「トゥー・フェイスド」の TikTok ライブストリームショッピングへの新戦略:ライブコマースで売れる商品とは?

DIGIDAY

メイクアップブランド「トゥー・フェイスド(Too Faced)」は、2021年12月から新しいライブコマース機能を試験的に導入している。そしてそれが成功した結果、現在はオムニチャネルのコアな機会として採用された。

TikTokがトゥー・フェイスドやレア・ビューティ(Rare Beauty)にライブコマースのアルファ版への参加を呼びかけて以来、トゥー・フェイスドはライブコマース戦略を改良してきた。TikTokで機能するものとそうでないもの、そしてTikTokがセールスチャネルとして提供する機会は何なのかを特定するため、アプローチを更新してきたのだ。

トゥー・フェイスドはTikTokのライブコマースチャネルで、一本あたり平均約2時間のライブ配信を毎週複数本ホストしている。エピソードはユーザーの「おすすめ(For You)」ページに表示されるほか、ブランドアカウントのフォローやイベント登録をしているユーザーにはアラートが通知される。トゥー・フェイスドはQVCやHSNと提携してのライブコマースを経験しており、インスタグラムでも約30分程度のエピソードのライブコマースを実施している。

「重要なのは人々を教育し、楽しませ、インスパイアすること。ライブコマースでは、熟練のメイクアップアーティストが電話で、完璧な美しさを手に入れる方法を見せてくれるのだ。そしてフィードバックをリアルタイムで返してくれる」と語るのは、トゥー・フェイスドのグローバルマーケティング担当バイスプレジデント、ソマー・テジュワニ氏。「売れ行きに効くと考えがちだが、まずはオーセンティックなつながりを構築することが大切だ」。

インスタグラムよりTikTok、でも

同社が2021年12月に配信した最初のエピソードを、コメントや「いいね!」の数、フォロー数などで測定したところ、ユニーク視聴回数は72,500人、エンゲージメント数は69,400人であった。ライブコマースの視聴者にはユニークプロモーションコードを配布しており、第1回のライブコマースを視聴後に購入した顧客の84%がTooFaced.comを初めて利用したことが明らかになった。「ライブコマースで売れ行きが良い製品は、とてもデモンストレーションをしやすい製品だ」とテジュワニ氏は語る製品には、ベター・ザン・セックス・マスカラ(Better Than Sex Mascara)やリップ・インジェクション・マキシマム・プランプ(Lip Injection Maximum Plump)などが含まれる。また、国際女性デーに合わせたキャンペーンとして3月9日に配信したライブコマースは、視聴数が合計42,000回という結果になった。

テジュワニ氏によると、配信前の広告は視聴率に大きな影響を与えるという。そしてトゥー・フェイスドは広告付きの配信も、広告なしの配信も試した。同ブランドでは、ライブコマースイベントをより多くの「おすすめ」ページに拡大する「ライブ広告」など、プロモーショナルツールや広告ツールを使っている。ほかにも視聴者にイベント登録を促し、通知を届けられるようにする広告もある。これまででもっとも有効だったのはライブ広告だったと、同ブランドでソーシャルメディアとインフルエンサー・リレーションのグローバルディレクターを務めるテイラー・ラモット氏は語る。

「TikTokショッピングが優先事項であることは間違いない。他ブランドに先駆けて取り組み、知識をいち早く得ることができている」とラモット氏。「いまでもインスタグラムでライブコマースを実施しているが、セグメントははるかに小規模で、チームとしての作業もそれほど多くない。TikTokほどの大きな成長を見込めるとは思ってない」。

TikTokライブコマースがブランドにとっての稼ぎ頭になる可能性は大きいが、これが販売チャネルの主軸になるかはまだ明らかではない。TikTokが2月に公開したレポート「What’s Next」によると、TikTokユーザーの67%がTikTokに触発されたことによって、買い物をしようと思っていないときに買い物をしたと回答している。小売業界を分析するコアサイト・リサーチ社(Coresight Research)によると、2020年のライブコマースによる米国での売り上げは約56億ドル(約7,155億円)で、2023年までには250億ドル(約3兆2,000億円)に達すると予測する。コンサルティング大手マッキンゼー(McKinsey)によると、中国でのライブコマースの人気が参考になるならば、2026年にはライブコマースの売上がeコマース全体の約2割を占めるようになる可能性があるという。

ライブコマース戦略の鍵

ブランドにとってのライブコマース戦略で鍵となるのは、複数のホストやアシスタントホストによる長尺のエピソードを毎週配信することだと、テジュワニ氏は語る。またすでに「優れたパフォーマンスをオーガニックに発揮している」製品については、ライブコマースで継続的にスポットを当てる必要がある。

トゥー・フェイスドのグローバル・ビューティ担当エグゼクティブ・ディレクターであるエリース・レノー氏は、同ブランドがTikTokで実施するライブコマースで現在ホストを務めるひとりだ。同氏によると、TikTokの視聴者は同社のインスタグラム視聴者と比べてエンゲージメントが高く、質問を寄せてくれる傾向にあるという。これはおそらくトゥー・フェイスドがTikTokでロイヤル視聴者を抱えていること、そしてライブコマースの配信時間が長いため視聴者に質問の時間を与えていることに起因するものだろう。レノー氏は2時間ほどの各エピソードを15分ほどに区切ってショーを実施し、30分ごとに製品プレゼントを発表している。視聴者から質問を募ることも、話を続けるのに役立つという。

「Z世代は、友情のような雰囲気に反応する」とレノー氏。「TikTokライブコマースを開始するときは常に『メイクアップポーチを持ってきて。一緒にやりましょう。いまは、ほかのことは何も考えなくていい、あなたの時間なのだから』と言うようにしている」。

ラモット氏は、人々は「カーテンの後ろ側からブランドのことを覗き見る」のが大好きなのだと付け加える。また、ライブ配信動画はスタジオ制作レベルである必要はなく、実際にレノー氏や他のホストが配信する際にも、視聴者はホストの自宅やプライベートを見てみたいと思っているのだとか。

「このような新しいものに飛びつくことを、ブランドが躊躇することがある。すべてを理解できていないかもしれないから、というのが理由なのだろう。だがすべてを理解している人はまだ誰もいない」とラモット氏。「より多くのブランドがライブコマースを行うほど、より多くの消費者が早く見つけて、ここで買い物をできるのだということをより早く理解するようになる」。

[原文:How Too Faced is tackling TikTok livestream shopping

EMMA SANDLER(翻訳:田崎亮子、編集:黒田千聖)

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