「世界的な インフレ の圧力の影響を受けずにいられない」:オラプレックスCEOジュイ・ウォン氏

DIGIDAY

ヘアケアカテゴリー全体の売上高の伸びを上回っているオラプレックスだが、その勢いは衰えることを知らない。2022年第2四半期、同社の純売上高は38.6%増で、3つの販売チャネルすべてが2桁の伸びを記録した。中国での売上状況も右肩上がりだ。米Glossyは同社のCEOであるジュイ・ウォン氏に話を聞いた。

ヘアケアカテゴリー全体の売上高の伸びを上回っているオラプレックス(Olaplex)だが、その勢いは衰えることを知らない。

2022年第2四半期、オラプレックスの純売上高は38.6%増の2億1090万ドル(約281億2000万円)で、3つの販売チャネルすべてが2桁の伸びを記録した。ヘアケアカテゴリーは数四半期連続で好調であり、オラプレックスがその牽引役となっている。NPDのデータによると、オラプレックスの2022年第2四半期の売上は前年同期比54%増となった。一方、米国のプレステージヘアケアカテゴリー全体の売上は、同期間に24%増加している。その結果、ハロー効果が生まれ、オラプレックスは第2四半期を1億9800万ドル(約264億円)の現金および現金同等物で終え、自社への投資や他社買収のための潤沢な軍資金を手に入れたことになる。

この1年間、オラプレックスは米国および海外の販売網の拡大や、技術やデジタル戦略への投資に力を注いできた。2021年12月、オラプレックスはセフォラ(Sephora)以外にも販路を拡大し、米国の小売店との提携にアルタビューティ(Ulta Beauty)を加えている。そして同ブランドは、製品発売の発表や教育コンテンツを毎月のキャンペーンで宣伝するために、AIによるバーチャルチームメンバーとなるカイ(Kai)を5月にオンライン上にローンチした。

米Glossyでは、8月16日に行われた同ブランドの決算説明会に先立ち、オラプレックスのCEOであるジュイ・ウォン氏に話を聞いた。以下、インタビューの抜粋をわかりやすくするために軽く編集して紹介する。

ーー2桁、3桁の売上成長を続けるには、どのくらいのランウェイ(資金的に余裕のある期間)があるか。

「当社は美容のなかでもっとも成長の速いカテゴリーに参加している。それは、このカテゴリー自体のランウェイが非常に大きいことを示唆している。そして我々にはファーストムーバーであるというアドバンテージがある。もし私たちがすでに20年の歴史あるブランドで、すべての主要な市場で成熟していたとしたら、おそらく(成長は)難しかったと言えるだろう。だが当社はまだ設立8年目であり、海外での売上はたった39%だ。ほんの2年前に中国に拡大したばかりだが、いまでは中国本土を含むTモールグローバル(天猫国際、TMall Global)で、ヘアケアブランドの1位、ブランド全体では12位となっている」。

ーー中国はトゥーフェイスド(Too Faced)やグラムグロウ(Glamglow)といったブランドが撤退し、厳しい市場であることが証明されている。オラプレックスはどのような戦略をとっているのか?

「デジタルチャネルが、美容、特にヘアケアの消費者が選ぶチャネルとなっている。人々は購入する前にリサーチをして、製品を理解したいと考えている。中国では多くの人が国境を越えて買い物をしており、デジタル経由の売上は中国における美容製品の売上の15%となっている。中国政府は本土での製品の販売前に動物実験を義務付けており、越境で購入される場合はブランドは動物実験をする必要がない。(越境で)買い物をする際は、人々は中国本土にないブランドを探索し、さらにリサーチしたいと思うようになる。Tモールにおける私たちの戦略は、製品を売ることに関してだけでなく、マーケティングについてや、人々に共感される適切な存在になることに関したものとなっている。いずれ動物実験の政策が緩和されれば、実店舗に向けた準備も整うだろう。当社は中国のセフォラで『エクスペリエンス』ブランドとして存在しているが、つまりこれは人々が製品に触れたり試したりすることはできるが、購入することはできない、ということを意味している。

オンラインでのブランド体験に期待する方法という点で、中国の消費者は欧米の消費者を追い抜いている。(米国では)ブランドはインスタグラムやFacebookで時々ライブストリーミングを行うだけだが、Tモールでは24時間ライブストリーミングだ。私たちは自社サイトでのライブストリーミングを開始した。最初の数週間は、コンバージョン率が80%、平均注文額が15%アップした。サイトではさまざまな主要なオピニオンリーダーとともに絶えずライブストリーミングを行っている」。

ーー現在の不況とインフレをどのように乗り切っているか?

「世界的なインフレ圧力やマクロ経済、地政学的な状況から、私たちはもちろん、ヘアケアカテゴリーも影響を受けずにいられない。とはいえ、当社の在庫水準はいまも健全であり、そのおかげで輸送時間の延長や、製品部品や原材料の出荷の遅れを補うことができている。需要に応えることができるのは、サプライチェーンに関してまだ懸念があるからだ。ほかに懸念しているのは顧客のこと、顧客がどのように自分たちの経済状況について感じているかという点だ。2ドル(約266円)の値上げをしたとき、私たちはプレステージにおいて購入しやすいエントリーレベルの価格帯を維持することができた。プレステージビューティとは、消費者がどう感じているかに応じて価格が上下するが、消費者が美容製品の利用をやめることは決してない。問題は、消費者がどこに向かっているのかということだ。厳しい時代にエントリーレベルの価格帯であれば、より高い価格帯の顧客を引き付け、(当社の製品に)移行させることができると考えている。これは厳しい時期に新規顧客を獲得するための優れた方法だ。平均世帯収入が約9万5000ドル(約1265万円)に対し、当社の顧客の平均世帯収入は10万4000ドル(約1385万円)となっている」。

ーー買収はまったく考えていないのか?

「当社には資金力があり、高成長である。だが私たちが注力したいのは、技術への投資だ。技術や技術力に投資することが(社の成長を)もっとも加速させることができる」。

[原文:Olaplex CEO JuE Wong: ‘We are not immune to global inflation pressures’]

EMMA SANDLER(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)


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