ITエンジニアが知っておきたい「地方移住の現実性」4つのポイント、宮崎県の場合で考える[Sponsored]

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宮崎県が推進する「ひなターンみやざき」のウェブサイト

 コロナ禍となった2020年初頭以降、国を挙げてリモートワークが推奨されたわけだが、実質的にリモートできる職種とできない職種がある。その中でもIT系の業務は、よほど現場張り付きで見てくれと言われるものでない限り、かなりリモートに向いた仕事であろう。どこにいても仕事ができるなら、もはや住む場所は駅に近いとか、通勤圏であるといったことにこだわる必要がなくなってくる。そうしたことから、地方への移住や転職を検討し始める人が増えている。

株式会社宮崎県ソフトウェアセンター 情報サービス部課長の長友孝之さん(左)、人材育成部の白坂真樹さん(右)

株式会社宮崎県ソフトウェアセンターは、情報処理推進機構と宮崎県、県内の市町村、民間企業26社が出資して1994年に設立された第3セクターの企業。IT人材育成、コンサルティング、ITソリューションなどの事業を展開している

 そんな中、宮崎県では、県内のICT企業を振興するため、ハイクラスのエンジニアに宮崎に来てもらうことで技術向上を狙うという活動「ひなターンみやざき」を2021年度からスタート。移住や転職の参考になる情報の発信や交流イベントの開催などに取り組んでいるところだ。近く2月11日にも東京都内のリアル会場/オンラインのハイブリッドイベント「ひなた 照らす ICTプロジェクト vol.3 トーク&交流会」を予定しており、現在、参加申し込みを受け付けている。

 今回は、「ひなターンみやざき」の事務局を務める株式会社宮崎県ソフトウェアセンターのお二人とともに、自身も2019年より宮崎県に転居して執筆活動を続けている筆者の肌感覚も含めながら、「宮崎でITワークってどんな感じ?」というのをご紹介したい。都市部から宮崎県への移住を検討されている方の参考となれば幸いだ。

1. 宮崎のパラダイス事情

 かつて宮崎県は「陸の孤島」と呼ばれた場所だった。陸路では九州の玄関口である福岡から、九州の背骨にあたる九州山地を「山越え」しなければならないため、鹿児島に行くよりも時間がかかる。この事情は今でも変わらないが、飛行機では東京や大阪からのアクセスが良い。宮崎ブーゲンビリア空港は県庁所在地である宮崎市内にあり、市の中心地であるJR宮崎駅まで電車で10~15分程度。車でも20~30分だ。これほど繁華街に近い空港は、全国でも珍しい。

 このアクセスの良さもあり、LCCの就航に伴って多くのサーファーが訪れるようになった。凪の日が少なく、温暖な気候ゆえにほぼ一年中サーフィンが楽しめることから、サーフィンのために移住する人もけっこう多い。人気ポイントの木崎浜は、空港から車で10分だ。

空港のすぐそばにゴルフ場、その先が人気サーフポイントの木崎浜

観光地としても知られる「青島」

 また、宮崎市内近郊にゴルフ場がたくさんあるのも面白いところ。宮崎県ソフトウェアセンターの長友孝之さんも、実は東京から宮崎へのUターン組。そして最近、ゴルフにハマった一人だ。

 「ゴルフ場は、車で30分圏内だけでも10カ所ぐらいありますよね。コース回って食事しても1万円しない。東京でゴルフ行こうとしたら朝5時に待ち合わせして……って大変ですけど、こっちだったら9時スタートでも8時半ぐらいに家を出て十分間に合ってます。」

名門ゴルフコースを有するフェニックス・シーガイア・リゾート

宮崎県には多くのサーフポイントがある

宮崎市内にある主要ゴルフ場

 一方、宮崎で生まれ、県外に出ずそのまま社会人になった白坂真樹さんは言う。

 「趣味のドラムのために、防音室付きの家を建てたんですよ。そういう自分の夢を実現できたのも、宮崎の地価の安さゆえの余裕だと思うんです。理想の暮らしをしたいと考えている人には、宮崎はすごくいいんじゃないかと思いますね。」

 なんでもない食べ物がいちいち美味しいのも、宮崎の隠れた特徴だ。宮崎牛は全国でも有名だが、地元スーパーでも普通に買える価格で手に入る。地鶏の炭火焼きも、ぜひ地元で本物を味わって欲しい逸品だ。魚介類は県北と県南には漁港がたくさんあることから安くて新鮮、回転寿司チェーンで食べても十分旨い。痩せ気味だった筆者の妻は、宮崎に移住後、1年で7kg体重が増えた。

