「 Scibids のカスタムAIなら、最大70%以上の広告効果改善が見込める 」:同社 日本カントリーマネージャー 犬塚洋二氏

DIGIDAY

もっと安価で、もっと良質な在庫を――。これはプログラマティック広告を利用する、すべてのクライアントの変わらぬ願いだ。

その誕生から十数年、プログラマティック広告は「質より量」という時代を経て、いまや「安かろう悪かろう」という考えが浸透しつつある。しかし、そうしたニューノーマルをも、さらに凌駕するソリューションが誕生した。

「DSPはプログラマティック広告のバイングプラットフォームとして高度に進化した。でも、限界点はまだ先。その余力のひとつがDSPをより高度に使いこなすための『カスタムアルゴリズム』という新しい概念だ」と、Scibids(サイビッツ)の日本カントリーマネージャーを務める犬塚洋二氏は語る。「AIによってデジタル広告運用のサポートを行うScibidsは、既存のDSPの能力をさらに引き出し、パフォーマンスを引き上げることが可能な技術。それによって、従来型の配信運用に比べ、30〜70%もの広告効果改善が見込める」。

Scibidsは、既存のDSPに対して、どんな効果をもたらしてくれるのか? 独自AI技術によって、何が実現できるのか? 犬塚氏に訊いた。

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――「もっと安価で、もっと良質な在庫を」というのは、すべてのクライアントの願いです。Scibidsは、それを叶えるソリューションと聞きました。なぜ、それが可能なのでしょう?

現在、プログラマティック広告を配信している広告主や広告代理店の皆さんからすると、ご利用中のDSPに広告パフォーマンスを向上させる余地がある、というのは少々意外な話かもしれません。実際、DSPは優良な在庫を効率良く確保し、広告主の広告を的確に配置する、という意味でとても優れた技術です。一方で、キャンペーンや商材ごとの固有の入札アルゴリズムの不在や反応の良い特定在庫へ入札が集中するなど、課題が存在するのも事実です。

広告主の目線からすると、たとえば化粧品と食品では、効果的な配信をするための入札アルゴリズムは固有のものであるべきでしょうし、その固有のアルゴリズムなら、化粧品にはマッチしなくても、食品に対しては有効な在庫を見つけてくるかもしれません。Scibidsは、これらの既存のDSPでは行き届かない領域をカバーする技術です。具体的には、キャンペーンや商材ごとにカスタマイズされたAIによって、それぞれの広告配信に対して最適なアルゴリズム(カスタムアルゴリズム)をリアルタイムでDSP側に提供します。お使いのDSPで設定するだけで、該当するキャンペーン、商材ごとに専用のAIが設定され、それぞれの配信コントロールを行うわけです。すでにザ・トレード・デスク(The Trade Desk)やGoogle ディスプレイ&ビデオ 360™(DV360)、Xandr(ザンダー)、Mediamath(メディアマス)などは連携可能な状態が整っています。


ScibidsのカスタムAIソリューション(※画像クリックで拡大)

犬塚 洋二/Scibids 日本カントリーマネージャー。商社勤務を経て2000年にエキサイト株式会社に入社、広告営業部長などを務める。その後、モードメディア・ジャパン株式会社でアドバタイジングセールス・ディレクター、執行役員を歴任。2018年5月よりCHEQ AI Technologiesの日本法人であるCHEQ Japanに所属し、カントリーマネージャーを務める。2021年5月より現職。

――なるほど。固有のキャンペーンや商材向けのカスタムアルゴリズムというのは、ユニークですね。それは、どのような背景から開発されたのでしょうか?

DSPは、メディアバイイングの中心的な存在として成長していくなか、膨大なデータが流通するゲートウェイと化しています。そのなかで、その膨大なデータ群が必ずしも使いこなされていない、という視点を持ったのがScibidsです。これらの情報の山を独自の数値分析技術や予測モデルを用いて有効に利用し、広告パフォーマンスを上げていく、というのが基本的なコンセプトです。

また、Scibidsが創設されたのが、GDPRを筆頭に、個人情報保護における法整備が進むヨーロッパ(本社はフランス・パリ)である、という点も影響していると思います。従来はCookie技術によるユーザー追跡が広告効果を生むうえで外せない要素でしたが、Scibidsの技術は、「従来とは違うアプローチでプログラマティック広告の効果を高められないか」というマーケットニーズへの回答でもあります。実際、ScibidsはサードパーティCookieやPII(個人の識別可能情報)など、デジタル識別子を使用しませんが、前述の広告効果改善率を可能にしています。

――従来型のプログラマティック広告へのアンチテーゼだったわけですね。では、具体的に、どう最適化していくのですか?

