「Day2は死を意味する」:2022年、Amazonのeコマース帝国に見えはじめた亀裂

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2022年はAmazonにとって極めて困難な年となった。テック大手である同社は、激しいインフレと、eコマース売上の低迷という新しい現実を甘受する羽目になった。

同社の主力であるeコマースビジネスの低迷は、同社が2022年に対処を迫られた最大の問題だった。同社のオンラインストアの収益は、2021年ホリデーシーズンの四半期(10〜12月)の終わりの600億ドル(約7兆7400億円)から、2022年の第1四半期と第2四半期の終わりにはそれぞれ511億ドル(約6兆5900億円)と508億ドル(約6兆5500億円)に低下した。プライムデー(Prime Day)によって同社の第3四半期のeコマース収益は上半期よりも増加したものの、この大きな成長も第4四半期には減速することが予測されている。それとは別に、同社はパンデミックがもっとも激しかった時期に、商品の保管、仕分け、移動のために、450以上の施設を増設したことから、倉庫の容積が過剰になっていた。

また2022年はAmazonにとって、2021年7月にCEOを正式に辞任した創業者ジェフ・ベゾス氏が年間を通して不在だった最初の年でもあった。つまり、eコマース大手の同社にとって、新しいパラダイムを作り上げることになった。専門家は、Amazonは2022年、事実上、超成長モードからコスト最適化モードへとギアを切り替えたと、米モダンリテールに語った。本質的に、過去の華々しい成長の日々の期待をリセットし、多くの経済的な逆風にさらされた、成熟した市場に向き合うことを迫られた。さらに同社は最近、膨大なコスト削減の見直しを開始し、ビジネスがさらなる減速に備えていることを示唆した。

Amazonプライムの値上げ

「2022年は、eコマースにとって以前よりも少し困難な年だった。Amazonは間違いなく、米国におけるeコマースの最大の部分を占めるので、同社にとっても困難な年になった」と、ピュブリシス(Publicis)の最高コマース戦略責任者を務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は米モダンリテールに語った。

ゴールドバーグ氏は、実店舗での売上増加と、インフレの結果として購買行動が自由裁量の購入から必需品に大きく移行したことが組み合わさり、同社の中核的な小売マーケットプレイス部門を痛めつけたと語る。

Amazonの中核であるeコマースビジネスは20年以上にわたって急速に拡大し、さらに多くの出品者と顧客を同社の商品とサービスに引き寄せてきた。同社のフラッグシップであるプライム(Prime)のメンバーシッププログラムは2005年に開始され、同社のマーケットプレイスの成功に貢献した。現在、米国のプライムのメンバー数は1億5300万人と推定されている。

プライムは同社の成功の中核ではあるが、アナリストはメンバーシッププログラムの最近の価格上昇から、一部の人はこのサービスに手が届かなくなったことを示唆している。プライムのメンバーシップのコストは、2022年2月に年額119ドル(約1万5400円)から139ドル(約1万7900円)に引き上げられた。米国でプライムの成長が停滞しはじめた時期でもあり、このことが加入者数の乱高下を招いた可能性がある。

過剰な倉庫スペース

リテールテクノロジー(Retail Technology)のディレクターでパブリッシャーのマイヤ・ナイツ氏は、Amazonの中核ビジネスの成長が、パンデミック以降に大きく変化したことに同意している。「Amazonの小売ビジネスには途方もない重圧が存在していた。プライムデーのようなイベントでさえ、同社の売上を増やす効果が少なかった」と、ナイツ氏は述べている。同氏は、「同社は、パンデミック時に見たようなレベルでオンライン需要が持続すると考えたのは誤算だった。そのもっとも顕著な例として、たとえば同社は過剰な倉庫容積を抱え、身動きが取れなくなったことだ」と付け加えている。