ビールによく合う地鳥の炭火焼き

海鮮丼も隠れた名物

 そんな妻が宮崎への移住に付いてきてくれたのは、妻の友人がかつて宮崎に転勤していたことがあり、「あちこち行ったけど、一番良かったのは宮崎! 宮崎ならもう一度転勤してもいい!」と断言していたからである。

 「住めば都」と人は言うが、「住めば楽園」感が強いのが宮崎の魅力である。

様々なマリンスポーツが楽しめる一ツ葉ビーチまで、宮崎駅から車で10分。海の近くに住む、早く起きるなどすれば、平日朝の出勤前にマリンスポーツを楽しむことも十分に可能だろう

一年中「海」が楽しめる。住宅地からのアクセスも良く、サーフィンをしない人にとっても、散歩やジョギング、サイクリングコースが充実しているのがうれしいところ

2. 宮崎にITの仕事はある? 賃金水準は?

 とはいえ、「宮崎にITエンジニアの仕事はあるのか?」というのが素朴な疑問だろう。

 過去に「ひなターンみやざき」で掲載した事例としては、開発プロジェクトリーダー、ファイルサーバーの管理運営業務、自社パッケージの開発、受託開発、人事部などがあった。そのほか、求人サイトを調べてみても、ゲーム開発エンジニア、システムエンジニア、フロントエンドエンジニア、インフラエンジニア、テクニカルサポート、ウェブデザイナーと、多岐に渡る。

「ひなターンみやざき」には、「インフラ/ネットワーク」「ウェブ制作」「システム開発」の3業種で企業情報を掲載。各社の採用情報ページへもリンクしている

 「ITエンジニアの需要って多分、宮崎だけじゃなくて、全国で⾜りなくて困ってる状態なんですよね。県内のIT企業さんとお話しして、『人さえいれば仕事はあるんだよね』という話が本当に多くて、人がいないから仕事が受注できないんですよ。そのため最近は未経験者の方を育成する会社が増えていますね。本来であれば『ひなターンみやざき』の事業目的にも合致しますが、ハイクラスのエンジニアを採用したいと考えている企業さんは多いですね」とは、前出の長友さんの弁。

 例えば地方行政も、2021年のデジタル改革関連6法に則って、自治体情報システムの標準化・共通化を進めることになった。いわゆる地方行政DXだ。各自治体が地方税を投入してデジタル化を進めることになるわけだが、住民からすれば、地方税を投入する開発を東京や県外の事業者に発注するのはどうなんだという話になり得る。できれば地元、せめて県内の事業者にお金を落とすべきと考えれば、県内企業に「できるエンジニア」が来て欲しい。

 そんな事情は全国どこでも一緒だとするならば、「なぜ宮崎なのか」が問われる。どこでも地方に行けば、東京よりも賃金水準が下がることは避けられない。2022年10月の改定で最低賃金の全国加重平均は961円となったが、宮崎県は853円と、100円以上の開きがある。

 長友さんは言う。

 「宮崎に帰ってきたときは、確かに給料は東京にいたころよりも少なくなったなと感じました。でも実際に生活をしてると、そんなにお金に困ってない。東京ではなまじ電車で帰れるんで、毎日飲み歩いてたりしてましたけど、車で帰るのが基本だと飲みに行きませんし。残るお金も含めて、生活水準を考えても思ったより良かったなっていうのがあります。

 多少無理して東京で働いているけど、そこまで優先順位はお金じゃないなと思ってる人って、多いと思うんです。賃金とかそういうところが下がっても、結局、自分の生活はすごく豊かになったというか。宮崎で暮らすって、働き方も含めて、“生き方”とかそういうところを変えませんかっていう提案になっていくってことですかね。」

東京より日の入りが30分ほど遅いので、定時に退勤すれば夕焼けの中で家路につくことができ、アフター5が長く楽しめる。夕方にジョギングする人も多い

 市の中心地にコワーキングスペースやインキュベーション施設があるのも、土地に余裕がある宮崎ならではと言える。気分を変えてのノマドワークも可能なら、ビーチに行けばワーケーション気分も味わえる。テレワークが可能な職種なら、宮崎のこうしたロケーションを使わない手はない。

「ATOMica宮崎」がある「宮崎ナナイロ東館」は宮崎市繁華街の中心

筆者がよくワーケーションする一ツ葉ビーチ(海辺・砂浜でのPCの使用はあくまでも自己責任で。筆者の場合はこれまで特に問題は起きていないが、潮風や砂などの影響で故障・劣化の可能性も考えられる)

3. 宮崎の暮らしって実際どうなの? 家賃の相場は?

