ゲーム業界 の「スキャンダル」、社会の耳目を集める :広告主たちが変化を後押しするか?

DIGIDAY

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ゲーミング分野は広告業界で大きな注目を集めているかもしれない。だが、最近の出来事が示すように、ゲームの世界には見誤ることが許されない深刻な側面が存在している。

ここ数週間、アクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)の持つ非常に悪質な労働文化が暴露され、ゲーム業界やeスポーツ業界は「危機対応」に追われる状況に陥っている。女性やマイノリティの従業員たちから告発が相次ぎ、ハラスメントや不平等に関する業界の問題が長年にわたって広範囲に存在してきたことを明らかにしている。

ブリザードのプレジデントであるJ・アレン・ブラック氏は、同社におけるセクシズムとハラスメントの内部告発に対応しなかったとカリフォルニア州における訴訟で糾弾され、7月28日に辞任した。しかしこの分野の専門家のなかには、真の変革をもたらすためには彼ひとりが辞めるだけでなく、多くの大手ゲームデベロッパーの上層部にはびこる「汚れ」の徹底的な洗い出しが必要だと考えている人もいる。

従業員のストライキやプレイヤーたちによるボイコットがこの問題に注目を集めているが、この問題に対してもっとも大きな影響力を持っているのは、トラブルを敬遠するスポンサー企業たちにある。アクティビジョン・ブリザードのもっとも大きなブランドパートナーのなかには、すでに同社に圧力をかけ始めているところもある。不安に感じるスポンサーたちが動き始めれば、大きな波となる可能性もある。

プレイヤーたちも従業員を支持

アクティビジョン・ブリザードが物議を醸す前、同社の人気タイトルである「オーバーウォッチ(Overwatch)」のリーグ公式スポンサーリストには、Tモバイル(T-Mobile)、ケロッグ(Kellogg)、ステート・ファーム(State Farm)、コカ・コーラ(Coca-Cola)などの有名ブランドが存在していた。現在残っているのはコカ・コーラだけで、それ以外の4社はすべて、米DIGIDAYの取材に対しアクティビジョン・ブリザードの労働文化について不安を表明している。「我々は、これらの告発内容を非常に重く見ており、公平性・多様性及び包括性への(ケロッグ社の)コミットメントと矛盾するものであると考える」とケロッグの広報担当者クリス・バーナー氏は述べた。「アクティビジョン・ブリザードは、直面している困難な問題に対処する予定となっているが、今年は(同社と)新しいプログラムを進める予定はない。しかし、彼らの計画に対する進捗状況を引き続き確認する」。

アクティビジョン・ブリザードが持っていたブランドとのパートナーシップが誰にとっても明らかな形で失われたことで、新たなスポンサー候補たちも、議論を呼びそうなものへ投資をする前に再考を迫られる可能性がある。「ブランドたちは『あなたと一緒に仕事はできないだろう』とキッパリと言うだろう」と、クリエイティブエージェンシーのウィープレイ(WePlay)を立ち上げたマーゴット・ロード氏は言う。

一連のアクティビジョン・ブリザードにおける「問題」は、カリフォルニア州公正雇用住宅局(the California Department of Fair Employment and Housing)が、同社のセクハラと男女間での賃金格差問題に関する2年間の調査を受けて、7月20日に同社を訴えたことから始まった。この訴訟に反応する形で、同社で勤務する従業員たちも7月28日に勤務地を一斉に歩き去る「ウォークアウト」の形での広範なストライキを行い彼らの憤りを表明。ユービーアイソフト(Ubisoft)の約500名の従業員は、同社の経営陣にこれまでの「不公正な行為」を認めるよう求める公開書簡に署名した。

アクティビジョン・ブリザードのゲームのプレイヤーたちもこの論争に反応しており、ウォークアウトストライキの日には多くの人々が同社のゲームをプレイすることを拒否した。ダイバーシティとインクルージョンのコンサルタントであるアマンダ・スティーブンズ氏は、次のように述べている。「(スト当日に)複数の大型タイトルを有する同社のゲームに一切ログインしなかった人たちの多さを考えると、彼らがもっと真剣にこの問題を捉えても、私は驚かないだろう。ゲームプラットフォームのスチーム(Steam)上でも(アクティビジョン・ブリザードのタイトルへの)同時接続プレイヤー数が非常に低く、人気シミュレーションゲーム『ワールド・オブ・ウォークラフト(World of Warcraft)』にログインしない人がたくさんいた」。

スポンサーの撤退が意味するもの

訴訟のニュースが流れてから2週間が経ってから、Tモバイルがアクティビジョン・ブリザードとのパートナーシップから手を引き、ほかのスポンサーもドミノ倒しのように撤退した。ブランドたちの反応が早かった背景には、ゲーム業界が「#MeToo」スタイルで責任を追及されるのが初めてではないという事実がある。NPO団体「クイア・ウーマン・オブ・eスポーツ(Queer Women of Esports:eスポーツにおけるクイア女性たち)」のCOOであるギリアン・リンスコット氏は「私は常に過去数年間に経験した、抗議の声が上がった瞬間を考えている」とし、こう続ける。「密室となっていた(ゲーム会社の)ライアットゲームズ(Riot Games)は、女性にとってはゲーム業界における最悪の労働環境のひとつだったが、その事実をかつて我々は知らなかった。しかし、2020年6月には、(人気ゲームタイトル)『ドータ・ツー(Dota2)』における#MeToo運動が起きた。その後、格闘ゲームのコミュニティでも同じ告発があった。(これまで隠されていたゲーム業界の問題が明らかになる)このパターンはずっと続いている」。

