「ゲーム内広告は気に食わない。エピックゲームズは広告業界にはいない」:エピックゲームズ CEO ティム・スウィーニー氏、EVP サックス・ペルソン氏

DIGIDAY

エピックゲームズ(Epic Games)のトップであるティム・スウィーニー氏に、ゲーム内広告の話は禁物だ。同氏は広告にまるで興味がなく、広告事業に進出する計画もない。

同氏にしてみれば、ゲーム内のビルボード(広告看板)に炭酸飲料ブランドの広告を出すのは、時代遅れも甚だしいという――。それはゲーミングエクスペリエンス(ゲーム体験)を増すどころか、邪魔するものでしかない。同氏としては、マーケターにはあくまでエクスペリエンスを豊かにするかたちで登場してもらいたいようだ。たとえば、その場でしか得られない付加価値として、プレイヤーお気に入りのスーパーヒーローになれるようにしたり、お気に入りのブランドのスニーカーを履けるようにしたり、といったものだ。

となれば、ゲーム内マーケティングはブランドフリーではなく、広告フリーに行き着くことになる。

実際、2023年3月第四週に開催されたゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス(Game Developers Conference)において、エピックゲームズの発表はその点を明確にするものだった。

同社が導入を発表したのは、フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)内におけるプレイヤーのエクスペリエンスをさらに深める新たなツールセットや、高品質のデジタルアセットの巨大なカタログ「ファブ マーケットプレイス(Fab marketplace」)、さらに「フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)」と「バトルロイヤル(Battle Royale)」の収益の40%をゲーム内クリエイターに与える「クリエイターエコノミー2.0(Creator Economy 2.0)」などがある。

つまり、自身のブランドをゲーム内にどうしたら存在させられるのかと考えている全マーケターにとっては、新ツールのサンドボックスにほかならない。

米DIGIDAYはエピックゲームズのCEOティム・スウィーニー氏およびEVPサックス・ペルソン氏と膝を突き合わせ、これらの新機能が同社プラットフォームにおけるブランド、クリエイター、広告、それぞれの役割にどのような影響を及ぼすのかを語ってもらった。

インタビューの内容は、長さと分かりやすさを考慮して編集している。

◆ ◆ ◆

――フォートナイト(Fortnite)の未来に広告が担う役割はあるか? あるいは現行モデルは市場の変化に対応できるほど頑強か?

スウィーニー氏:ゲーム内広告は気に食わない。ベストは、さまざまなブランドがシームレスにフォートナイトの世界に入ってくる状態だ。たとえば、ファッションブランドの進出、フェラーリによる車のドロップ、マーベルやスターウォーズのクロスオーバー。私が思うに、メタバースに関わりたいと思っているなら、ブランドプレゼンスのほうが広告よりもはるかに健全だ。

単なる広告は目障りでしかない。プレイヤーはそういうものを嫌う。そういったものがあると、そのコンテンツにさほどのめり込まない。露骨に広告を見せるのではなく、運転できるフェラーリや着られる格好いいシャツを提供すれば、みんな大喜びするだろう。

これまで広告を打っていたどの企業にも、クリエイターと提携してありとあらゆるクロスオーバーを創出する機会は豊富にある。たとえば、ブランド名を冠した島やコンサートなど。プレイヤーの心を掴む面白いかたちでブランドを組み込むべきだ。くだらない動画を流すだけの広告を打つのではなく。そういうのは単純に面白くない。

我々はその類のビジネスとは無縁だ。エピックゲームズは広告業界にはいない。我々はほかで横行しているダメなことを人々にさせないエコシステムを営んでいる。アンリアルエンジン・フォー・フォートナイトの世界において、バース(Verse:エピックゲームズの新たな暗号言語)はプレイヤーのデータを取得する方法を絶対に開示しない。その点は、プレイヤーエクスペリエンスの極めて重要な一部だ。我々が提供するのは、楽しむための場だ。

――フォートナイトに広告を打つ選択肢はほかにあるか? また、たとえばロケットリーグ(Rocket League)やフォールガイズ(Fall Guys)には?

