単語の検索件数が前年比40%増という「デュープ」:インフレでより需要が高まる

DIGIDAY

Glossyではファッションとビューティ業界がどのように潜在的な不況に備えるかについての記事をシリーズで掲載している。

ここ40年間でもっとも高水準のインフレによって、ガソリンや食料品など必需品の価格が高騰している。そのため多くの消費者が、憧れの美容製品の廉価な代替品を探し求めている。

グーグルがマーケティングに役立つ情報を提供するプラットフォーム「Think with Google」のデータによると、世界全体で6月の「デュープ(dupe:高額商品と同様の効果を低価格で得られる商品のこと)」という単語の検索件数が前年比で40%増加したほか、価格を意識した複数のワードで検索件数が大幅に上昇した。高級な美容製品を代替する手頃なデュープは、美容インフルエンサーに長らく愛されてきたテーマだが、特にTikTokで両者を簡単に比較する動画が話題となっている。

「消費者たちの言うところによると、インフレのため、より手頃に入手できる代替品を探し求めている」と、ブランデファイ(Brandefy)を立ち上げたメグ・プライド氏は語る。ブランデファイは、高級な美容商品とそれに類似したマスブランドの商品とを並べて比較できるアプリだ。「節約する方法を見つけようと消費者が一生懸命努力していることから、コミュニティメンバーあたりの検索数は大幅に増加している」。それぞれの比較ページでは、色、経過時間、仕上がり、成分、安定性などの要素に基づいた「類似スコア」を掲載している。

調査会社ハリス・ポール(Harris Poll)の4月のリサーチデータによると、米国人の84%がインフレのために支出を削減する予定で、とくに最大の削減対象となっているのが、「レストラン」や「衝動買い」といった裁量的支出だ。オンラインショッピングに関しては、お得な情報を探す検索ワードが使われることが多くなった。グーグルのデータによると、「デュープ」のほかには「buy 1 get 1(一つ買うともう一つ無料に)」の検索件数が前年比で60%増加し、プロモーションコードの検索は2倍になっている。

「消費者は一般的に、インフレのなかで支出を意図的かつ慎重に行おうと考えている」と語るのは、カラー・ポップ(ColourPop)やソル(Sol)の親会社であるシード・ビューティ(Seed Beauty)でマーケティング担当バイスプレジデントを務めるブライアン・マードック氏だ。

ソルが15ドル(約2,100円)で販売する「フェイス&ボディ・ブロンジング・バーム(Face & Body Bronzing Balm)」は、TikTokの美容インフルエンサーであるミカイラ・ノゲイラ氏が2020年に取り上げたことがきっかけで、シャネル(Chanel)の50ドル(約6,900円)の「ソレイユ・タン・ブロンジジング・ベース(Soleil Tan Bronzing Base)」のデュープとしての地位を獲得した。ノゲイラ氏はこれまでも手頃な価格のデュープについて定期的に動画を作成しており、さまざまな商品が売り切れ状態になってきた。

「ミカイラ・ノゲイラ氏がソルのバームについて投稿したとき、急速に燃え広がる炎のように話題が拡散していくのを目の当たりにした」とマードック氏。商品がTikTok上でデュープとして話題になると「サイトのトラフィックが増加し、続いて売り上げも増加した」と振り返る。「これらのインサイトやハックを発見し、シェアしてくれる素晴らしいインフルエンサーのコミュニティにとても感謝している」。

美容系インフルエンサーは、デュープの人気の原動力となっている。とくにTikTokでは、ハッシュタグ「#dupes」の視聴回数は14億回に到達した。

ロッティー・ロンドン(Lottie London)はソーシャルチャネルにて、インフルエンサーが商品を紹介した動画をリポスト(再投稿)している。今年3月には、同ブランドから10ドル(約1,400円)で販売している「ダイヤモンド・バウンス・ハイライター(Diamond Bounce Highlighter)」を、フェンティの40ドル(約5,500円)の「ダイヤモンド・ボム・ハイライター(Diamond Bomb Highlighter)の代替品として、「#dupe」「#fentydupe」といったハッシュタグを使ってリポストした。

「私たちの商品開発チームは非常に機敏で、ソーシャルメディアでのトレンドに対応することができる」とロッティー・ロンドンのマーケティングディレクター、ノラ・ズカウスカイテ氏は語る。たとえば同ブランドが6.95ドル(約950円)で販売する「オイル・スリック・リップ(Oil Slick Lip)」は、今年1月にTikTokで話題を集めたディオール(Dior)の「アディクト・リップ・グロウ・オイル(Addict Lip Glow Oil)」のデュープとして、TikTokやメディアで取り上げられている。

TikTokの美容トレンドがデュープの人気に火をつけることもよくある。クリニーク(Clinique)から20ドル(約2,700円)で販売されている「オールモスト・リップスティック(Almost Lipstick)」のブラックハニー色が2021年8月にTikTokで話題になり、e.l.f.ビューティ(e.l.f. Beauty)が7ドル(約960円)で販売する類似した商品「ハイドレーティング・コア・リップ・シャイン(Hydrating Core Lip Shine)」のエクスタティックという色が、デュープとして注目を集めた。スペート(Spate)がまとめた美容系デュープのグーグルでの検索件数トップ10リスト(2022年6月)において、クリニークのブラックハニーはトップに立った。

「私たちのコミュニティがe.l.f.の商品との比較をシェアしている。高価格帯の競合商品と比較されているのを見るのが大好きだ」と語るのは、e.l.f.ビューティの最高ブランド責任者であるローリー・ラム氏だ。同ブランドのラインナップには、デュープとして知られる商品がいくつもある。2019年にソーシャルニュースサイト「レディット(Reddit)」で美容系のインフルエンサーが、6ドル(約820円)の「16HRカモ・コンシーラー(16HR Camo Concealer)」はタルト(Tarte)の27ドル(約3,700円)の「シェイプ・テープ(Shape Tape)」のデュープだと紹介した。以来、価格が重視される現在まで商品は注目され続け、両者を比較するサイトはブランデファイでも頻繁に検索されている。

オンラインで「デュープ」というコンセプトを力強く推進するカテゴリーのひとつが、美容だ。例を挙げると、先述したグーグルでのデュープの検索件数ランクで美容カテゴリー2位のダイソン(Dyson)「エアラップ(AirWrap)」は、レストレーション・ハードウェア(Restoration Hardware)のソファー「クラウド(Cloud)」などがランクインする全カテゴリーにおいても上位に食い込んでいる。

ファンデーションのように顧客のロイヤルティが高いことで知られるカテゴリーでも、安価なオプションの検索は増えている。プライド氏によると、ブランデファイでのファンデーションの検索数が増えており、2022年にはトップカテゴリーになった。

プレミアムブランドやラグジュアリーブランドは長らく、TikTokにあふれるデュープの情報に嫌悪感を示してきた。知的財産の侵害に関わるようなケースでは、なおさらだった。

しかし、インフルエンサーが商品の長所や短所、そしてラグジュアリー版の方が高額である理由について詳しく説明していることから、消費者は商品間の違いを調べて見極めることに精通していると専門家たちは信じている。

「全く同じ商品は、ふたつとない。顧客はますますスマートになっており、自分たちにとって本当に必要なものを理解しようとしているだけだ」とプライド氏は話す。

[原文:Inflation is raising demand for affordable beauty dupes

LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)

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