対面式勤務 は、火曜から木曜まで ?: ハイブリッド勤務 を模索する、パブリッシャーたちの現実

DIGIDAY

オフィス出勤を再開するパブリッシャーが増え、興味深い動向が明らかになってきた。出社日を火曜から木曜のあいだに設定し、月曜と金曜は柔軟な運用をおこなう企業が多い。

スキム(theSkimm)、ペーパー・マガジン(Paper Magazine)、ヴァイス・メディアグループ(Vice Media Group)のパブリッシャー3社は、経営幹部主導で決まった勤務方針の概要を紹介した。ちなみに3社とも、出社する社員にはワクチン接種を義務づけている。こういった勤務形態を試験運用するメディア企業はほかにも出てくるとみられ、近いうちにハイブリッド勤務が標準となりそうだ。

キーポイント:

  • 一部のパブリッシャーはハイブリッド勤務体制の導入にあたり、在宅勤務日と出社日を別々に設定している。
  • スキム(theSkimm)とペーパー・マガジン(Paper Magazine)は就業日のうち、月曜と金曜をリモートワーク可能日としている。
  • ヴァイス・メディアグループ(Vice Media Group)の最高人事責任者は部下に対し、火曜と木曜に会議出席のためオフィスに出社するよう求めた。

英国のロイタージャーナリズム研究所(the Reuters Institute for the Study of Journalism)が11月11日に発表した「2021年、変化するニューススタジオ」と題するレポートによると、同研究所の調査に回答した報道業界幹部132名のうち89%が、フレキシブルなハイブリッド勤務体制への移行に真剣に取り組むと答えている。

なぜ、月曜と金曜なのか?

スキムは、2022年1月11日からハイブリッド勤務方針を導入する予定だ。正社員は月に3日、ニューヨーク市内の本社への出社を義務づけられ、本社オフィスは少なくとも半年間、月曜と金曜が休業となる。スキムの共同創業者で共同CEOのダニエル・ワイスバーグ氏によれば、社内意識調査の結果、社員は引き続きリモートワークも可能な労働形態を希望しているという。在宅勤務だと、対面会議に出席するために自分の作業を中断しなくてすむというメリットがあるためだ。

ENテック・メディア・グループ(ENTtech Media Group LLC)の創業者兼CEOのトム・フロリオ氏は、グループ傘下のペーパー・マガジンがオフィスを再開した2021年9月に、月曜と金曜はリモートワークを許可し、火曜から木曜までは出社を義務づける方針を決めた

「社員をいきなり週5日オフィスに出勤させても、あまりメリットがないだろうと考えた」と、フロリオ氏はいう。「在宅勤務日として月曜と金曜を選んだのには理由がある。出社と在宅、それぞれの勤務形態で、まとまった日数がとれるからだ」。

出社タイミングの模索は続く

ヴァイス・メディアグループが2021年10月、オフィス再開に踏み切ったとき、最高人事責任者のデイジー・オージェ=ドミンゲス氏は、ニューヨークとロサンゼルスを拠点とするスタッフに、会議出席のため火曜と木曜に出社するよう要請した。米DIGIDAY収録のポッドキャストで、11月中旬に配信したのエピソードにおいて、オージェ=ドミンゲス氏が語ったところによると、チームメンバーが集まって一緒に会議に参加し、「人とのつながりを持つ機会」を得てほしいと考えたからだという。

しかしその取り組みも、完璧というわけにはいかなかった。オージェ=ドミンゲス氏ともう1人のチームメンバーがオンライン会議の予定を何件も立て続けに入れていたため、オフィスへ移動する時間が取れなくなったことが何度かあった。そういった「成長に伴う痛み」も避けられないとオージェ=ドミンゲス氏は理解している。「我々は、スケジュール管理を支えられるよう、筋肉を鍛えなおさないといけない」。

会社側が出社を義務づける日を指定すれば、社員は確実に、同僚と対面でやりとりしながら仕事ができるようになる。曜日選択制にすると、たとえば金曜など、出社人数が少なくなる可能性がある。クォーツ(Quartz)のCEO、ザック・セワード氏によれば、同社が6月にオフィスを再開した後の1カ月間で、3分の2のスタッフの出社が水曜と木曜に集中していたことがわかったという。