 仕事面ではクリアできても、毎日の生活に不満があれば、暮らしていくのは難しい。ここからは宮崎ライフの実際についてお話ししていきたいと思う。

 首都圏など都市部での暮らしに慣れていると、日常の買い物やコンビニまでのアクセスが気になるところかと思う。県内のだいたいの地域には住宅地近郊に大型スーパーやドラッグストアがあり、コンビニもよほどの山間部でなければ各所にある。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートが中心だ。物価としては、食品は首都圏よりも多少安いかなといったところ。全国流通の日用品(洗剤・飲料その他)については同じか、陸路流通が遠いことからちょっと高いこともある。

 日々の買い物は、車で5~10分程度の範囲が射程距離となるため、生活圏は半径2~4kmぐらいと、都市部よりもかなり広い。アメリカの地方都市で暮らすようなイメージだ。

 逆に言えば、宮崎生活を漫喫するなら車は必須。一家で2台所有している家庭も多く、筆者の住むマンションは部屋付きの駐車場が2台分ある。自動車免許を持ってないという方は、宮崎県が主催する「宮崎ひなた移住倶楽部」の会員になることで、自動車学校教習料金の割引が受けられる。

「宮崎ひなた移住倶楽部」は、宮崎県への移住を検討している県外居住者を対象とした無料の会員制度。自動車学校教習料金割引のほか、レンタカー割引、引越費用割引、住宅ローン等の金利優遇などの各種割引・特典サービスを提供している

 パソコン・IT機器の入手に関しては、大手家電量販店が各市に進出している。宮崎市内はヤマダ電機、ベスト電器、エディオンが、小林市と日南市にはケーズデンキがあるほか、PC専門店なら宮崎市中心部にパソコン工房がある。Apple製品は、宮崎県で最大の売り場面積を誇る「イオンモール宮崎」の中にApple正規サービスプロバイダのC smartがあり、持ち込み修理にも対応する。

 秋葉原のような場所はないので、家電量販店で入手できない機器や専門書はAmazon等で購入することになる。福岡の拠点に在庫があるものは翌日、首都圏からの配送でも翌々日には届く。ただし、宮崎市から遠く離れた地域だと、あともう1日はプラスで考えておいた方がいいかもしれない。

再開発により綺麗に整備された宮崎駅前

 鉄道(JR九州)は、通学に使う高校生はいるものの、通勤や生活ではほぼ使われない。列車の本数が少なく、路線も南北に走るだけだからだ。つまり駅近くに住む必要は全くないため、住む場所はかなり自由に選べる。SUUMOによると、賃貸相場としては、宮崎市内のマンションはでワンルーム3.4万円、2LDK/3K/3DKで6万円程度である。3LDK以上になるとマンションは少なくなり、戸建ての賃貸が多くなる。

 新築戸建ての相場は、住宅金融支援機構の2018年度の調査によると、土地付き注文住宅の平均が3362万円であった。年金や健康保険などの公共料金は首都圏と変わらないので、地代家賃をいかに抑えていくかが、宮崎の暮らしのポイントとなる。

4. 移住者への補助金はある? 支援制度は?

 宮崎県への移住サポートとして、県による移住支援金制度がある。条件が合えば最大100万円、単身でも60万円の援助が受けられる。ただし現行制度は令和4年度までなので、ゆっくり検討するなら令和5年度以降の制度を見極めてから動き出すといいだろう。

 また、宮崎県の各市町村では「お試し滞在」の受け入れもしているほか、「ひなターンみやざき」では、移住者の体験談を聞いたり、キャリアコンサルタントも交えた相談ができるイベントも行っている。直近では、2月11日に「ひなた 照らす ICTプロジェクト vol.3 トーク&交流会」を実施する。移住を考えている人達との交流や情報交換もできるイベントで、「移住したい」まではいかなくても「ちょっと興味があるかも」という人は参加してみるといいだろう。定員はリアル会場(東京都内)が40人、オンラインが40人。

 これらの詳細は、以下にまとめたので、参考にしてほしい。

 実際に筆者がUターンしたのはコロナ禍前だが、県や市町村の移住受け入れ施策は今のような「プロジェクト」のような格好にはなっておらず、探してもなかなか見つからなくて苦労した。だが今はポータルとなるサイトもあり、「ひなターンみやざき」のような活動もある。宮崎にIターンしてきた友人は、宮崎出身者数名と一緒に移住してきている。移住したい人達と一緒に方法を考えれば、いい知恵も出てくるはずだ。一人で考えず、ぜひ「ひなターンみやざき」のコミュニティに参加して、情報収集だけでなく「移住仲間」を増やしてみてはいかがだろうか。

