下着ブランドの アドアミー 、ライブコマース活用までの紆余曲折:「よりカジュアルである方が共感を呼ぶ」

DIGIDAY

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ここ数年間において、ローカル企業やD2Cブランド、ウォルマート(Walmart)やペトコ(Petco)などの大手小売業者まで、多くの小売企業がライブストリームコマースを実験してきた。しかし、ライブストリームは活用が難しいメディアであることが明らかになってきた。ライブショッピング体験を社内で作り上げるために多くの苦難を経験したブランドのひとつが、ランジェリーブランドのアドアミー(Adore Me)だ。

同社は、業界全体にわたって閲覧者の数が増え続けているのに後押しされ、昨年秋にはじめてこのコンセプトをテストした。しかしこの1年で同社は戦略を変更した。大手ストリーミングパートナーとの提携による、注目を引く高価なライブイベントから手を引き、その代わりに、ベンダーであるキャースト(Caast)が提供する、自社プラットフォームでのライブショッピングイベントの開催に重点を置くようになった。アドアミーは、これらのイベントをブライダルコレクションや水着など、大きなショッピングイベントや季節のテーマと組み合わせることが多く、セッションは平均視聴者数は7万人にのぼっている。

過剰に作り込まれたショーでは成果を得にくい

アドアミーが最初に動画コマースを試みたのは2021年9月のことで、サードパーティーアプリ上の体裁のよいセットとスクリプトを使用したものだった。昨年秋を通して、同社はQVCのホストを招き、NBCユニバーサル(NBC Universal)との協力による全国放送番組、およびFacebookがインスタグラムライブで企画した共同ブランドの取り組みなどを実験的に実施してきた。

その一例が、アドアミーとNBCシーユニバーサルと行なったブラックフライデー(Black Friday)のショッピングイベントで、ストリーミングサービスのピーコック(Peacock)で放映され、同ネットワークのほかのストリーミングチャネル全体でも拡散されたものだ。このイベントにはさまざまなホリデーギフトアイテムが用意され、ファッションブロガーがホスト役を務めた。

このパートナーシップは、ライブストリームの分野をテストするには適切な方法だったが、同社が期待していたような大きな成功ではなかったと、アドアミーの戦略担当バイスプレジデントを務めるランジャン・ロイ氏は語る。「最初のライブショーは視聴者数が約2万5000人で、あまり多くの売上につながらなかった」と同氏は説明する。

その後、同社は2022年1月に自社ウェブサイトで別のショーを開催し、インスタグラムライブで拡散した。ここでは約3万人の視聴者を得るなどそこそこ良い結果をおさめた。この試みから、この形式にはゆっくり着実なアプローチと、多くの試行錯誤が必要なことが証明された。

この経験から、同社のマーケティングチームは、無駄を省いたよりシンプルな方法でこのコンセプトのテストを続けることにした。「我々は、過剰に作り込まれたショーは当社の視聴者にうまく訴求せず、若い視聴者には、よりカジュアルな設定のほうが共感を呼ぶことを学んだ」と、ロイ氏は述べている。たとえば、同社はプロ向けのスタジオを使用せず、アドアミー店舗内で撮影を行い、自社の従業員が商品について語ることにした。

この方向転換以来、ライブショッピングのセッション(すべて自社ウェブサイトで配信されたもの)は、プロモーションコードによってトラッキングされた売上が3100%も増加し、現在では平均視聴者数が7万人に達している。同時に、最新のショーであり、今年初めに開催したバレンタインデーのライブショッピングイベントでは、制作コストを80%も削減することができた。

現在、アドアミーはライブセッション、特にカートでの購入に関して「強いリップル効果」を確認していると、ロイ氏は述べている。「ライブショーを視聴し、あとからショッピングを行う買い物客が220%も増えている。これは、視聴者がそのときに購入しなくても、そのあと5日間以内に買い物をする可能性が高いことを意味している」。

