ロサンゼルス・タイムズが SNS コンテンツ制作チームに投資する理由:「積極的に関わり合うコミュニティを創りたい」

DIGIDAY

米新聞大手ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times、以下LAタイムズ/タイムズ)はインスタグラムおよびTikTok用コンテンツ制作専任の6人からなるチームを結成した。404と名付けられたこのチームには、コンテンツクリエイター、アーティスト、映像作家、ライターのほか、パペッター(操り人形師)も参加している。これにより、同社のオーディエンスにはおそらく含まれなかった、若く多様な層の獲得を目指すという。

ただ、404の最終目標はLAタイムズのジャーナリズムを広めることでも、自社サイトへのリンクバックでもなければ、自社サイト用のコンテンツ制作でもない。その最大の使命は「タイムズを定期購読していない、タイムズのことを知らない、LAに暮らす」人々へのリーチであり、それはすなわち「若者や有色人種、そして普段からニュースをソーシャルメディアから得ている人々」だと、同紙のオーディエンス部門アシスタントマネージングエディターで、404を監督するサマンサ・メルボーンウィーバー氏は話す。

それはつまり「おそらくは30代から40代の、ある程度落ち着いたデジタルファーストな消費者」と、「オンラインで極めて多くの時間を過ごす、大学生を含めた若い世代」の融合体だと、同紙初のクリエイターコンテンツ部門長で、404のチームリーダー、アンジー・ジェイミー氏は話す。彼らはいわゆる「コードカッター(ケーブル/衛星TVからネット視聴に完全に切り替えた人々)で、デジタルオーディオリスナーであり、メディアをほぼすべてオンラインかモバイルで消費している」。

ほぼ全員が新規採用のフルタイム社員からなる404のメンバーがフォーカスするのは、インスタグラムおよびTikTok用コンテンツの主に4つのカテゴリーだと、ジェイミー氏は話す。動画(TikTok、リール、ミニドキュメンタリー)、イメージ(ミーム、イラスト、コミック)、クリエイター同士によるコラボ(LA在住のライター、俳優、エディター、ミュージシャン、アーティストによる共同制作コンテンツ)、新進プラットフォーム(ARおよびVR、オーディオおよびライブストリーム)の4つであり、コンテンツはTikTokに1日1回(1日3回まで増やすのが目標)、インスタグラムに1日3回投稿される。

結成から2週間現在、404のIGアカウントのフォロワー数は1700人強。TikTokチャンネルはそれをはるかに上回っており、フォロワー数25万人強、「いいね」は360万回を数える(ただし、TikTokはLAタイムズの既存チャンネルをそのまま使用しているため、実際の数字はその一部と思われる)。

発言は編集し、端的にまとめてある。

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――チーム404の主な目標は?

ジェイミー氏:我々はいま、熱意に溢れる、積極的に関わり合うコミュニティを創ろうとしている。リール、イラスト、コミック、TikTokなど、このようなストーリーテリングの形態は、招待状だ。目標はまず何と言っても、我々が発信するニュースを消費してもらうこと、もしくは我々が創造するコンテンツを消費してもらうこと。それともちろん、もっと深く入り込み、さらに多くを知ってもらいたいし、LAタイムズが行なっている類の仕事にもっと親しんでもらいたい。だからこそ、従来のメディアでは取り上げられることの少なかった、あるいは従来のメディアでは誤った方法で取り上げられてきた人々のためのスペースを創りたい。

――LAタイムズというブランドを考え、ニュース編集室の一般的なジャーナリズムと404特有の軽さとのバランスは、どう取っていくのか?

メルボーンウィーバー氏:404の役割は、言うなれば、社説漫画という伝統的なページに似ている。実際、我々は自らをそう見ている。そして、我々が絶対的信頼を寄せる、真に重要な仕事をしている素晴らしいジャーナリストたちの情報にしっかりと基づいていると。同時に、404はそうした新聞コンテンツの制作に一切関わっていない、完全に別個のチームでもある。だからこそ、第三者の視線でそうした新聞コンテンツにコメントをし、我々が気にかけるオーディエンスがそれについてどう思っているのか、いわゆるバイブスチェック(気持/気分の確認)をしていく。我々のオーディエンスは従来の新聞購読層とは少々異なっており、そんな人々の思考や感情、物事に対する反応を反映させるために、このチームは存在している。

――つまりこれはLAタイムズに馴染みのある人々に向けたものでも、定期購読者に向けたものでもないのか?

