パブリッシャー の2022年通期の業績まとめ:業界は比較的横ばいで前年の総売上から0.05%増加

DIGIDAY

2022年に対して大きな期待を抱いていたパブリッシャーは、1年の半分ほどが過ぎた時点で現実に引き戻されてしまった。

景気後退の影響を最初に感じた収益源は広告だったが、年末にはサブスクリプションが減速し始め、パブリッシャーのなかにはアフィリエイトコマースのような消費者向け収益源の落ち込みを報告したところもあった。

以下は、パブリッシャー6社の直近の決算報告から得られた知見であり、その多くは2023年通期のものだ(ニューズ・コープ[News Corp.]のダウ・ジョーンズ[Dow Jones]とウォールストリート・ジャーナル[WSJ]は、会計年度を7月1日~6月30日までとして発表している)。

売上の比較

前述のとおり、2022年はほとんどのパブリッシャーに恩恵をもたらさず、とくに2021年にM&A競争に参加したプレイヤーのプロフォーマ売上を比較すると、その差は歴然だった。

総売上が前年比で減少したパブリッシャー(BuzzFeed、ドットダッシュ・メレディス[Dotdash Meredith]、ガネット[Gannett])は8.2%~17.9%減で、総売上の前年比増を報告したパブリッシャー(ダウ・ジョーンズ、アリーナ・グループ[The Arena Group]、ニューヨーク・タイムズ[The New York Times])は8.1%~17.7%増だ。実際、これら6社の総売上の前年比の中央値をとると、業界は比較的横ばいで前年の総売上から0.05%増加している。

これは、レイオフ不動産売却などの形でのコスト削減策と、パンデミックの初期に学んだ不況下でも広告主を満足させようと努力する営業チームの懸命な姿勢に起因している。

売上の内訳

2021年の売上の内訳と比較すると、パブリッシャーの売上に占める広告の割合はやや小さくなった。

ニューヨーク・タイムズの広告事業は2%分のシェアを失い、サブスクリプションに吸収された。BuzzFeedのディスプレイとプリロール広告事業は2022年に半分以下になったが、ブランデッドコンテンツとカスタム事業は5%ほどシェアを伸ばした。2022年にプログラマティックCPMの平均値が減少し続けたことを考えれば、これは意外ではない。

ドットダッシュ・メレディスはデジタル売上へのシフトが続いているが、2022年のパブリッシャーの売上の大部分は依然として印刷物である。一方でガネットは、2022年に広告売上がわずかに増加したが、サブスクリプションはわずかに減少した。

また、アリーナ・グループは決算報告によると、主に月間平均ページビューが47%増加し、RPM(インプレッション収益)が13%増加したことにより、デジタル広告事業が74%増加したという。しかも、デジタル売上全体の増加分の80%がオーガニックグロースによるもので、メディア業界ではまさに異例といえる。

サブスクリプションの伸びが鈍化

2022年の数四半期を見ると、ニュースパブリッシャーでは新規購読者数の伸びが鈍化しており、とくにガネットとウォールストリート・ジャーナルではそれが顕著に見受けられた。

ピアノ(Piano)の戦略およびソーシャル担当エグゼクティブバイスプレジデント、マイケル・シルバーマン氏によると、パンデミックの最初の年以降、正常な状態に戻りつつあるという。パンデミックのときは読者が自宅で過ごす時間が増え、ニュースコンテンツや購読サービス全般により多くの金額を支払うようになっていた。

だが、現在の経済の落ち込みを受け、読者は予算のバランスを見直すようになっており、購読料を支払うに見合うだけの価値があると思わせることが、有料会員に2023年のサブスクリプション更新を納得させる決め手になるかもしれない。

ニューズ・コープの最高経営責任者(CEO)であるロバート・トンプソン氏は、同社の直近の決算報告の場で、「マーケット・ウォッチ(Market Watch)、ウォールストリート・ジャーナル、IBD、バロンズ(Barron’s)をバンドルして、サブスクリプションのアップセルを強化する」と述べている。なお、ニューヨーク・タイムズなどの出版社をみると、この戦略は効果があることが証明されている。

コマースの復活

BuzzFeedのコマース事業は、年初は低調に推移したが、第4四半期には順調に回復し、最終的には2021年の総売上高6160万ドル(約82億1439万円)を上回り、年間では6810万ドル(約90億8116万円)となった。

BuzzFeed社(BuzzFeed Inc.)の最高財務責任者(CFO)を務めるフェリシア・デラフォルチュナ氏は第4四半期の決算報告の場で、この第4四半期の売上の急増は、主に2022年11月19日~20日に開催された対面式ショッピングイベント「コンプレックスコン(ComplexCon)によるものだった」と説明している。

BuzzFeedはここ数年、コマース事業の見直しを図り、2021年初頭にBuzzFeedショッピング(BuzzFeed Shopping)というバーティカルを立ち上げ、また同年にライブストリームでのショッピング実験もしているが、同社の直近の決算報告でCEOのジョナ・ペレッティ氏は、「新しい形式のコンテンツのマネタイズを強化するには時間がかかる」と述べている。

[原文:In graphic detail: Publishers’ full year 2022 earnings

Kayleigh Barber(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)

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