すべてのスポンサーの声明がケロッグのように明確だったわけではない。コカ・コーラの担当者は「アクティビジョン・ブリザードをめぐる疑惑を認識しており、状況を綿密に監視している」とだけ述べ、同社のロゴはオーバーウォッチリーグの公式パートナーリストに残っている。アクティビジョン・ブリザードのスタッフとプレイヤーからのプレッシャーが弱まれば、これらのスポンサーの一部は静かに同社との関係を再開するかもしれない。

たとえば2020年には、カプコン(Capcom)やバンダイナムコ(Bandai Namco)といったブランドが、性的虐待スキャンダルを受けて人気格闘ゲームイベント「エボリューション・チャンピオンシップ・シリーズ(Evolution Championship Series)」へのサポートを撤回したが、翌年にはコメントなしで戻ってきた。「(サポートを撤回することは)全部、PRのための戦略にすぎない」とリンスコット氏は言う。「Tモバイルがスポンサーから撤退しながらも、実際には何の声明を出さないことの問題はそこにある。(アクティビジョン・ブリザードが抱える問題を容認する)ファン層を怒らせることを恐れている」。それでも、この多くのブランドパートナーたちの同時撤退は、メジャーeスポーツリーグでは前例のないことだ。

アレン・ブラック氏は辞任に追い込まれたものの、アクティビジョン・ブリザードのリーダーシップは圧倒的に白人男性が占めている。リンスコット氏とスティーブンズ氏によると、同社、そしてさらに多くの企業において真のパラダイムシフトを実現するためには、もっと多くの役員の辞任が必要であり、すべてのレベルでより多様な人材に置き換えられる必要があるという。「CEOが辞任したり更迭されたりしても、まったく同じ行動を繰り返している下部のマネージャーたちが変わることはない」とリンスコット氏は指摘する。「(CEOが責任をとって)辞任したことは素晴らしいことだが、おそらく彼の代わりに女性のCEOが就くことはないだろう。ノンバイナリーを自認するCEOが就任することはないだろうし、トランスジェンダーの女性がその役職に就くこともないだろう」。

「企業文化」は変わらないのか

アクティビジョン・ブリザードの現従業員と元従業員のあいだでは、経営陣を全面的に刷新しても、同社のDNAに組み込まれていると考えられている有害な企業文化を覆すことができないのでは、という懐疑的な見方がある。元ブリザード・プログラマーのジェフ・ストレイン氏は、同社が「労働組合化を必要としている」と述べた公開書簡を書いたが、ブリザードが労働組合潰しで悪名高い法律事務所ウィルマーヘイル(WilmerHale)を雇ったことは、経営陣がそのような取り組みに強く反対することを示唆している。アクティビジョン・ブリザードの顧客サービス部門でスペシャリストとして勤務していた元従業員のひとりは、匿名を条件に取材に応じた。「労働組合化はいいことだが、それは出発点に過ぎない」と述べた。「(労働組合化は)目的ではなく、始まりだ。組合を結成し、CEOや権力を持つ人々、取締役会における役員たちを排除し、開発者の手に力を委ねることができれば、進むべき方向としては素晴らしいものだろう」。

ゲーム業界は、エンターテインメント業界全体の重要な一面に成長した。ゲームメーカーとそのスポンサーは、過去に#MeTooスタイルの告発や問題に対処しなかったように、スキャンダルを隠すことはできなくなった。ニューヘブン大学(University of New Haven)のeスポーツ担当エグゼクティブ・ディレクターであるジェイソン・チャン氏は「多くのお金が関わっていることを、誰もが気づき始める段階にやっと到達した」と述べた。

今日では、ゲーム業界で起きる論争の衝突は激しく、素早い展開になっている。業界の専門家や観測筋によると、アクティビジョン・ブリザードのような企業のブランドパートナーたちは、対処を遅らせるのではなく、女性や関心のあるブランドたちにとって業界をより安全な場所にするために、これらの問題に対処し(スポンサーたちが持っている)影響力を活用する準備を整えておく必要があるとチャン氏は述べる。

「歴史の長い大手ビデオゲーム会社たちはまだ変化を見せてはいないが、変化の途上にあると思う」とウィープレイのロード氏は言う。「年齢が高い人々のなかには、いまだに『特定の言動』をとる人がたくさんいる。しかし、それは今日では受け入れがたいことであり、人々が抗議の声を上げているのはいいことだ」。

[原文:As the gaming industry’s scandals take center stage, a trickle of uneasy sponsors threatens to become a deluge

ALEXANDER LEE(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)

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