大きいサイズの紳士服D2C「グッドカウンセル」、サブスクリプション 型から買い切り型へ転換

DIGIDAY

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Mから8XLサイズまで揃えた紳士服ブランド「グッドカウンセル(Good Counsel)」は、初の完全なeコマースサイトを立ち上げ、自社ビジネスを一新しようとしている。

同社は何年にもわたり、サブスクリプションだけでビジネスを行ってきた。顧客は毎月30ドル(約4170円)を支払い、Tシャツやジャケットなどの厳選された商品が入った箱を受け取り、購入前に試着できる。現在は、単品での購入はもちろん、洋服のコーディネート一式を買い揃えられる「ショップ・ア・ルック」もあり、ファンも増えている。

同社が設立するウェブサイトでは、ベーシックなメンズウェアを取り扱う。最初はスウェットスーツやチノパンなどを販売し、Tシャツや、デニム、リネンなども近日中に追加する。新しいコレクションを毎週または1週間おきに発売するドロップモデルを採用する予定だ。また、サブスクリプションに代わって月額30ドルのメンバーシップを提供し、これには30%割引や、ドロップへの早期アクセス、限定商品、グッドカウンセルのスタイリングチームによるサポート、送料無料などの特典が含まれる。同社は正確な会員数を明かしていないが、数千人にのぼると答えている。同社ウェブサイトによると、以前からのサブスクリプション登録者は新しいメンバーシッププログラムを90日間無料で使用できる。

「次の段階に進む準備が整った」

グッドカウンセルは、ファッション業界で見過ごされがちなコミュニティに貢献していると、クリエイティブディレクターのコートニー・メイズ氏は語る。「ファッション業界は、プラスサイズや、大柄、高身長の消費者に対して真に門戸を開かなかったという点で、市場に失策があった」と、同氏は述べている。「特定のサイズより大きい衣服は質素で控えめなものになってしまい、小さなサイズのように格好良くて面白いものではなくなってしまう。ここでの我々の目標は、この問題を解決し、あらゆるサイズが手に入るという衣類の幅を広げることだ」。

グッドカウンセリングは、何年もの期間と何百ものデータポイントを駆使してウェブサイトを立ち上げたと、最高ブランド責任者のペイシェンス・ラムゼイ氏は米モダンリテールに語った。「我々がサブスクリプション型の会員制モデルで営業を開始したのは、いくつものブランドがこの方法で大きな成功を収めてきたのを目にしたためだ。しかし同時に、我々はすぐにスケールアップできるブランドではないことも理解していた」と、同氏は述べている。

たとえば、最大で8XLまでの衣服を製造できる工場を見つけるのに時間を要したと、同氏は述べている。また同社は「完璧なフィット感」を実現するため、すべてのアイテムについて顧客のフィードバックを求めた。ラムゼイ氏はによると、同社はサイズと生産能力が整うまで「小規模のままでいる」ことを望んだという。現在は、次の段階に進む準備が整ったと感じているが、個々の顧客に対するパーソナライズされたアプローチや、会員のフィードバックを捨てるわけではないと、同氏は強調する。

ラムゼイ氏は次のように述べている。「我々の全体的な目標は、データを収集し、会員が何を好み、何を好まないのか、当社はどこを深く追求し、どこを遠ざけるべきかを見極めることだ。膨大な数の在庫を抱えるようなことはしない。在庫は少なく機敏にし、非常に人気のあるものが見つかったときにはすぐに補充できるようにする」。

消費者のニーズの変化

この10年間にわたり、多くのD2Cブランドが、時間や費用、労力を節約したい消費者にアピールするためにサブスクリプションボックスを導入してきた。バーチボックス(Birchbox)、バークボックス(BarkBox)、ファブフィットファン(Fab Fit Fun)、ダラーシェーブクラブ(Dollar Shave Club)、ブルーエプロン(Blue Apron)などの有力ブランドは数万人もの顧客を獲得し、ほかの企業もそれに追従してきた。

