メタバース エンゲージメント、鍵を握るのは自社IP:物理的な資産を「メタバース」に変換する

DIGIDAY

小売企業やメディア・エンターテインメント企業は、懐疑的なオーディエンスからの反発を避けるために、IPの活用法を学ぶとともに、ロブロックス(Roblox)またはフォートナイト(Fortnite)内でのバーチャルブランドアクティベーションの構築に励んでいる。

では、たとえばそこで過ちを犯してしまうとどうなるのだろうか。

2022年9月第5週の前半、ウォルマート(Walmart)はウォルマート・ランド(Walmart Land)と名付け、同社初のロブロックスワールドを立ち上げた。しかし、発表された支離滅裂なブランドメッセージと活気のなさを理由に、ソーシャルメディア上で大々的に嘲笑されている。たとえば、そのロブロックススペースをウォルマートのCMO、ウィリアム・ホワイト氏が紹介するクリップを「史上最高に悲しい動画のひとつ」と評したツイートはバズりまくった。

無論、メタバースの初期段階にある現在、こうした類の批判はある程度想定内ではある。

「ウォルマートは象徴的なブランドだ。そんな企業がロブロックスといったプラットフォームに参入しようとすれば、当然、人々の目は通常の10倍厳しくなる」と、ロブロックスのデペロッパースタジオ、スーパーソーシャル(Supersocial)CEO、ヨナタン・ラズ・フリードマン氏は話す。

とはいえ、ウォルマートの場合、その規模だけがロブロックス参入の足かせになっているわけではない。一般的に認知度の高いブランドではあるが、ウォルマートにはユーザーにバーチャルで体験したいと思わせるIPがないに等しいのだ――ウォルマート・ランドがどこか閑散としている事実は、その弱点を如実に示している。

豊富な自社IPを持つメディアやエンタメブランド

これに対して、最近のブランドアクティベーションの成功例は、メディアおよびエンターテイメントブランドのほうが豊富な自社IPのおかげで、オンライン懐疑論を回避できるメタバース空間の構築に有利ということを証明している、

「彼らももちろん、多少は自己改革を求められるが、その点は元々DNAに組み込まれている」と、エージェンシー、デプト(DEPT)のテクノロジーおよびエンジニアリング部門グローバルSVP、ジェシー・ストレブ氏は話す。「つまり、彼らには独自の長所があり、たとえば、材木を売っているそのへんの会社や建設会社よりもはるかに優位に立っている」。

一例を挙げると、アイハートメディア(iHeartMedia)のロブロックスとフォートナイトの両スペースは、マスメディア企業である同社が豊富に有する、ジングルボールツアー(Jingle Ball Tour)やアイハートラジオ・ミュージック・フェスティバル(iHeartRadio Music Festival)といった人気の高い物理なイベントをひな形にしており、たとえばチャーリー・プース氏といったミュージシャンのバーチャル版にあらかじめ録音したコンサートを開かせ、オーディエンスとのリアルタイムの交流も可能にしている。

「そのIPには強力なブランドアソシエーションがある、ラジオ局を介してだ。ニューヨーク地区に住んでいる人なら、たいていはZ100を知っているだろう」とアイハートメディアのビジネス開発およびパートナーシップ部門EVP、ジェス・ジェリック氏は話す。「同じことはイベントIPにも、ポッドキャスト分野のIPにも、もちろん弊社のラジオタレントにも言える。つまり、我々はこのスペースに持ち込める強力なIPに不足はしていない、ということだ」。

リアルな資産をメタバースに変換する戦略

物理的な資産をメタバースに変換することは、メタバースプラットフォームを実験的なマーケティングチャネルとみなすブランドにとって魅力的な展望でもある。一から作るのではなく、すでに実証済のIPをバーチャルアクティベーションに変えられるからだ。

フォートナイトクリエイティブ(Fortnite Creative)で最近実施された、NBCユニバーサル(NBCUniversal)とサムスン(Samsung)による共同企画トゥナイトショー(Tonight Show)のアクティベーションはその好例であり、同戦略を実践している。「我々はホリスティック(総体的)に見ている――どうしたら新たな形でファンを見つけられるのか? どうしたらファンが愛してくれるIPを新たな形で利用できるのか?」と、NBCユニバーサルの広告および顧客パートナーシップ部門トップ、マーク・マークシャル氏は話す。

9月14日の開設以来、iHeartLand(アイハートランド)には150万人以上のロブロックスユーザーが訪れている。同社は今後、人気ミュージシャンやパーソナリティらを擁するバーチャルプログラムを予定しており、それを通じてこの高い注目度の維持を狙っている。

「我々の中核は、本質的にインフルエンサーネットワークだ。我々の放送を担うパーソナリティたちは、今日のメディアにおける、最も広範な繋がりを持つ、最も人々を惹きつける現役のインフルエンサーにほかならない」と、アイハートメディア・デジタルオーディオグループ(iHeartMedia Digital Audio Group)CEOコーナル・バーン氏は話す。「彼らは我々に、ロブロックスやフォートナイトといった新規プラットフォームに入っていける、強大な力を与える。我々は常に、彼らインフルエンサーを通じてリスナーと対話しているのだ」。

[原文:Why companies like iHeartMedia, NBCU rely on homegrown IP to build metaverse engagements

Alexander Lee(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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