チャイルドシートのイーブンフロー、ゼロパーティデータ取得に注力する理由:「CX向上とD2C成長のために消費者を支援したい」

DIGIDAY

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レガシーな実店舗ブランドは、D2Cビジネスの成長を模索する一方で、より多くの顧客データも捕捉しようと試みている。

チャイルドシートとベビーカーのブランドであるイーブンフロー(Evenflo)は2018年以来、バイバイベビー(BuyBuy Baby)やウォルマート(Walmart)などのパートナーとの提携による大規模な実店舗の小売ネットワークから、自社のD2Cサイトによるオンラインに売上を移行させるため活動してきた。2022年現在、パンデミックでオンラインショッピングが急速に成長したことから、同ブランドの売上の50%はオンラインになっている。しかし、オンラインでの売上を増やし続けるため、同ブランドはゼロパーティデータの収集に投資している。この用語は多くの場合、顧客が買い物をする前に、顧客自身の意思で提供したデータを指す。そのため同社は、出産を控えた親たちを対象としたオンラインクイズを作成した。

このゼロパーティデータへの注力は、iOS14におけるプライバシー変更への「対応」であると同時に、GoogleがCookieを使用しない方向に移行していくことを予測しての「事前対応」でもあると、イーブンフローの親会社であるグッドベビーインターナショナル(Goodbaby International)の消費者需要創出およびデジタルシェルフ担当ディレクターを務めるジョシュ・リード氏は説明する。iOS14アップデートの一部として、アプリ追跡透過性(App Tracking Transparency)プロンプトが運用開始され、サードパーティデータの追跡に不可欠な機能であるアプリ間での追跡を行うためには、ユーザーの明示的な選択が必要になった。一方でGoogleは、2023年までにサードパーティのCookieデータを自社のGoogle Chromeブラウザから除去することを約束した

Cookie規制前から始めていた取り組み

イーブンフローは1920年に創設され、2014年に香港のベビー用品複合企業であるグッドベビー(Goodbaby)に1億4300万ドル(約182億円)で買収された。5月12日に行われたグッドベビーの第1四半期の決算発表で、イーブンフローは第1四半期として過去最高、前年比31%増の7800万ドル(約99億1000万円)の収益を記録したと報告した

イーブンフローはゼロパーティデータ企業のジェビット(Jebbit)と協力して、データ収集用のクイズを作成してきた。リード氏は、広告に対してプライバシー関連の変更が行われるよりも前の2019年から、イーブンフローはジェビットと提携し、クイズと商品のおすすめ機能を自社ブランドのサイトに組み入れる作業を始めていたと説明している。ジェビットとグッドベビーが協力して初めて作成したクイズは、おすすめのベビーカーとチャイルドシートについてのクイズだった。

「CX(カスタマーエクスペリエンス)の観点と、当社のD2C機能の成長のため、我々は人々を支援できるようになりたいと考えた。オンラインでたくさんのベビーカーとチャイルドシートのサムネイル画像を見ていると、どの画像も同じに見えてくるということを、我々が理解していたからだ」と、リード氏は語る。

現在ではサードパーティのデータの堅牢性が低下し、コストが上昇するにつれ、同ブランドが顧客を追跡するにあたり、クイズの存在がさらに重要性を増してきた。

「ゼロパーティデータの採用を促進する非常に大きな要因は、我々フォレスター(Forrester)が『データ非推奨』と呼ぶもので、サードパーティ製CookieやデバイスIDの消失の積み重ねだ」と、フォレスターのアナリストであるステファニー・リュー氏はメールで述べた。これに加えて、オプトイントラッキングやウォールドガーデンのようなプライバシー保護により「マーケターが顧客のデータにアクセスして使用できる方法が、さらに制限されるようになった」とも同氏は付け加えている。

ジェビットと協力で開発された商品のリコメンドツールは現在更新中で、イーブンフローが新たに発売した商品と、いくつかの新しい質問が追加される。イーブンフローは顧客がクイズに回答するよう勧めるために、ホームページで目立つように取り上げている。しかし、クイズの使用を示す指標は2020年の春に初めて公開されてからあまり変化していないと、リード氏は述べている。

クイズを始めた利用者の85%は最後まで回答し、完了に必要な時間は平均でわずか3分強だ。このクイズによりトランザクション率も改善されると、同氏は付け加えている。クイズに回答した訪問者は、総合的なコンバージョン率が38%高く、クイズに回答せず商品ページを参照した訪問者と比べてコンバージョン率が13%増加した。

ゼロパーティデータのクイズとともに、レガシーなブランドである同社は、あまり使用されないデータを的確に統合して、顧客ベースの完全な全体像を作り上げる方法を模索していると、リード氏は説明した。たとえばイーブンフローは、サイトの商品レビューとチャイルドシート設置の予約から、自社の顧客とその行動についての情報を得られる。これにより同ブランドは、サードパーティデータを必要とすることなく、顧客のターゲットを設定し直し、より具体的なメールや広告を送ることができると、同氏は語る。

「我々は、Cookieが使用されなくなるよりもずっと早くから、あらゆる情報を適切なプラットフォームで組み合せることにより、そのデータをアクティブ化することができていた」とリード氏は述べている。

求められるゼロパーティデータ取得の術

1010データ(1010data)のマーケティング担当バイスプレジデントを務めるフランク・リバ氏は、サードパーティデータとゼロパーティデータの比較は「質か量かの問題」だと、メールで語った。

同氏は次のように述べている。「ゼロパーティデータがサードパーティーデータと同等の莫大な量に達することは考えにくい。しかし、ここでゼロパーティデータの品質が重要となる。これらのデータは消費者から直接得られたものなので、正確性と豊富さが最適化されているからだ」。

リュー氏は、ゼロパーティデータは消費者が何を提供するかを自発的に選んだもので、受動的な追跡の結果ではないため、より透明性があり、ブランドにとってほかの場所では得られない情報だと付け加えている。

それでも、消費者が情報を提供するかどうかを選択できるということは、買い物客が自ら参加を希望するようなコンテンツを作成するために、より多くの負担をブランドが負うことを意味する。

ブランドおよびコミュニケーション戦略コンサルタントのカーリー・サザーランド氏は次のように述べている。「各ブランドは、消費者がアンケートやショッパブルクイズに参加するよう働きかけるため、工夫を凝らす必要がある。各ブランドは、ゼロパーティデータ戦術を開始する前に、当社の見込み顧客はこれに参加して楽しめるだろうか? 何かを学べるだろうか? 数分間を費やすことで、当社から何かを得られるだろうか? と自問自答すべきだ」。

リュー氏は、これにはロイヤルティポイント、限定商品、パーソナライズされたコンテンツなどあらゆる形態が考えられるとしている。イーブンフローのように、商品調査の負担が非常に大きなものとなる可能性があるブランドでは、クイズにより買い物客に簡素で容易な体験を与えることができる。

「消費者のためになるものが必要で、その価値の交換は非常に明瞭な必要がある。商品のリコメンドは、消費者がイーブンフローの商品を調べて、どの商品が購入の候補になるかを探し出す負担を軽減できる」。

[原文:How car seat and stroller brand Evenflo is capturing zero-party data]

Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:猿渡さとみ)
Image via Evenflo X Jebbit

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