まずは「お試し滞在」という手も

[宮崎県移住・UIJターンサイト あったか宮崎ひなた暮らし]
県が開設している、移住検討者向けの情報サイト。前述した無料会員制度「宮崎ひなた移住倶楽部」も同サイト内にあるほか、県内の各市町村による仕事や住居、子育てサポート施策などの情報がまとまっている。

各市町村の「お試し滞在」の受け入れ施策もリストアップされており、例えば以下のような施策がある。

  • 延岡市:移住を目的として市内に滞在される人の宿泊費とレンタカー代の一部を補助
  • 北方町:移住を目的として住居や仕事を探す人を対象に、延岡の生活を体験できる施設を貸出。使用料は無料で、2~14日以内の利用が可能(年末年始・年度末を除く)。同一年度内に2回まで
  • 諸塚村:古民家を改修した宿泊体験施設を提供。農林業をメインに、希望する仕事を体験してもらう(3日以上~最長1カ月まで)。来村交通費、滞在期間中の宿泊費、村内移動交通費、保険料等の支援あり
  • 川南町:移住を目的に町内の宿泊施設に滞在し、仕事または住居を探す活動をする人を対象にお試し滞在補助金を交付(民間宿泊施設が1泊あたり4000円、公共宿泊施設では1泊あたり500円を補助。同一年度内に、1世帯あたり4万円が上限)。また、移住を検討している人のための「お試し滞在施設」を1軒設置しており、1日500円で利用可能

今回の記事はITエンジニアの移住ということで、主に宮崎市内近郊の生活事情をまとめたが、山間部では環境も大きく異なる。移住後の暮らしをイメージするために「お試し滞在」してみるのも手だ。

「ちょっと興味が出てきた」「もっと知りたい」というITエンジニア向けイベントもアリ

[ひなターンみやざき]
宮崎県へのUIJターンを検討するITエンジニアを対象に県内企業や移住アドバイザーを紹介。また、宮崎県出身者を中心とした、首都圏でのIT人材コミュニティの交流も生まれている。メンバー登録することで、希望者はキャリアコンサルタントによる移住就職相談を受けることも可能。今後はメンバー登録エンジニアと宮崎県の企業との間で、スキルアップのためのマッチングも計画している。

[ひなた 照らす ICTプロジェクト vol.3 トーク&交流会]
“宮崎×IT×移住”をテーマとしたリアル/オンラインのイベント。首都圏・宮崎県で活動する起業家やITエンジニアが自身の経験談などを語るほか、参加者も交えたディスカッションを実施。リアル会場では、イベント終了後に交流会も予定。

  • 開催日時:2023年2月11日(祝) 14:00~17:00
  • リアル会場:ミーティングスペースAP品川(東京都港区港南1-6-31品川東急ビル 8F)
  • 参加費:無料
  • 定員:リアル会場最大40人、オンライン40人
  • 対象:宮崎へUIJターンを考えている人、宮崎での仕事や暮らしに興味がある人、宮崎が好きな人など
  • ゲストスピーカー:田鹿倫基氏(株式会社ことろど 代表取締役)、宮田理恵氏(カテナ株式会社 代表取締役)、大塚真言氏(合同会社ノマドリ CEO)、石川琢磨氏(アディッシュプラス株式会社 代表取締役)

2022年10月に開催した「vol.2」のリアル会場の様子。2月11日に予定されている「vol.3」では会場規模を拡大して開催する

小寺 信良

3~10月には海辺で仕事することも。宮崎は晴天が多いため、ソーラーパネル&ポータブル電源を持って行くと、めっちゃ発電するので電気代がタダです(ただし、前述したように海辺・砂浜でのPCの使用はあくまでも自己責任で)

1963年、宮崎県出身。18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。専門分野はコンシューマー映像機器、放送機器、映像技術、放送文化、エネルギー問題、子どもとIT、PTAなど。インターネットにまつわる諸問題の解決に取り組む「一般社団法人インターネットユーザー協会」代表理事。2015年より2019年まで、文化庁文化審議会著作権分科会専門委員。2019年より故郷の宮崎県へ移住。宮崎暮らしの現在を伝えるコラム「小寺信良のシティ・カントリー・シティ」をImpress Watchにて連載中。

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