ライブストリーミングショッピング に注力するTikTokとリール。市場の現状と期待感【ビューティ&ウェルネスブリーフィング】

DIGIDAY

米国でのライブストリームショッピングの今後はどう展開していくのか?

8月初め、Metaはブログの投稿で、Facebookが10月にライブショッピング機能を停止し、「Facebookとインスタグラムのリールに焦点を移す」と発表した。

しかしインスタグラムに関しては、ライブストリームショッピングの状況はまた別の話だ。6月中旬、このプラットフォームは、ヘイリー・ビーバーをオフィスに迎えて、彼女の新しいブランド、ロードビューティ(Rhode Beauty)のローンチにともなうショッパブルなライブストリームを配信、このイベント中には商品が完売している。

北米では主流になっていないライブストリームショッピング

ライブストリームショッピングは、北米ではパンデミック中のショートビデオほど主流にはなっていない。2020年3月にパンデミックによるシャットダウンが起こってから、ソーシャルプラットフォームは徐々にライブストリーミングを強化し、動画をショッパプルなものにした。中国ではライブストリームショッピングが2020年に1710億ドル(約23.4兆円)に達しており、同様の成功を期待してのことだ。しかし、ショートビデオのほうがはるかに急速に成長した。米国市場でのライブストリーミング戦略を縮小したブランドがある一方で、まだそれに賭けているブランドもある。

Metaのビューティパートナーシップ責任者クリスティ・ダッシュ氏は、「我々はまだ、インスタグラムのライブショッピングに大きく頼っている」と語る。Facebookがその機能を停止したにもかかわらず、彼女は「Facebookとインスタグラムではオーディエンスが大きく異なる」として、インスタグラムでは「本当によく機能していると考えている」と述べた。インスタグラムのライブストリームショッピングにとって美容は特に重要であり、この機能でもっともパフォーマンスの高いトップ3のカテゴリーにランクインしている。

また同プラットフォームは、特にインフルエンサー主導のブランドのために、ライブストリームショッピングの成功事例を強調している。そのビジネスサイトで取り上げているある事例では、エラルス(Elaluz)の創業者カミラ・コエーリョ氏が新しいブロンザーの発売を祝って行ったライブストリームが、10月の1カ月間にインスタグラムで72%の新規購入者を生んだことが紹介されている。

インスタグラムとTikTokの機能への期待

インスタグラムには「より若く、よりエキサイティングな発見をするオーディエンスがおり、Facebook(のユーザー)は実際に店舗で見て確かめたことのあるブランドを求めているのかもしれない」と語るのは、ドラゴンビューティ(Dragun Beauty)とともにインスタグラムのライブストリーム・ショッピング機能を最初に活用したブランド、Uビューティ(U Beauty)の創業者ティナ・クレイグ氏だ。90年代にアジア市場にインフォマーシャルを紹介するなどの経歴があるクレイグ氏は、今でもこの機能を定期的に活用しており、北米での可能性を見出している。

「(当社が)現在ライブストリーミングを行っている方法は非常に戦略的だ」とクレイグ氏は述べた。彼女のブランドは人々が自宅にいたパンデミックの初期には、もっと頻繁にライブストリームを主催していたという。彼女いわく、視聴者の質問に答えるQ&Aをフィーチャーすることが、売上を伸ばすのに効果的だった。

「インスタグラムのライブストリーミングはすばらしい。そして、ショッピングライブのようなものを削除しようとしないことを心から願っている」と話すのは、トゥルーリービューティのソーシャルメディアマネージャー、タイラー・ムーア氏だ。同ブランドは、インスタグラムとTikTokの両方で、ショッパブルなライブストリーミングへの投資を増やし続けている。毎週ゲームショーを開催し、視聴者が交代でライブに出演して賞品を獲得する遊びができるようにしている。

「それを行って、この戦略を継続するのに十分な収益があるので、一銭も金にならなかったり、失敗したり、あるいは多くの視聴者を得られなかったりといったことはない」とムーア氏は述べ、トゥルーリービューティはTikTokでのライブストリームの主催がもっとも成功していると付け加えた。7月、ファイナンシャルタイムズ(Financial Times)は、TikTokが欧州と米国でのライブストリームショッピングの取り組みから手を引くだろうと報じたが、TikTokはこれに反論している。

ブランド発見とエンゲージメント

ブランドがTikTokにマーケティング予算をますます割り当てるようになる一方で、ライブストリームショッピングは「まだ実験的な予算だ」と語るのは、インフルエンサーマーケティング技術プラットフォーム、インフルエンシャル(Influential)のCEOライアン・デタート氏だ。

TikTokは米国でもライブストリーム機能を宣伝しており、委託調査の結果では「TikTokユーザーの半数がライブ視聴後に何かを購入したことがある」と発表している。