ペルソン氏:フォートナイトに関してはないだろう。

スウィーニー氏:ロケットリーグでは、ステージにビルボードを出せる。それは現実世界にも実際にあるものであり、ゲーミングエクスペリエンスを邪魔するものにはならないと思う。

――それが唯一の選択肢だとすると、フォートナイト内でのネイティブインテグレーション(自然な統合)はどのようにすればよいか?

ペルソン氏:それはブランド側が自分で考えることだ。我々のすることではない。広告の方法については、クリエイターチームがしてもいいことと、してはいけないことのあいだに明確な線引きを設けており、クリエイターたちは自らの力で自身のエクスペリエンスを創造している。

もしもブランドが、TVよりも相応しいオーディエンスが付いているという理由で、フォートナイト内でプロダクトのお披露目をしたいというなら、すればいい。しかし、それは我々の仕事ではなく、我々が主導するものでもない。我々は、このエコシステム内でできることに関するルールや制限を設けている、それだけだ。

――より直接的なバーチャルコマース機会の展開は、エピックゲームズにとってどの程度必要か?

ペルソン氏:もしもそれが、プレイヤーの興味に沿うものだったら、やるかもしれない。ただ、計画にはない。ダイレクトコマースは扱いが難しく、どう転ぶかわからない。一度始めたら最後、その波を止める術を私は知らない。

スウィーニー氏:私たちはフォートナイトを、モバイルゲームの競争から解放されたよりよい世界を構築する機会として捉えている。モバイルのエコシステムにおける重要な問題は、ユーザー獲得が完全に広告ベースであることだ。

ペイ・トゥ・ウィン(課金によりユーザーが優位になるシステム)や戦利品ボックスなど、最悪の消費者慣行を持つ企業は、消費者から最も多くのお金を得ている。フォートナイトにそのような世界を求めてはいけないと、私たちは強く思っている。

ペルソン氏:我々が次の段階に成長するのに、ダイレクトコマースは必要ない。ただし、たとえばスターウォーズの新作映画がフォートナイトでプレミア上映(初公開)したいとなって、その上映日のチケットを売りたいというのであれば、観たい人が皆フォートナイトに集まるわけで、それはプレイヤーにとってよい付加価値になると思う。

――フォートナイト内にブランデッドエクスペリエンスが増えるなか、著作権問題が発生することは? ブランドが「公式」のブランデッドアセットを創るとしても、フリーのクリエイターたちが同じエクスペリエンスを提供する「偽物」のアセットを創った場合の対応法は?

スウィーニー氏:著作権に関しては然るべき法的枠組があり、我々はそれに準じている。DMCA(デジタルミレニアム著作権法)はそのひとつだ。また、仲介業者が争議を自分たちで解決できるよう、我々が手を貸せる場合、直接力になれる方法も検討している。我々がめざすのは質の高いエコシステムであり、著作権を侵害するコンテンツのゴミ溜めではない。

そのエコシステムはすべてのユーザーに開かれている場であり、エピックゲームズをはじめ、どこか1社がその世界に存在する、あるいは著作権を有するすべてのコンテンツを把握する、というわけにはいかない。だから、権利を侵害しているコンテンツをユーザーがリリースしてしまうこともあるだろう。その場合、我々としてはその事実をクリエイターから聞いて知り、そして取り除くことになる。完璧ではないが、最もよく知られた有効手段だ。

――フォートナイトにおいて、ブランドコラボレーションがこれまで非常に上手く行っている理由は? それは典型的な広告フォーマットに頼らず、ゲーム内でシームレスに結びつくものだからか? また、それがゲーム内広告の標準になりつつあるのか?

ペルソン氏:たとえばアイアンマンとしてプレイさせるのは、厳密には広告だ。ただし、プレイヤーは単に面白いからそうしているわけじゃない。いわゆる願望成就だからだ。フォートナイトが願望成就の優れたサンドボックスになることは、よくある。我々がそのあたりのバランスを上手く取ってやれれば、最高の体験になる。

[原文:‘I hate advertising in games’: Q&A with Epic Games’ Tim Sweeney and Saxx Persson on the future of Fortnite, Unreal Engine

Aron Garst(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)

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