同社は2022年初め、2年間にわたって膨大な投資を行ってきた新しい倉庫の容積への投資を中断すると、決算発表で述べた。「当社のFBAビジネスの展開には、依然として顧客からの強い需要があるが、我々は現在のところ、フルフィルメントおよび輸送ネットワークに過剰な容量を抱えている」と、AmazonのCEOを務めるブライアン・オルサブスキー氏は、同社の第1四半期の決算結果を受けて語った。同氏は数カ月後、第2四半期の決算発表において、「当社は、予期される顧客からの需要に合わせて、2022年と2023年の運用拡大計画を遅らせた」と付け加えた。

このように、倉庫の容積について拡大を中止する一方、この過剰な容積を収益化するほかの方法も探してきた。同社は2022年9月、出品者が同社のフルフィルメントセンターと倉庫の容積を使用して商品を長期間保管し、自動的に配送を行えるようにする、新しい有料サービスを開始した。また5月には、小売業者が自社ウェブサイトで販売した商品についてプライムフルフィルメントを提供できる、バイウィズプライム(Buy With Prime)という新機能を発表した

しかし、同社にとって2022年最大の問題となったのは、インフレによって人々が特定のカテゴリーへの支出を控えたことだった。「消費者は2021年もオンラインで消費を続けたが、その消費の多くがインフレの結果として食料品などの品物に流れ、アパレルや家電などのカテゴリーの消費が減少した」と、ゴールドバーグ氏は述べている。同氏は、Amazonのライバルであるウォルマート(Walmart)が、食料品や必需品をデジタルで同社よりも効率的に消費者に販売したことで、このトレンドの恩恵を受けたことも指摘している。

AmazonはDay2企業になったのか

どちらの専門家も、ベゾス氏がいなくなった今、同社が2022年に直面したさまざまな困難もあり、AmazonはDay1(デイ・ワン)企業としてのステータスを失いはじめたことに同意している。Day1の精神とは、同社が創業から28年を経過したにもかかわらず、まったく新しい新設企業の最初の日のように毎日に取り組むということだ。ベゾス氏は、Day2(デイ・ツー)は企業にとって死を意味するとよく語っていた。

「CEOや創業者が辞任した後の2022年、自社がいまだDay1企業だという設定を保つのは困難だ」と、ゴールドバーグ氏は語る。「このため、多くの人々はこの点について、2022年は、AmazonがDay1企業からDay2企業へと効率的にシフトした年だったと言うだろう。外部のオブザーバーとして多くのものを見た結果、同社にとってDay1を維持することは困難であるように思われ、Day2のビジネスのように感じられはじめるだろう」。

ナイツ氏も、同じ所見を述べている。「Amazonが直面した試練は、ジェフ・ベゾス氏がいない同社は、Day2企業なのかということだ。また私は、Amazonが、自社を食い尽くすいくつかの要素を目にしている」。

特に、同社が広告ビジネスからより多くの収益をしぼり出そうと試みている転向について、「顧客体験に干渉しはじめており、危険な領域だ」としている。

同社は2022年10月、より多くの広告主が動画の広告をテストするように設計された新しい広告ツールを、同社のunBoxed(アンボックスド)カンファレンスで発表した。これには、新しいスポンサーディスプレイ動画クリエイティブ(Sponsored Display Video Creative)が含まれており、出品者は動画広告用のクリエイティブを簡単に作り出すことができる。最新の四半期について、同社は広告ビジネスからの収益が、前年同期比25%増の95億4000万ドル(約1兆2300億円)に達したと報告した。

2023年はすべての小売業者にとって厳しい年に

最終的に、シアトルを拠点とする小売業者である同社にとって、2023年は厳しいスタートになる可能性があると、ゴールドバーグ氏は述べる。

「少なくとも2023年の前半について、すべての小売業者、特にオンライン小売業者は収益性と運用効率について厳しい課題に直面するのは明白だろう。これは、Amazonの小売ビジネスにとってごく一般的なテーマになるだろうと、私は予測する」と、ゴールドバーグ氏は述べている。

[原文:‘Day 2’: How cracks began to emerge in Amazon’s e-commerce empire in 2022]

VIDHI CHOUDHARY(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Illustration by Ivy Liu

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