コンテンツの再活用

このような実験を通して、同社はいくつかの新たな教訓を学んだと、ロイ氏は語る。

アドアミーのマーケティングチームがこの6〜8カ月で得たもっとも大きな教訓は、ライブイベントを大型連休や独自の「ショッピングイベント」に結び付ける必要があるということだと、ロイ氏は説明する。「これにより、顧客は緊急性を感じ、商品を選んでチェックアウトするようになる」と同氏は述べている。

たとえば、配送の締め切りを設けたり、限定版コレクションを作ることなどが挙げられる。アドアミーは今年、そのほかの効果的な戦術として、独自のクーポンコードを提供することで、利用を促進し、コンバージョン率のトラッキングが可能になったと、ロイ氏は述べている。

同社は今後、ソーシャルメディアのフォロワーと、自社ブランドの顧客を対象としたライブショッピング体験を組み合わせることに集中する可能性が高いと、ロイ氏は語る。しかし、同ブランドは自社サイトを引き続き利用し、時には各種のストリーミングサービスも使用するだろう。これらは、新規ユーザーを獲得できるような、ほかのプラットフォームでの分散型チャンネルも用意する予定だ。「たとえば、Amazon Liveのような、新しい視聴者を対象にした、さまざまなプラットフォームを検討している」。

「優れたメディアを作ることは、それだけでも困難であるため、メディアとコマースを組み合わせることはさらに困難な課題だと理解したうえで、自社のライブショッピングへの取り組みを開始した」と、同氏は述べている。これまでに予想外だったことは、平均的な消費者は動画を見ながら買い物をするというアイデアをほとんど知らないこと、そして、すべてのライブストリームには、配信が終了したあとも長時間にわたって利益が残るという2点だという。

そこで、投資効果を最大化するために、コンテンツの再活用が優先事項となった。アドアミーはライブショーを自社サイトのホームページで再生し、元の映像を配信した。顧客はライブでの割引やバーチャルな交流を受けることはできないが、そのコンセプトを理解して、次回のライブに参加するようになる。

さらに、ライブショーに必要な商品のストーリーテリングの部分、つまり、リアルタイムでのインタラクションにおいて情緒的な部分と実践的な部分を組み合わせることは、「ウェブサイトのコピーやほかの形式の動画など、商品のコンテンツをあらゆる媒体向けに改良するのに非常に役立った」と、ロイ氏は述べている。

有力な収益源にしていくには?

顧客体験最適化プラットフォームのダイナミックイールド(Dynamic Yield)でCMOを務めるヤニフ・ナボット氏は、米国をベースとするブランドは、中国のような市場ではすでに長く人気を博してきたトレンドを導入することを依然として学んでいる段階だと語る。「自社のライブストリームの出力を最大化することを求めている企業にとって大きな機会のひとつは、総合的な商品の発見に関するものだ」と同氏は述べている。同氏は、多くのブランドは通常、イベントの一部として特集される、一定数の商品へのリンクしか貼っていないと説明する。

しかし、顧客がお気に入りのブランドのストリーミングセッションと交流することに慣れてくると、企業はより革新的な商品の紹介方法を提供する必要があるだろう。「たとえば、それぞれの買い物客の購入履歴に応じてカスタマイズされた別の商品を、複数のタブで提示するなどだ」と同氏は述べている。このような段階的な投資は、イベント体験の継続的な改善とともに、「長期的にはライブストリーミングを重要な収益源に変えることができる」。

アドアミーは次に、自社のクリエイターのプログラムや、そのほかの厳選されたインフルエンサーをショーに取り入れたいとロイ氏は述べている。「ライブショッピングはプレゼンターと視聴者のあいだの結びつきと信頼が重要であり、これは我々のような小規模で結びつきの強いコミュニティでうまく機能するだろう」と同氏は述べている。

また同社は、ライブ配信の視聴者を取り込むために、限定版のランジェリーコレクションを制作している最中であるとロイ氏は述べている。「世界が再開していくなかで、我々は人々が視聴する理由を提供しなければならない」。

[原文:How Adore Me is experimenting with livestream commerce]

Gabriela Barkho(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Adore Me

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