘアスタイリストのジェン・アトキンス氏がSOSビューティ(SOS Beauty)と共に創業した。(インキュベーターの)SOSはアーユルヴェーダのヘアケアブランド、フェイブル&メイン(Fable & Mane)とジュピターの背後にあるチームだ。P&Gは有名なヘッド&ショルダーを所有している。ヘッド&ショルダーは業界にもっと革新的なフケブランドが増えていることに気づいているようであり、2023年にシア配合のシャンプーとコンディショナーなど新製品7点を発売する予定がある。 (マーケットリサーチ企業の)ユーロモニター(Euromonitor)によると、米国での販売量による薬用シャンプーのトップブランド5社は、市場シェア約23%のセルサン、19%のニュートロジーナ(Neutrogena)、そしてフケ対処ブランドのニゾラール(Nizoral)、デノレックス(Denorex)、スカルピシン(Scalpicin)が続き、この3社で合わせて19%の市場シェアを占めている。

フケ予防&ヘア・スカルプタイプに対応する製品の展開

スカルプケアのサブカテゴリーではますますニッチなヘアケア製品の開発は続くようだ。P&Gの傘下でウェはより多くの研究開発リソースにアクセスができるため、将来、さらに臨床的に証明された製品が推進されるかもしれない。一方、ジュピターは、2023年にはフケ防止という基本への注力を維持しながら、ドライやオイリーなどの髪とスカルプのタイプに対応する製品(数は未公開)をローンチする予定がある。

「製品効能の主張と製品テストによって特定の髪向けの当社製品がもっと登場するだろう。今年の初めに髪にボリュームを出し太くするためのスカルプセラムを発売したが、これはウェにとって大成功だった」とビールズ氏。「これは、サプリと同様に、臨床的にテストされた当社の最初の製品だった」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: Dandruff is suddenly attractive

EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)

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