Cookie 代替案を自ら広告主に提示する北欧のパブリッシャー:「ファーストパーティデータは将来的に強力な利点となる」

DIGIDAY

何がサードパーティーCookieの代替となるのかを広告主たちが決められないなかで、北欧の出版社シブステッド(Schibsted)は、広告主に代わって代替ソリューションを決めてしまった。意外ではないが、そのソリューションとは自社によるファーストパーティーIDだ。暗号化された識別子を使って同社は、ログイン・ユーザーについての情報をプログラマティック・オークションを介して、これらのオーディエンスにアクセスしたい広告主と共有するというものだ。

これが大規模に機能するために、パブリッシャーよりも容易にプログラマティック広告費にアクセスできるアドテクベンダーが必要となる。そこで先月、シブステッドは自社のIDをアドフォーム(Adform)に組み込み、広告主がアドフォーム経由で在庫に入札できるようにした。

確かに、これによってデータの使用をノルウェーの新聞アフテンポステン(Aftenposten)やヴェルデンス・ギャング(Verdens Gang)といったシブステッド自身のサイトに限定することになる。しかし、シブステッドは貴重なオーディエンスセグメントを作成し、それらのセグメントをID同期や複雑な翻訳を必要としない方法で入札において展開できるデータ管理プラットフォームを持っている。このような出版社にとっては、この手法は現在のターゲティングの代替手段として実行可能なオプションだ。

ファーストパーティIDエコシステムを構築

シブステッドの広告・販売部門の責任者であるパー・ハコン・ファスティング氏は、次のように説明している。「SafariやFirefoxでは、サードパーティの識別子が禁止されているが広告主が関係なく購入し続けており、我々のプログラマティック在庫を盲目的に購入する広告主がたくさん現れている」。

別の言い方をすれば、プログラマティック広告の広告主たちは、頻度制限や正確なターゲット広告ができないにもかかわらず、これらのブラウザでシブステッドの読者にリーチしようとし続けていたことになる。

この種の広告に依存していない(広告収入の70%が直接の取引によるものである)シブステッドのような出版社にとってさえ、これは問題である。ターゲットの絞られていない広告ほど、読者が嫌がるものはなく、同社はそんな問題を抱えるわけにはいかない。

プレミアムブランドや認証されたオーディエンスを大規模に抱えるほかのパブリッシャーたちが、サードパーティ・Cookieの撤退から恩恵を受けようとしている今の状況においてはなおさらだ。そのため、シブステッドはすべての在庫でファーストパーティーIDエコシステムを構築するつもりだ。

「マーケターたちはこれまでと同じことを繰り返す」

誤解のないようにいっておくと、このエコシステムはシブステッドの在庫の大部分(広告主との直接取引で販売される部分)においてすでに存在している。この最新の動きは、それをプログラマティックにも拡張した形だ。

これを行うには2段階のプロセスが必要となる。まず、シブステッドは、購入する広告数の頻度制限と入札の最適化を必要とするプログラマティック広告主たちに対して、ファーストパーティーIDを利用できるようにする。これはまだ、ターゲティングではない。

同社は夏前にはこれらのファーストパーティーIDを介してオーディエンス・セグメントを利用できるようにする計画だが、その段階をもって、ターゲティングの提供となる。それ以降は、ほとんどの広告フォーマットにおいて、プログラマティック形式によるセグメント購入の唯一の方法となる(一部のビデオとネイティブ広告を除く)。

「このようなソリューションがマーケターたちの目の前に『はいどうぞ』と提供されない限りは、マーケターたちはこれまでと同じことを繰り返すだろう。それくらい、市場は利便性によって動かされている」とファスティング氏は述べた。「私たちは、広告主がサードパーティのCookieなしでオーディエンスにアクセスしやすくしている」。

広告主にとって、安全で効果的な賭け

このような動きは、(ゆっくりではあるが)オープンウェブ(つまり、大手テックの囲い込みの外)にまだユーザーレベルのターゲティングが存在する状況を作り出しているが、その規模はずっと小さい。これが多ければ多いほど、プレミアム・パブリッシャーたちは認証ユーザー、つまりログインしたユーザーの小規模な囲い込みを作ることになる。しかし、このような希少性の増加の結果、こうした在庫のコストは、オープンウェブ上のほかのすべてのものと比較して高くなる可能性が高い。ファスティング氏はそれを期待している。

それでも広告主は、そこにお金を出すと確信しているという。「それなりの規模のファーストパーティのオーディエンスが存在する場所は数少ないが、パブリッシャーはそのひとつであり、広告主にとっては安全で効果的な賭けとなる」と同氏は続けた。これはシブステッドのファーストパーティーIDの初期テストで明らかになっている。

「これにより、これまで得られなかった(プログラマティックによる)新たな収益が得られるだろう」とファスティング氏はいう。「我々のテストから、ファーストパーティのデータはサードパーティのデータよりも成果が高く、我々のコンテキストシグナルはどの在庫よりもパフォーマンスが高いことがわかっている。アドフォームとの取引でその組み合わせを推し進めることができれば、広告直販ビジネスにも匹敵できる立場になるはずだ」。

すでに高パフォーマンスの実績も

これらのIDがすでに示しているよい兆候を信じるとすれば、ファスティング氏がいうような変化は思ったよりも早く起こる可能性がある。昨春のルノー(Renault)のケースはその表れだった。

アドフォーム経由で購入したファーストパーティーのIDを使ってキャンペーンを実施したところ、閲覧率はサードパーティーのCookieを使ったトラフィックで見られた75%から、80%に上昇した。さらに、アドフォームによると、これらのファーストパーティーIDを持つ広告トラフィックだけが、キャンペーン期間中の1日あたりの支出目標を達成できたという。

プログラマティック・エージェンシーMiQのEMEA担当マネージングディレクターであるフレディー・ターナー氏は、「ほとんどのパブリッシャーたちは、豊富なファーストパーティのデータを大量に抱えており、プライバシー規制が強化され続けるなか、ファーストパーティのデータを使用して運用することは、将来的に強力な利点となるだろう。これにより、プライバシーに準拠した方法で、より正確なオーディエンスを構築し、新しい収益源を発見することができる」と述べた。

[原文:‘theres-a-lot-of-blind-buying-schibsted-makes-its-first-party-ids-widely-available-in-the-open-market

(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)

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