「人々はドレスアップする必要性を感じはじめている」:トレンドの変化に苦戦するアパレル小売たち

DIGIDAY

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アパレル企業にとって第1四半期は好調と不調が入り混じった期間で、これらの小売業者たちは逆風に立ち向かい、スタイルの好みの変化に対応してきた。

ポッシュマーク(Poshmark)、リボルブ(Revolve)、ティージェーエックス・カンパニーズ(TJX Companies)などの企業は、期待を超える決算発表として13%から43%の収益の増加を報告した。しかし大手デパートのコールズ(Kohl’s)は収益が前年の38億ドル(約4830億円)から37億ドル(約4700億円)に減少し、ターゲット(Target)やウォルマート(Walmart)などの大手小売業者は需要を読み違えた結果、商品の割引を余儀なくされた。

アパレル小売業者は、サプライチェーンの継続的な圧力やインフレなど多くの逆風に直面しており、決算はさらに厳しいものとなることが確実視されている。さらに、消費者の嗜好は家庭で着用するベーシックなものから、仕事着やパーティウェアへと急速に変化している。アパレルの売上を牽引するトレンドと、アパレル小売業者が直面している逆風を明らかにするため、米モダンリテールは最近行われたアパレル小売業者の第1四半期の決算発表から得られたコメントを要約した。

パーティ服の流行

第1四半期には、買い物客がオフィスやイベントへ復帰したことによって、外出用のアパレルに支出した。

コールズ、リボルブ、スレッドアップ(ThreadUp)はすべてドレスが大幅に伸びたことを報告しており、リボルブではこのカテゴリーが前年比で150%も増加している。リボルブのCFOを務めるジェシー・ティンマーマン氏は、5月前半に行われた同社の第1四半期の決算発表で「当社の顧客はふたたび外出するようになり、非常にアクティブなソーシャルライフスタイルを送るようになった」と述べている。

一方でポッシュマークでは、プロムが75%増加、結婚式用アパレルは39%増加した。ポッシュマークのCFOを務めるロドリーゴ・ブルマナ氏は、5月12日に行われた同社の決算発表で「イベント志向のショッピングは、非常に有意義な成長を見せている」と述べている。

イベントは、アクセサリーへの関心も促進している。スレッドアップも、ハイヒールが50%以上の伸びを示したと報告した。エッツィー(Etsy)のエグゼクティブは、宝石やアクセサリーがもっとも多く売れているカテゴリーだと語っている。

「特別なイベント用は、アパレルにおいて実際に好調が続いている数少ない分野のひとつだ」と、小売コンサルティング企業のエー・ライン・パートナーズ(A Line Partners)の創設者であるガブリエラ・サンタニエロ氏は米モダンリテールに語った。

パンデミック用の服装は時代遅れに

アスレチック、アスレジャー、ラウンジ用アパレルはすべてパンデミックのあいだに大量の売れ行きを見せたが、一部の小売業者では成長が鈍化している。

コールズでは、アクティブウェアは同社の業績と同程度のものだったが、一方でドレスやデニムは大幅に超える業績を挙げた。ターゲットでは、ベーシックなアパレルは売上が減少し、よりトレンディなアパレルが増加した。

「ベーシックなアパレルはこの四半期に売れ行きが落ち着いていたが、トレンディなアパレルは有意に売れ行きが増加した。これは、多くの人々がオフィスに戻り、また友人との夕食に出かけるようになったためだ」と、ターゲットのエグゼクティブバイスプレジデントで最高成長責任者も務めるクリスティーナ・へミントン氏は、5月18日に行われた同社の決算発表で述べた。

アスレチックに特化した一部の小売業者も、この四半期に苦闘していた。たとえばアンダーアーマー(Under Armour)は予測が外れて、同社の粗利益率は減少し、売上が前年比でほぼ変わらなかった。フットロッカー(Foot Locker)の収益は推定を下回り、同一店舗売上が減少した。

サンタニエロ氏は次のように述べている。「2年半もだらけて過ごしたあとで、人々はドレスアップする必要性を感じているのだろう。アスレタ(Athleta)は苦闘しており、エーリー(Aerie)もそうだ。業界全体で売れ行きが弱まり、需要が低下している」。

実際に、この分野に多くの業者が参入し、消費者の出費傾向がイベントウェアに移行するになか、快適性を重視したブランドは2022年の売上を伸ばすため、さらに注意深く活動を進める必要があるだろう。

ジェーン・ハリ・アンド・アソシエイツ(Jane Hali and Associates)のシニア調査アナリストを務めるジェシカ・ラミレス氏は次のように述べている。「アスレチックのブランドと小売業者はとことん追求して進化する必要があるだろう。非常にスタイリッシュで、しかもスマートでアスレチックな繊維を使用したスポーツジャケットを販売することもできるし、ほかのカテゴリーに参入することも可能だ。そのブランドが消費者に提供しているシルエットのなかに、現時点で有用になり得るものはあるかを考えなくてはならない」。

予測のミス

ウォルマート、ターゲット、ジェイディー(JD)などの小売業者は、消費者の嗜好の変化、サプライチェーンの問題、そして今年の春が例年より寒かったことなどを理由に、この四半期に商品の値下げをおこなった。

ウォルマートのCEO兼プレジデントを務めるダグ・マクミロン氏は、5月17日に行われた同社の決算発表で次のように述べた。「我々は第1四半期に、例えばアパレルで積極的に巻き返しを図り始めた。米国におけるカテゴリーの構成割合は食品や消耗品が大きく、必需品でないアイテムに対する消費者の支出はやや減少した。これにはアパレルなど、季節外れの寒い気候の影響を受けるカテゴリーも含まれていた」。

カジュアルウェアからフォーマルウェアへの変化も、ターゲットの経営陣が予測したよりも迅速に起こった。消費者が必需品でないアイテムに支出するときは、バケーション用のドレスや旅行用のアクセサリーなど、体験型のアイテムに集中して支出すると、ターゲットのCEOを務めるブライアン・コーネル氏は説明する。

継続的な輸送コストの増大や、インフレの渦中における燃料コストの上昇など、サプライチェーンの問題から、小売業者は欲しい商品を欲しい時に妥当な価格で入手することが困難になっている。

エッツィーのCEOを務めるジョシュア・シルバーマン氏は、5月初頭に行われた同社の決算発表で、5.2%の連結収益成長が報告されたのを受け、次のように述べている。「今年が当社にとって予測不能な年になるだろう。たしかに順風と逆風を問わず多くの変動要素が存在し、推測は困難だ。当社は消費者の時間と予算を獲得するため、さらに奮闘する必要があるだろう」。

[原文:‘People feel the need to get dressed up’: Apparel retailers struggle to adapt to changing preferences]

Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Connie Zhou Photography

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