「ライブストリームコマースは、TikTokで大きなトラクションを得ている。このプラットフォームのアルゴリズム、短い形式の動画フォーマット、若いオーディエンスで、ライブストリームショッピングが成功する準備が整っている」と、マーケットリサーチ会社スプラウトソーシャル(Sprout Social)のソーシャルメディア・シニアマネージャー、 ラケル・サミュエルズ氏は述べている。スプラウトの調べでは、1位のショートビデオに次いで、2022年にもっともエンゲージメントの高いソーシャルコンテンツの形態としてライブ動画が3位にランクインしている。

インスタグラムのリールへの注力は明らかだ。Metaの2021年第1四半期のデータによると、同プラットフォームはリールが圧倒的に急成長しているコンテンツフォーマットで、人々がインスタグラムに費やす時間の20%を占めていることを明らかにした。しかしダッシュ氏は、インスタグラムがブランドに対してリールとライブストリーミングの両方を活用するよう奨励しており、ブランド発見のためにリールを、既存のフォロワーとのエンゲージメントのためにライブストリーミングを重視していると強調した。

Facebookとインスタグラム以外のソーシャルプラットフォームは、ライブストリームショッピングに関して異なる方向に進んでいる。8月初め、ライブストリームショッピングプラットフォームのポップショップライブ(Popshop Live)は、スタッフの18%をレイオフした。一方、YouTubeは、グロシエ(Glossier)やロード(Rhode)といったブランドとの最近のビューティフェスティバル(Beauty Festival)で紹介された機能で、ライブストリームショッピングに重点を置くことを強化し始めたところだ。

中国市場との違いを学ぶ

専門家や創業者は、ブランドがやらなければならないことのひとつは、市場が中国とどのように違うかを学ぶことだと指摘する。

中国は「メンタリティがまったくちがう」とクレイグ氏は言う。「人口の大部分が、上海や南京、あるいは北京のようなTier1やTier2の都市に住んでいるのではない。Tier3やTier4の都市に住んでいて、支出可能な収入はあるのに、ハイエンドなショッピング体験へのアクセスがない。そうした人々は自分たちのWiFiからこうしたライブストリーミングを通じて、もっとも話題のインフルエンサーやセレブリティ、ブランドにワンクリックでアクセスできるのだ」。

米国では、ライブストリームショッピングは、24時間営業のQVC(テレビショッピング専門チャンネル)のような形式ではなく、特定のイベントや製品の発表のために活用されるべきだ、と多くの専門家は主張している。

「これはマーケティングのテントポールのようなものだ」と、SaaSプラットフォームのミックマック(MikMak)の創業者でCEOのレイチェル・ティポグラフ氏は語る。「だからキム・カーダシアン氏が新製品を発表したら、まさにその日こそ、彼女が本当にライブショッピングをすることができる日だ。だが、彼女はそれを毎日行うことはできない。人々は彼女を無視するようになる」。ダッシュ氏いわく、インスタグラムはブランドに、「もっとも盛り上がっているドロップの瞬間」にライブストリーミングを活用するよう勧めている。彼女によれば「本当に共感を呼ぶのは、よりイベントのように感じられるライブストリームだ。FOMO(取り残される不安)を誘発するような雰囲気がある」。

米国市場で重要なのはインタラクション

しかし、売上の数字を念頭に置いた小規模なブランドにとって、「通常、単発(のライブストリーム)では広告費に対するリターンはない」と、デタート氏は言う。その代わりに、毎週ライブ配信される「生産は低いが、高い欲求とドロップ」を特徴とするライブストリーミングを行うブランドは、「実際、よりよいリターンを得ている」。

一部のブランドは、専門家が言うところの北米市場により適したライブストリーミングの新たな形式の追求を選択している。たとえば シャーロット・ティルベリー(Charlotte Tilbury)は、ライブストリーミングのスタートアップ、バイウィズ(Buywith)の技術を活用し、ブランドサイトで「ショップ・ウィズ・ミー」というライブストリームをフィーチャーした。この技術では、ライブストリームのホストは、自分たちの動画を画面のコーナーに表示させながら、リアルタイムで商品ページをクリックすることができる。

「(ライブストリーミングの)可能性は大きい。なぜならいまだ初期段階だからだ」と、バイウィズの創業者でCEOのアディ・ローネン氏は述べた。彼女は米国市場には「ショップ・ウィズ・ミー」のモデルの方が適していると主張する。「文化が違うので、ソリューションを米国の文化にあわせて調整する必要がある」と彼女は言う。米国市場にとって双方向性の向上が重要な要素であり、「『みんなで一緒に買い物をしている』という体験」を生み出す。「誰かが何かをただ売ろうとしている」というのではなく、「ショッピング・パーティのようなものだ」。

Uビューティのソーシャルショッピング戦略の一環としてのライブストリーミングの将来について、クレイグ氏は次のよう述べた。「間違いなく重要な構成要素だが、一番重要なものだとは思っていない。アメリカ人のショッピング行動は中国人(の行動)とはかなり違うので、判断は本当にまだこれからだ」。

[原文:Beauty & Wellness Briefing: ‘The jury is still out’ on livestream shopping’s future]

LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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