それは青天の霹靂(へきれき)であった。丸亀製麺が2022年6月15日、『あさり冷かけうどん』なる新商品を期間限定で発売したのだ。あ、あの至高のメニュー『あさりうどん』の、冷かけ……だと? ちょっと待ってくれ理解が追い付かない。
通常『あさりうどん』が販売されるのは春。今年も3月にすでに発売済みだ。それが半年も待たずに復活を果たすとは……誰か神龍(シェンロン)でも呼び出したんか? これは世界が終わったとしても食べに行くしかあるまい。行かねば! ところが……。
・驚きの少なさ
丸亀製麺が公開している『あさり冷かけうどん』の販売実施店舗リスト(PDF)を見た私(あひるねこ)は思わず息をのんだ。現在、都内で取り扱っている店舗はなんと……
「立川、小平、あきる野、青梅、足立、足立入谷、武蔵村山、多摩、武蔵境、八王子、東村山、足立鹿浜、足立加平、昭島、上石神井、町田金井、環八平和台」
──のみである。いや少ねェェェェエエエエ! ここ数年、販売店舗をどんどん減らして我々ファンの心をポキポキ折っている『あさりうどん』だが、今回の『あさり冷かけうどん』に至っては、まさかの17店舗ときた(東京都)。春の19店舗からさらに減っとるやないか!
少なすぎて泣きたくなってくるが、この件に関して私以上に怒りまくっているのが当編集部のサンジュンだ。なんだかんだメディア向けの試食会などで『あさりうどん』を食べている私に対し、サンジュンは2年連続でノーあさり。これはさぞブチギレているに違いないと思ったら……
「~~~ッ! ~~~~ッッ!!」
言葉にならないくらいキレていた。
・憤怒
喋れないほど怒っている人間を初めて見た気がするぞ。だが、事が事だけに無理もないだろう。サンジュンよ、もっと怒れ! お前に『あさり冷かけうどん』を食べさせないのは誰だ!? お前から『あさりうどん』を奪い続けているのは、一体どこの誰なんだ!?
「ウガァァァァァアアアア!!!!!」
というワケで……
直接乗り込んでみた。
・カチコミ
ここは丸亀製麺の某キッチン。普通は入れない秘密のスポットである。『あさり冷かけうどん』を食べられないのが悔しすぎて、試食会でもないのに特別に入れてもらっちゃったぞ。
「全員、打って伸ばしてうどんにして食う」
何やら初期ラーメンマン(アニメ版)みたいなことを口走るサンジュン。実際にラーメンマンになった過去もあるくらいなので、今の彼ならやりかねないだろう。横に立つ私にも緊張が走る。するとそこへ……
キ、キターーーーーーー!!!!
『あさり冷かけうどん』降臨ッッ!
・感動の再会
丼から溢れんばかりに盛り付けられた殻つきあさりはそのままに、ひんやりとした夏仕様になって新登場である(並・税込690円)。まさか本当に実在するとは。
これにはサンジュンも……
ニンマリ──
2年ぶりの対面に……
この笑顔である。
しかしだ。繊細な “だし” が命の『あさりうどん』。こんな冷たくなっちゃって大丈夫かいな? と思いきや、あさりの風味豊かな旨みは健在で一安心。
まあぶっちゃけると、だし単体のウマさは温かい『あさりうどん』に軍配が上がるものの、うどんのコシや、つるつると心地よい喉越しは『冷かけ』の方がよりダイレクトに味わえるのではないか。
あさりの身は相変わらずぷりっぷりで、無限に食べられそうな中毒性のある旨みを秘めている。つまんだ時に「熱っ!」とならないので、シンプルに食べやすいというのもあるだろう。あさり単体なら、個人的には『冷かけ』の方が上のように思う。
いやぁ、来てよかったですね、サンジュンさん! これで今年は思い残すこともないでしょう。さあ、帰りますよ。
するとその時!
偶然、厨房にいた男性とサンジュンの目がばっちり合ってしまったのだ。アカン! うどんにされて食われる!! ところが……実はこちらの玉谷(たまや)さん、我々の想像を超えるとんでもないお方だった。
聞いて驚け。なななんと! 至宝たる『あさりうどん』及び『あさり冷かけうどん』の考案者だというのだ!! ほ、ほんげェェェェェエエエエエ! ただの神ィィィィィィイイイイイ!!
・創造主
我らが愛してやまない『あさりうどん』、その生みの親である人物との邂逅……。これは例えるなら、鳥山明や堀井雄二に会ったようなものである。こ、この人が……! あの伝説の作品を……!! 深い感慨に包まれる私。ふとサンジュンの方を見ると、驚くことに彼は……
水のように穏やかな表情で……
ただ静かに、こうべを垂れていた。
・圧倒的感謝
毎年、『あさりうどん』の販売店舗が減っていることに割とガチでキレていたサンジュン。しかし、いよいよ殴り込みに行った先で男は奇跡を見た。迷える羊の魂は、主(しゅ)との出会いによって救済されたのだ。神よ……。
『あさり冷かけうどん』は7月下旬まで販売予定となっている。最寄りに実施店舗があるという幸運な星のもとに生まれた人は、選ばれし者の恍惚と不安をぜひ うどんと共に噛みしめてほしい(不安は余計だが)。我々の分までたらふく食べてくれることを祈る。