変わりつつある広告帝国、 メタ がいま答えるべき質問:「効果が高い必要悪」のこれから

DIGIDAY

メタ(Meta)のCOO、シェリル・サンドバーグ氏の退任は間違いなく、メタの歴史における重要な瞬間だ。メタは今、巨大ソーシャルメディアからメタバースに生まれ変わろうとしているところだ。

創業者兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏はサンドバーグ氏と共に年間1180億ドル(約15兆8500億円)のビジネスを築き上げた歴史を振り返り、サンドバーグ氏は14年間Facebookの最高幹部として、「私たちの広告ビジネスを設計した」と述べている。

業界全体が消費者のプライバシーを重視し始め、パフォーマンス測定が混乱に陥るなか、Facebookは近年、広告の世界で評判を落とす出来事をいくつか経験した。データセキュリティやコンテンツキュレーションに関する懸念は言うまでもない。

2021年10月、Facebookがメタにリブランディングすることを決めたのも、そうした論争が主な動機になったのではないかという見方もある。インサイダー(Insider)は6月2日付の記事で、近年メタの最上層におけるサンドバーグ氏の影響力は徐々に弱まっていたと報じている。その結果、巨大ソーシャルメディアがメタバースで圧倒的な存在感を示そうとしているなか、広告がこれから果たす役割について疑問の声が上がったのかもしれない。

「不可欠」なプラットフォーム

近年はたたかれ、TikTokなどのライバル(さらには、ほかのメディア)から明らかな挑戦を受けているにもかかわらず、メタの広告帝国がいまだ上昇中であることは注目に値する。イーマーケター(eMarketer)の予測によれば、2024年には広告売上が1670億ドル(約22兆4400億円)に達し、デジタル広告費全体の22%を占めるようになる見込みだ。

Facebookには規模と大量のファーストパーティデータがあり、メディア費用を投じれば確実に成果を得られるものの、ブランドスータビリティの問題が常にあると、複数のバイサイド関係者が米DIGIDAYに語っている。

メカニズム(Mekanism)のパートナー兼最高ソーシャル責任者、ブレンダン・ガーン氏はDIGIDAYの取材に対し、サンドバーグ氏の退任はもちろん痛手だが、(メタの)プラットフォームは今後も広告予算を獲得し続けると述べている。「メタは(一般的に)不可欠な広告プラットフォームだというのが現実だ。パフォーマンスマーケティングの観点から言えば、今もおおむねもっとも効果が高い。結果を出し続ける限り、彼らは広告費を獲得し続けることになるだろう」。

顧客の懸念を理由に匿名を希望している大手江ジェンシーグループの関係者は、この意見に同意したうえで、特に2020年に問題が深刻化したあと、ブランドスータビリティはFacebookと切り離すことができない問題になったと指摘している。

「正直なところ、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)の一件は(広告主のあいだで)ある種の認識を得て認知度を高めたとはいえ、物事が本当の意味で動き出したのは、2020年夏、(ジョージ・フロイド氏の殺害をきっかけに)ブラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter)運動が起きたときだ」と、この関係者は説明する。「一部のブランドは(Facebookを)必要悪と捉えている」。

広告業界におけるメタの顔となるのは?

サンドバーグ氏は2022年秋に現在の職を退くが、メタの取締役にとどまる予定だ。後任は最高成長責任者のハビエル・オリバン氏になる見込みだ。複数の関係者がDIGIDAYに語ったところによれば、「目立たない」ことを好む「製品担当者」だという。

サンドバーグ氏の退任は、キャロライン・エバーソン氏の退任から1年足らずで発表された。どちらも広告業界ではメタの顔と見なされていた人物だ。

そのため、多くの人が「メタバースって何?」と頭をひねっているという新たな課題はさておき、ブランドスータビリティの懸念は今も続いており、広告業界におけるメタの顔は誰になるのだという疑問の声が上がっている。

その点に関して言えば、英国の広告幹部からメタのグローバルビジネスグループのバイスプレジデントに転身したニコラ・メンデルソーン氏が最有力候補だ。DIGIDAYが把握している限りでは、Facebookの幹部は大口メディアバイヤーとの接触を保ち、たとえAppleのATTのような課題が山積みでも、通常通りだと伝え続けているようだ。

「広告主に理解できる言語」

メンデルソーン氏はDIGIDAYのインタビューで、サンドバーグ氏が開発に携わった広告製品と構築したチームに対する広告主の称賛に言及している。

メタバースがもたらす機会と課題を広告主はどのように評価し始めているかという質問に対しては、「私たちが考えているのは、メタバースのビジョンを完全に実現するには5~10年くらいかかるということだ」と答えている。ただし、メンデルソーン氏はさらに、一部の企業はすでに拡張現実(AR)技術の初期実験を開始していると補足した。「人々やコミュニティ、企業にとって、本当に特別な機会がもたらされるだろう」と、同氏は述べている。

複数のメディアエージェンシー関係者が、メディアプランにおけるメタバースの正確な位置付けについて、ある程度の混乱があることを認めている。特に予算配分の権限を持つ主要幹部のあいだでは、「これを理解するまでにしばらくかかるだろう」と、ある関係者は話している。

エモド(Emodo)のデータ戦略担当バイスプレジデント、ジェイク・モスコウィッツ氏(ソーシャルメディアにおけるブランドリフトの測定を支援してきた人物)は、広告主はメタバースの機会を評価する際、以下のような自問を行うべきだと述べている。

  • メタバースのどこが見られるのか?
  • どのような体験があり、ブランドのシェアオブボイス(SOV)はどれくらいになるのか?
  • 比較可能な指標は存在するのか?

メタバース移行で考慮すべき点

「私はニールセン(Nielsen)でFacebook向けの製品をつくったことがあり、これらをじかに体験した」とモスコウィッツ氏は説明し、メタバースの今後の課題をFacebookの「いいね!」が重要な指標と見なされていたソーシャルネットワークの初期になぞらえた。

「自分だけがわかる指標ではなく、人々が慣れ親しみ、共感できる指標に基づき、目立つ変化があることを証明しなければならない」とモスコウィッツ氏は続ける。「広告主に理解できる言語と比較する方法を提供することだ」。

モスコウィッツ氏によれば、Facebookのメタバースへの移行にはもうひとつ考慮すべき点がある。これからの10年間をこれまでの10年間と違うものにするための要素であり、それは中間業者の排除という課題の克服だ。「多くの企業がメタバースに投資している。メタがメタバースのビューを独占すると決め付けるのはやめた方がいい」。

[原文:Key questions Meta’s ads team must answer as it enters a new era

Ronan Shields & Kristina Monllos(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:分島翔平)

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