AI によるキャッチコピー作成の可能性、マーケターの考えは?:「どこが素晴らしいのか、強みはどこなのか、常に学ぶ必要がある」

DIGIDAY

マーケターと科学技術者らは、急速に高まるChatGPTの人気――2022年11月に登場したばかりだ――を、テキストベースのコンテンツ生成にAIを利用する新たな波の始まりではないかと、期待を込めて見ている。

AIを巡って急速に高まるこの熱狂は、ChatGPTおよびダリ(DALL-E)を開発したAIスタートアップ、オープンAI(OpenAI)に、マイクロソフト(Microsoft)が100億ドル(約1兆3000億円)の投資を検討中、との報道を受けて顕在化した。ちなみに、マイクロソフトの広報は米DIGIDAYに対し、同社は「憶測」についてはコメントしないと回答した。

期待を寄せるエージェンシー勢

マーケティング界におけるジェネレーティブAIへの欲求の度合いは、訊ねる相手によって変わるが、エージェンシー勢は概ね、多くのクライアントが実験に関心を寄せていると語る。その一方で、問合せはいまだ、ぽつぽつと来ている程度、との声もある(ちなみに、2023年1月第二週前半、ミントモバイル[Mint Mobile]はライアン・レイノルズ氏を起用し、ChatGPTを使って宣伝コピーを書いた新広告を発表した)。

エージェンシー幹部勢のなかでもとりわけ熱心にChatGPTを支持するひとりが、クリエイティブエージェンシー、エピソード・フォー(Episode Four)の創業パートナー、マーク・ヒメルスバック氏だ。依然、さまざまな限界はあるが、ChatGPTは今後、発散的思考を育む一助になりうると、氏は確信しており、氏のエージェンシーではすでに、クライアント向けのブリーフ作りや戦略の書き出しにChatGPTを利用していると話す。

「ChatGPTが提供できる大量のラテラルシンキング(水平思考)は、創造性に向けた非常に優れた第一歩になる」とヒメルスバック氏。「ただ依然として、人間の手は要る。いわば、発想はどこからでも得られるが、何人かで磨きをかけないとならないのと同じだ」。

マイクロソフトによる投資の可能性が報じられる前からすでに、オープンAIは検索業界で長年にわたり支配的地位にある王者Googleに対する脅威、と見られていた。1月第一週には、ビング(Bing)の検索エンジンにChatGPTを統合する計画があるとの報道が流れた。

そして2022年10月には、マイクロソフト自身もビングのImage Creator(イメージ・クリエイター)をはじめ、さまざまなコンシューマー向けアプリおよびサービスへのダリ2(DALL-E 2)の統合を発表している。一方、広告なしの検索エンジンスタートアップ、ニーバ(Neeva)は、ChatGPTを利用しない独自のAI技術を発表した。

はるか先にある可能性に賭ける動きも

オープンAIがマイクロソフトにさらなる市場シェアをもたらす一助になるかについては、依然、何とも言えない。ただ、ビングに新たな妥当性をもたらすオープンAIの能力は、予想外の大転換をもたらしうると、独立系メディアエージェンシー、グッド・アップル(Good Apple)のソーシャルおよび検索部門VPエリック・ハミルトン氏は話す。

ただ、いずれにせよ、大手を打破するのは――別の大手ではなく――往々にしてスタートアップだと、氏は言い添える。「この先、ビングに人々が殺到する姿を見ることになるのか? もしそうなれば、インターネットのこれまでの機能の仕方に驚くほどの大転換が起きることになると思う」。

有料広告に関して言えば、ChatGPTの適用は依然、仮説の域を出ないが、そのはるか先にある可能性を見ている者たちもいる。たとえば、ChatGPTが商品に関するイメージやテキストを、ユーザーが知りたがっていることが何であれ、それに基づいて見せる方法を創造できるとなれば、マーケター勢は「天文学的な」額を喜んで支払うだろうと、ハミルトン氏は話す。オープンAIはさらに、検索に統合されるよりも前に、マーケター勢が高需要のキーワードに基づいてブログを書く一助になれるかもしれないと、氏は付け加えた。

「Googleが少々怖がっているのは当然だ」とハミルトン氏。「ただ、たとえGoogleが市場シェアを失うことになったとしても、それが長く続くことはないだろう」。

最大の課題は「幻覚症状」

ChatGPTはカスタマーサービスの運営にも利用できると、インターコム(Intercom)のマシンラーニング部門ディレクター、ファーガル・リード氏は指摘する。たとえば、カスタマーサービスエージェンシーが質問に対してより的確に回答したり、より創造的なかたちで回答したりするための手助けもできるだろうと、氏は見ている。

同社はChatGPTを利用しない独自のボット技術を開発している。ただ、自社ボットの開発に際し直面している最大の課題は、氏が「幻覚症状」と表現するものであり、それは、AIがふさわしい答えを見つけられない場合、もっともらしく聞こえる/見えるが、正解ではないかもしれないものを無理やり思いつこうとする際に生じるという。

「本物の魔法は、我々がそこに常に目を向け、どんな能力が新しいのか、再評価を欠かさないことで生まれる」とリード氏。「しかし、我々はすぐに慣れてしまい、たんなる構成要素のひとつと見なしてしまう(中略)。それのどこが真に素晴らしいのか、その本当の強みはどこなのか、常に学ぶことが求められる」。

オープンAIの統合はビングやOffice 365の製品群といった多様なプラットフォームにおいて、マイクロソフトに新たな優位性を付与する可能性があると、デザイン会社ワークアンドコー(Work & Co)のパートナー、オリヴァー・ドーア氏は指摘する。そして、現在はまだ初期段階だが、ジェネレーティブAIはこの先も残るだろうし、進化と拡大が起きれば、間違いなくそうなると、話す。

とはいえ、いくつか大きな欠点もあると、ドーア氏は言い添える。たとえば、データセットは一般化され、それゆえ、特定のコンテクスト用に最適化されない――そしてそれは、場合によっては、ブランドセーフティの懸念材料になりかねない。リード氏の言う「幻覚症状」と同類と言えなくもない現象だ。

どう使えるのかを誰が判断するのか

コンテンツ創造の加速化は、誤情報の蔓延という新たな懸念も生む。有害コンテンツの検知および最小化にAIを利用する企業、スペクトラム・ラブズ(Spectrum Labs)の共同創業者兼CEOジャスティン・デイヴィス氏は、オープンAIといったオープンソースプラットフォームに関する最大の懸念のひとつは、そのツールに誰がアクセスするのか、そしてそれをどう使えるのかを誰が判断するのかだ、と話す。

「これは、どちらにも転がりうるテクノロジーだ」とデイヴィス氏。「しっかりと監視/管理していないと、つまり、正しい管理運営、方針、コンプライアンスがない状態で、そうしたツールをインターネット上の全員に、誰にでもアクセスさせると、そこから少々ややこしい事態が生じることになる」。

[原文:Marketers energized by using AI to write their copy amid Microsoft’s rumored OpenAI investment

Marty Swant(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)

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