しかし現在、サブスクリプション市場は過当競争になってしまったと、カーニーコンシューマーインスティテュート(Kearney Consumer Institute)のリーダーで、「ザ・サブスクリプション・アポカリプス(The Subscription Apocalypse)」の共著者であるケイティ・トマス氏は米モダンリテールに語った。「あまりに多くのサブスクリプションが市場にあふれ、消費者の関心があちこちに分散されてしまった」と同氏は述べている。「しかし、サブスクリプションの長期的な課題は、依然として消費者に寄り添い続けるということだ。そしてこの数年、消費者のニーズは刻々と変化しているため、それが非常に困難になってきた」。

この点の例として、買い物客がパンデミックの初期に必要としていたものは、現在必要としているものとは異なる可能性がある。特にアパレルのサブスクリプションは、トレンドやスタイルの変化があることから、維持するのが難しい。パーソナルスタイリングを提供するスティッチフィックス(Stitch Fix)は、1年前で44万5000人のアクティブなクライアントを失った。ファッションレンタルのレント・ザ・ランウェイ(Rent the Runway)は2022年第4四半期に加入者が前年同期比で10%増加したが、2023年第1四半期から第2四半期にかけて1万人のアクティブな会員を失った。

さらに、アパレルのサブスクリプションボックスは、食品のサブスクリプションボックスと似た課題を抱えていると、トマス氏は述べる。「食品のサブスクリプションサービスでは、1年か2年のあいだはサブスクリプションを使用するが、そのあとに自分で料理するようになって、サブスクリプションを止めてしまう。アパレルボックスでも同じことが起きると思う。しばらくはサブスクリプションを便利だと感じているが、その後は実際に自分の好きなブランド、スタイル、サイズを知って、サブスクリプションを止めてしまう」。

ピボットし始めたサブスクリプション企業

いくつかのサブスクリプション企業は、事業を続けるために、この数年間でピボット(事業転換)を始めた。たとえばバークボックスはペットフードやデンタルケアに事業を広げ、ターゲット(Target)や、コストコ(Costco)、ペトコ(Petco)で直接商品を販売しはじめた。スティッチフィックスは直接購入に踏み切った。グッドカウンセルがサブスクリプションモデルで事業を開始してから、直接購入モデルに移行すると決定したことは理にかなっていると、トマス氏は説明する。

同氏は次のように述べている。「サブスクリプションは、人々を集め、消費者とその要望について学び、彼らが何を求めているかを知るのに、実は良い方法だと思う。そのあとで、顧客のライフタイムバリュー(生涯価値)を考え、それが時間とともにどのように変化していくかを考え、顧客がブランドに親しんだら、自分で商品を選択できるよう、多少の自由度を与えるべきだ」。

グッドカウンセルは、サブスクリプションビジネスとして、顧客のために「ユニフォーム」を厳選したのだと、メイズ氏は語る。同社は現在、個別のSKU(在庫管理単位)を販売しており、この手法を継続したいと考えているのだという。たとえば、同社のウェブサイトでは、新しいアイテムと過去のアイテムとの組み合わせ方を教え、昼のコーディネートを夜のコーディネートに変える方法を紹介するなど、完全なコーディネートを提案している。

「顧客に対してクールなアイテムや面白いものを提供するだけでなく、それをどのように着るべきかも紹介したい。教育の要素があり、顧客とどのように関わり合うか、メンバーとどのように関わり合うかが重要な要素だ。たとえば顧客が、『ショーツを買ったけれど、これからどうしたらいいだろう?』と悩まないようにしている」と、同氏は述べる。

一般の顧客も起用

グッドカウンセルは、新しいサイトを宣伝するために、いくつかの異なる方法を用いている。そのひとつがソーシャルキャンペーンで、6月には運用を開始する予定だ。もうひとつの方法はプロのアスリートで、彼らの多くは自分たちのサイズに合う衣服を探すために苦労している。同社は、アメリカンフットボール選手のトレント・ウィリアムズ氏とトレイボン・ウォーカー氏、プロバスケットボール選手のアンドレ・イグダーラ氏とキャンペーンを実施し、「今後もこのような関係を広げていく」と、ラムゼイ氏は述べている。

また同社は、一般の顧客もマーケティング素材に採用している。「顧客自身が広告に登場することが、我々にとっても効果的だ」と、ラムゼイ氏は述べる。「我々は、必ずしもモデルではない一般の顧客と協力している。この方法がうまくいっているとわかっているので、今後もさらに増やしていく」。

[原文:Why big and tall menswear brand Good Counsel moved from a subscription model to a website]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Good Counsel

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