調理器具を ファッション へと変えたグレートジョーンズ:新規顧客を獲得するためのコラボレーションとは?

DIGIDAY

カラフルなダッチオーブンやシートパンで知られる調理器具ブランド「グレートジョーンズ(Great Jones)」は、11月15日、ファッションブランド「リサ セイ ガウ(Lisa Says Gah、以下「LSG」)」とのコラボレーションアイテムを2点発売した。両ブランドが共に作り上げたのは、グレートジョーンズのダッチオーブンと、LSGのエプロンの限定版デザインだ。

2018年にグレートジョーンズを立ち上げたシエラ・ティシュガート氏は、ティーン・ヴォーグ誌の元編集者としてキャリアをスタートし、食に特化した『グラブ・ストリート(Grub Street)』で料理の世界に入った。調理器具ブランドを立ち上げてからというもの、同氏はファッションや食の業界で培った経験を組み合わせ、ブランドのスタイルの普及やマーケティングに努めてきた。グレートジョーンズのデビューの際には、「インスピレーションを与えてくれる人物」3名をウェブサイト上で取り上げ、彼らが料理する理由を掘り下げた。そのなかのひとりが、ファッションデザイナーのレイチェル・アントノフ氏だ。

ファッション界のための調理器具ブランド

以来、同ブランドはファッション関連の場にたびたび登場し、ファッション界のための調理器具ブランドとして知られるようになった。2019年9月にはエシカルファッションのブランド「ズリ(Zuri)」とコラボレートし、ダッチオーブン柄のドレスを発表。『ザ・カット(The Cut)』はこれを「もてなし上手のためのドレス」と評した。

2021年1月にはデザイナーのロージー・アスリーヌ氏とキッチンタオルでコラボレートした。「私たちはあらゆる場所からインスピレーションを得ている。そしてとても強い自己意識を持つロージーの、プリントやマキシマリズムがいつも好きだった」とティシュガード氏。二人は共通の友人を介して知り合い、アスリーヌ氏はコラボレーションに興味を持っていた。

グレートジョーンズ(写真:Liz Clayman)

ティシュガード氏はファッション、食、デザインの交差が理に適う理由を、このように語る。「私はクリエイティビティーはもちろん、実用性についても重要性を認識している。たとえば、ダッチオーブンをコンロの上に置いておくことに誇りを持つことができれば、もっとそれを使って料理をするだろう。スタイルやデザインのセンスは、人生に真の利益をもたらすことができる」。

コラボレーションの目的

コラボレーションは新しいオーディエンスへのリーチに役立つもので、それはグレートジョーンズにとっても例外ではない。ファッションブランドとのコラボレーションでは、食の世界にどっぷりと浸かっていない顧客にもリーチできた。「もちろん、食に詳しくて家庭料理を愛する、熱心なオーディエンスもいる。しかし私がファッションから食の世界に転向した頃、私は料理には詳しくなかった。部外者として入ってきた私には、率直に言うととても近寄り難く感じられたものだった」とティシュガード氏。「自分たちの世界の外」とのパートナーシップが、消費者をワクワクさせることができると語る。また、これまでフードメディアの話題から取り残されてきた人々に、料理への興味を持ってもらうための方法でもあるという。

LSGとのコラボレーションは、まず3月にLSG側からグレートジョーンズ側にメールでアプローチがあった。「とてもうれしいメールを受け取った。私は長いあいだ、楽しげで面白いファッションの最前線にいたLSGが好きだった」とティシュガード氏。グレートジョーンズはダッチオーブンを一種のキャンバスとして提供し、LSGがここに絵筆をとるとしたらどうなるかと尋ねた。そして、「1960年代に着想を得たアルパイン・シックとアプレ・スキー」と双方が説明するデザインに、一緒に取り組んだ。

LSGもグレートジョーンズのように、志を同じくするブランドとのコラボレーションに関しては経験が豊富だ。2022年だけでも、LSGはヴァンズ(Vans)や、ポートランドに本拠を置くラウンジウェアと下着のブランド「アーク(Arq)」とコラボレートしている。「自分たちが属するのとは別のカテゴリーに参入したい」と語るのは、LSG創設者のリサ・ビューラー氏。LSGには熱狂的なファンがいる。強力なコミュニティーやファンがいるブランドと提携するのは楽しいものだ。しかしパートナーシップの成否は、ブランドの「うまくかみ合わせる能力」によって決まると同氏は付け加える。「異なる視点を持つ者たちが一緒になるということは、本当に特別なことだ」。

LSGの2022年夏の既製服コレクションは「イタリアン・サマー」と呼ばれ、トマトやバゲットなど食べ物がプリントされていた。「人々が気に入ってくれたので、『調理器具ブランドとタッグを組むのはどれほど楽しいだろう?』と考えた」とビューラー氏。「そしてグレートジョーンズには素晴らしい美学と、高品質な製品がある」。

両ブランドは、人々が通常よりも料理をする機会が増えるホリデーシーズンに、ローンチ時期を設定した。だが一年中棚に置いておくことができるよう、デザインは季節を問わないものにしたとビューラー氏は語る。

キッチンを幸せな場所にするために

グレートジョーンズは、コラボレーション商品であるダッチオーブン(190ドル、約26,000円)とダッチベビー(150ドル、約21,000円)をサイト上で発売し、どちらも週末で完売した。一方のLSGは、これらのダッチオーブンや、その他のコラボレーションコレクションを実店舗(11月初めにロサンゼルスにオープン)で販売。下の写真は、ビューラー氏が手掛けた店頭ディスプレイだ。エプロンはLSGのサイトにて、クラシカルなダッチオーブンダッチベビーはグレートジョーンズのサイトにて、引き続き購入できる。

「私たちはエプロンを作ったことはなかったが、ずっと作りたいと思っていた」とティシュガード氏。とはいえ、他のどんなエプロンとも一線を画したものにしたかったという。そこでグレートジョーンズとLSGが作ったのは、パーティードレスの気分を味わえる、装飾を施した「パーティーエプロン」だ。

とりわけパンデミックによって人々が家で過ごす時間が増える中で、「キッチンを幸せな場所にする方法とは?」は、グレートジョーンズが常に問い続け、フォーカスし続けてきた核心の部分だ。この問いへの答えが、今回のコラボレーションで出たとティシュガード氏は話す。

[原文:How Great Jones made its cookware a fashion statement

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)

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