「問題は、自分が火曜から木曜までオフィスに出勤しているにもかかわらず、協業する必要のある同僚が在宅勤務中で直接会えない、といった状況が生まれることだ。出社させるなら、皆が日々、チームメンバーと同じ場所で働けるようにしたい」と、ジャンヌ・マイスター氏はいう。同氏はエグゼクティブ・ネットワークス(Executive Networks)の代表取締役副社長で、人事部社員向けコミュニティ兼オンライン学習センターの役割を担うフューチャー・ワークプレイス・アカデミー(Future Workplace Academy)の創設者でもある。「せっかくオフィスへ出てきたのにオンライン会議ばかりという働き方は望ましくない」とマイスター氏はつけ加えた。

成否を決めるのは「企業文化」

出社勤務について、フロリオ氏、オージェ=ドミンゲス氏、ワイスバーグ氏の3人は共通の認識を持っている。社員に対面で仕事をさせる狙いは、独創性やイノベーションを促し、人とのつながりを深め、話し合いやすい環境を作るためだという。オージェ=ドミンゲス氏は、オフィスで働く社員と直接話ができる便利さを語った。「その場で質問できるのでミーティングを設定する必要がなく、効率的でありがたい」。

チーム主導の手法は、ハイブリッド勤務を導入するメディア企業におけるトレンドになりつつあるようだ。スキムの社員は、今後、上司との話し合いを通じて出社日を調整することになっている。そして、オージェ=ドミンゲス氏は週に2日、チーム内の対面会議のためにオフィスに出勤するようメンバーに指示した。一方、フロリオ氏率いるペーパー・マガジンでは、火曜、水曜、木曜の出社方針を決めている。

一部の企業は、職務上、どのチームが出社勤務に適しているか、同時に出社させるべき関連部門はどこかを見いだそうと奮闘している。コンサルティング会社のPwC(プライスウォーターハウスクーパース)で人事・組織部門の人員配置戦略パートナーをつとめるジュリア・ラム氏によると、「複雑なジグソーパズルを組み立てるような」プロセスだという。コロナ禍で人員配置転換に注力してきたラム氏は、しかるべきチームが一緒に働ける職場を実現する簡単な方法は、同じ曜日に全社員がオフィスに出勤する方針の適用だといい、「それで、火曜・水曜・木曜出社のモデルを採用した」と述べた。「メディア業界はいま、出社と在宅勤務を併用しながら休みを確保するフレキシブルな体制を受け入れつつあるようだ」。

就業日のうち一部について、社員の希望に応じて融通のきくハイブリッド勤務方針をとる企業もあるが、そういった方針は、企業文化をめぐる経営幹部の懸念をやわらげるためでもあるとラム氏は述べている。2021年8月に発表されたPwCの調査報告書によれば、経営幹部の認識では、ハイブリッド勤務モデルの成功を左右する最大の課題は企業文化だという。

「社員の意見に耳を傾ける必要も」

一方、メディア企業の経営陣は、出社義務づけに対する反発にも備えなくてはならない。最近では、コンデナスト(Condé Nast Publications)が発行する「ニューヨーカー(The New Yorker)」における編集部門の労働組合が、出社命令が協約違反であるとして重大な懸念を表明した事例や、ハースト・コミュニケーション(Hearst Communications)の雑誌編集部門の社員による抗議の事例がある。個人の業務に合わせた労働形態への移行を求める社員から、出社日交渉の要請があった場合も、人事部としては冷静に対応すべきだと、エグゼクティブ・ネットワークスのマイスター氏は述べている。

「いまは、試行錯誤の段階だ」とマイスター氏はいう。「会社側がルールを決めて指示するよりも、どんな勤務体制がうまく機能するかを見いだすため、これからも社員の意見に耳を傾ける必要がある」。

[原文:Media Briefing: Publishers are adopting a Tuesday-Thursday in-person workweek

Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:小玉明依)

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