Scibidsでは、カスタムデータやログレベルデータ、レポートデータといったDSPのプラットフォーム内に日々流通する膨大なデータを取得し、AIによって機械学習を行い、ラインアイテムごとの予算配分や入札単価などを最適化します。つまり、DSPが持つノーマルアルゴリズムに加え、ScibidsのAIによる追加アルゴリズムを投入することで、キャンペーンや商材に対し、それぞれ固有の機械学習を行い、カスタマイズされた専用のアルゴリズムを構築できる。それにより、コストを抑えながら最適な在庫を購入できます。

たとえるなら、ノーマルのアルゴリズムは「養殖場」のような一定の要件で魚を釣ります。広告レスポンスが一定して良い媒体に入札を集中させる、といった意味合いです。しかし、Scibidsは「大海」を隈なくリサーチして、そのなかで動きを分析・予測し、価値のある魚を深海でも河口でも待ち構えて釣り上げる。分析に必要となるデータの膨大さなどを考えると気の遠くなるような話なのですが、Scibidsの社員の半数を占める優秀なデータサイエンティストたちの知力の結晶です。


Scibidsのカスタムアルゴリズムとは(※画像クリックで拡大)

――「大海」で「一本釣り」するというのは、面白い表現ですね。Scibidsを利用する顧客の具体的なメリットは、どういったところにありますか?

そうですね。AIによる機械学習やカスタムアルゴリズムというアプローチの結果として、広告パフォーマンスを向上させることができるという点が最大のポイントです。DSPのノーマル配信と比較して約8割のキャンペーンで何らかのKPI改善が見られています。それらの事例では、CPAやCPCなどは低いもので30%、高いもので70%もの改善が見られています。平均的に見ても、たとえばCPAキャンペーンで40〜50%程度改善できる、といったところでしょうか。

また、最適なパフォーマンスを目指して、日々の広告運用をAIが行いますので、プログラマティック広告の運用に多くの労力と時間を要している広告主様や広告代理店様にとっては、自社のチームリソースの最適化という形で機能します。手入力で行ってきた単純作業をAIが肩代わりする、というのも面白いポイントです。


Scibidsの特徴的なポイント(※画像クリックで拡大)

――Scibidsの強みが理解できました。では、視点を変えて、Scibids自身の収益スキームを教えていただけますか?

すごくシンプルな構造です。クライアントがDSP上でScibidsをご利用いただいた際、そのメディアコストに対するフィーをいただく形で収益を得ています。ご利用規模に応じてフィーのレートは変化しますが、たとえば、Scibids のフィーが15%で、CPAを50%に抑えられた場合、差し引き35%分をコスト削減できたということになります。メディアコストに対する「改善費」のようなイメージですね。ご利用いただいた分のみ課金する形で、それ以外の固定費などは発生しません。

改善効果が可視化されやすいこと、また、同セグメントの競合がいないことから全世界で利用が拡大しており、現在グローバルでは1000社以上に導入されています。日本ではまだ立ち上がりの時期ですが、今後大きく拡大を見込んでいます。

――2022年に入って、AT&Tのアドテク部門であるXandr、そしてデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(DAC)との提携を発表されています。

これまでもXandr(ザンダー)様とは、接続先のひとつとして良い連携関係を築いてきました。今回の提携によって、Scibidsの持つカスタムAI機能を、Xandrが持つDSPへシームレスに提供することが可能になり、請求関連の業務などが連携されることで、よりご利用いただきやすい環境になっています。

DAC様との提携に関しては、彼らのプログラマティック広告戦略の一環として、広告効果のさらなる向上を目指し、Scibidsが持つAI技術を実装するのが目的です。先進的なプログラマティック広告運用体制を目指して、ScibidsのAI技術を幅広く日本国内の広告主様にご活用いただければと思っています。

――Scibidsは、トレーディングデスクの「働き方改革」にも繋がりそうですね。

プログラマティック広告、そしてDSPが、TVコマーシャルやアウトドアメディアを巻き込み、広告を扱う際の重要な基点を担っていくという大きな流れは確実に進行しています。そのなかでScibidsの技術は広告パフォーマンスを最適化し、運用の単純作業を人から肩代わりして、広告ビジネスを次のレベルへと引き上げていくための革新的な技術です。

いまのところ、我々のようなAIを活用した「カスタムアルゴリズム」自体があまり認知されていない「黎明期」なので、まずは事例を増やしていきたいと考えています。CPAやCPCが50%以下になるのは非常に大きなインパクトだと思うので、サンプルケースを増やしていくことで、その有用性を示していきたいですね。

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(海達亮弥)
Photo by 渡部幸和

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