ジェイミー氏:我々のコンテンツは独立型の、完全オリジナルを目指している。つまり、タイムズの熟練した、才能豊かなコアソーシャルチームの仕事とはまったくの別物であり、後者はトラフィック、認知度、ダイレクトリンク数の効果的かつ効率的な向上を目指している。一方、我々の包括的目標はコミュニティの構築であり、ソーシャルファーストコンテンツを通じてオーディエンスにリーチすることで、認知度を高め、基盤を固めることにある。それによるハロー効果は、我々のクリエイターコミュニティだけでなく、タイムズブランド全体にも及ぶと確信している。

メルボーンウィーバー氏:我々が心から期待するのは、たとえば誰かが404が制作したコンテンツを見て、「これってLAタイムズのものなの? すごい、超格好いい」と思ってくれる、そんな変化だ。そして願わくは、そういう人たちがその後、LAタイムズがつぶやいた、たとえば合衆国最高裁判所の裁定に関するツイートを見た際に、こう思ってくれると嬉しい――「これは信用できるし素晴らしい。だってこの前、LAタイムズの違うチームが投稿した別のコンテンツを見たんだけど、それは読者のことをちゃんと見てくれていると、実感できるものだったから」と。

――チーム404はLAタイムズの他チームと共同でコンテンツ制作にあたっているのか?

ジェイミー氏:さしあたりいまは、自分たちの存在感、自分たちの声、自分たちの色の確立に集中している。つまり、少なくともスタート直後の現在は、独立独歩の形をとっている。では、ニュース編集室の他のスタッフや、あるいはその主要メンバー以外のチームとのコラボレーションを育んでいく未来はあるのか? 答えは、もちろんだ。ただしまずは、足元を固め、自らの地位を確立するところから始める。外に手を伸ばすのはそれからだ。

メルボーンウィーバー氏:いま現在、クロスプロモーションやベストプラクティス(成功事例)の共有について、ソーシャルチームと話している。タイムズにはライフスタイルファッション誌もあるが、このチームを私はそれと同じような存在と見ている。ニュース編集室の人々にこのチームについて説明して回るのは、本当に楽しい――チーム404はソーシャルエディターじゃないんだ、ソーシャルコンテンツを作っているんだと。

――404は今後、外部クリエイターと共同でコンテンツ制作にあたっていくのか?

メルボーンウィーバー氏:外部クリエイターにはぜひ、我々のフィードに加わってもらいたい。LA中のあらゆる類のクリエイターおよび制作者に、成長し、自分という存在を示すことのできるスペースを提供したい。今後そうしたことについては、なおいっそう力を入れていきたいと考えている。

ジェイミー氏:クリエイターコンテンツ部門のトップとして、私が担う役割のひとつが、外部とのクリエイティブな関係の育成および促進だ。LAで暮らし、仕事をし、コンテンツ制作に従事するクリエイターたちとの相互的関係の確立。それもまた、私にとっては極めて重要なことだ。世間から孤立し、自分たちだけの殻に閉じこもるつもりはない。人々を招き入れ、彼ら独自のストーリーテリングにおけるコラボレーションや参加を促していく。それは、ストーリーテリングを共に行なうという共有された体験であり、トップダウンや外部発注の対極にある。これは実際どこのニュース編集室にとっても、特にタイムズにとっては非常に大きな機会になると、私は確信している。404はまさしく、こうした関係を民主化し、体験の共有化を象徴している。

――そうした外部クリエイターに謝礼は?

ジェイミー氏:もちろん。具体的な額などは、いま話を詰めているところだ。しかし言うまでもなく、我々のチームに貢献してくれたことに対して正当なかたちでクリエイターたちに報いるのは、極めて重要なことだ。

――404のコンテンツにスポンサーを付ける予定は?

メルボーンウィーバー氏:エンターテイメント分野では、我々が実施する多くのイベントやアクティベーションにスポンサーを付けている。映画フェスやそういった類のことだ。したがって、404にも同様のモデルは構想として描けるし、リアル(現実)の場で行なうことについては、特にそう言える。ただ、そのあたりについてはまだ、本腰を入れて話してはいない。まずは我々が基盤を築き、オーディエンスのことをもっとよく知っていくなかで、骨組みを固めることが必要だが、いずれにせよ、そうした未来の可能性はもちろん積極的に受け入れる。

――あなた方の目指すものが定期購読者や自社サイトへのトラフィック増でないのなら、チーム404の成功の尺度とは?

ジェイミー氏:メトリックスに関して言うと、我々にとっての最重要は認知度だ。リーチやインプレッションといったメトリックスであり、フォロワー数ではない。我々はあくまで、人々にこのコンテンツをオーガニックに認識してもらいたい。2番目に重要視しているメトリックスがエンゲージメント率だ。ただしそれは、「いいね」やコメントといったものだけではなく、人々の共感度を明確に示す「シェア」などにも注目している。

[原文:Why the Los Angeles Times is investing in a social media content creation team
Sara Guaglione(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)

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