BuzzFeedは3月中旬におこなった第4四半期決算報告会の際、2023年は増収の見通しを示し、主な注力分野2つを挙げた。AIとクリエイターネットワークである。クライアントの広告予算獲得に向けた同社の取り組みの成否はインフルエンサーとソーシャルメディア上のキャンペーンにかかっており、ハードルは高い。
BuzzFeedは3月中旬におこなった第4四半期決算報告会の際、先行き不透明な経済状況下ながら2023年は増収の見通しを示し、主な注力分野2つを挙げた。AI(人工知能)と、自社運営メディアのクリエイターネットワークである。
BuzzFeedが配信中のAI生成によるクイズは、AI技術を応用した実験として独自の施策といえるが、クリエイターネットワークの強化は、メディア業界ではそう珍しくない。クライアントの広告予算獲得に向けた同社の取り組みの成否はインフルエンサーとソーシャルメディア上のキャンペーンにかかっており、ハードルは高い。
クリエイター制作のブランデッドコンテンツを評価する
そこでBuzzFeedはメディアバイヤーと広告クライアント向けのソリューション提供をめざし、自社開発のキャンペーン効果測定ツール「BuzzFeedクリエイタースコア(BuzzFeed Creator Score、以下クリエイタースコア)の社内運用を開始した。クリエイタースコアは、クリエイターが作成したブランデッドコンテンツおよび広告の効果を評価するツールで、「クリエイターとブランド」、「プラットフォームとキャンペーン」の組み合わせで施策の効果がどう変わるか、さらには、キャンペーン中のどのクリエイティブがより効果的か、という予測にも応用できる。
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BuzzFeedは傘下のメディアブランドを対象にキャンペーン効果を測定し、クリエイタースコアを算出した。スコアは0から100までのパーセンタイル値で表され、全メディアブランドの平均値が50となる。BuzzFeedのレベニュー・オペレーション/ソーシャル・ディスカバリー部門でシニアディレクターを務めるジェイソン・ナデル氏によれば、クリエイター制作のキャンペーンのスコアはブランデッドコンテンツでも、ほかのタイプの広告でも、平均すると中央値に近かった。また、計測対象となった全広告のスコア上位5件中、3件がクリエイター出演の広告だったという。
クリエイタースコアは、企業のペイド広告とオーガニック検索からのトラフィックを対象に、クリックスルー率や動画視聴完了率といったオーディエンスエンゲージメント指標などを測定して算出される。では、プラットフォームのパフォーマンス(例:Facebookは
「コンテンツの成功は、契約クリエイターのパフォーマンスにかかっている」
「当社の仕事に関わる多くのクリエイターが支援を必要としており、プラットフォームを横断した計測データを参考にしたいと望んでいる」と、BuzzFeedの事業戦略/オペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデントのケン・ブロム氏はいう。TikTok広告で実績を上げ、このプラットフォーム向けのブランデッドコンテンツ制作には自信があるクリエイターでも、インスタグラムやFacebookとなるとそうはいかないだろう。他チャネルのオーディエンスへの訴求効果が高い、あるいは低いコンテンツがどんなものか見きわめるのに必要な「識別ツール」となるのがクリエイタースコアだと、ブロム氏は主張する。
ブロム氏はこう明言している。クリエイタースコアの計測結果で低い数値が出たとしても、クリエイターは収益機会を失ったり、BuzzFeedのネットワークから排除されたりはしない。計測結果のデータは今後の取引に向けた検討で、クリエイターとブランド間の相性が悪い組み合わせを特定する際の判断材料になる。収益分配型取引はクリエイターとの事前交渉で条件が決まるが、キャンペーン企画はクリエイターのスコアを考慮に入れて別途検討されるという。なおブロム氏は、平均的な収益分配モデルや、クリエイタースコアが契約交渉に及ぼす影響については言及しなかった。
ナデル氏は次のように述べている。「キャンペーンがうまくいかなかったからといって、クリエイターだけのせいにするつもりはない。キャンペーンの成否を左右する変数はほかにもたくさんある」。
BuzzFeedによるクリエイタースコアの取り組みは、インフルエンサーマーケティングにおけるクリエイター事業のニーズに応えるものになるかもしれない。
ソーシャルメディアマーケティング専門のリーチ・エージェンシー(Reach Agency)共同創業者のゲイブ・ゴードン氏は、BuzzFeedのクリエイタースコアについて、タレント事務所のマネージャーやエージェントがおこなうタレントへのフィードバックに近いと指摘する。「BuzzFeedはある意味、タレントマネジメント会社のような役割を果たすわけで、それが望ましい。同社が配信するコンテンツの成功は、契約クリエイターのパフォーマンスにかかっているからだ」。
クリエイタースコアはキャンペーン効果測定に貢献できるか
広告事業の観点からいえば、クリエイタースコアは、BuzzFeedのキャンペーン効果測定を主導する究極の施策を意図したものではなく、キャンペーン全体のパフォーマンス改善を支援するツールだとナデル氏は主張し、クリックスルー率などKPIのデータやブランドリフト調査の結果は、これからもキャンペーン後の分析に活用されるとつけ加えた。
「キャンペーンの成功に影響する要因はひとつのスコアだけではない……(中略)……クリエイタースコアは、KPIの数値ばかりに注目していると見落とすかもしれない情報の洗い出しに役立つと私は考えている」とナデル氏は語る。KPIのような評価指標をクリエイタースコアと合わせて活用すれば、クリエイター主導のキャンペーンで最高の成果を上げるための「変数の最適な組み合わせ」を導き出すヒントが得られるという。
クリエイタースコアに対する評価は、メディアバイヤーのあいだでは賛否両論で、BuzzFeedが「自分の宿題を採点するようなもの」だという見方をする者もいる。あるメディアバイヤーは、第三者によるスコアの検証がなされなければBuzzFeedが提供するデータの信頼性が薄まるおそれがあるとしながらも、キャンペーン効果測定では、データがないよりは少しでもあったほうがいいと認めている。
また、このバイヤーは次の点を指摘した。クリエイタースコアでクライアントの広告主が参照できるデータがBuzzFeed専属クリエイターのスコアに限られるなら、このツールは、キャンペーン効果測定における付加価値のひとつでしかなくなる。業界を見渡せば、タレントのパフォーマンスをプラットフォーム横断的に測定できるツールが数多く存在するため、クリエイタースコアが「不要なもの」とみなされるおそれがあるという。
重要なのはクリエイターネットワークならではの魅力
一方、ハバス・メディアグループ・ノースアメリカ(Havas Media Group North America)のインフルエンサーマーケティング担当バイスプレジデント、ロス・マコーマック氏はこう述べている。「インフルエンサーマーケティング市場はすでに飽和状態にあるため、BuzzFeedが抱えるクリエイターネットワークの規模の大きさと質の高さは、キャンペーン成果改善の一助になると評価されるだろう。とくに、メディア投資効率向上を狙う広告主が相手であればなおさらで、そんな場合には、クリエイタースコアが取引成約にひと役かうのではないか」。
けっきょく重要なのは、BuzzFeedの厳選されたクリエイターネットワークならではの魅力であり、それがクリエイタースコアの価値を決めるといっていい。
MMIエージェンシー(MMI Agency)でコミュニケーション/インフルエンサー担当シニアバイスプレジデントを務めるジェイ・パウエル氏は次のように述べている。「BuzzFeedのクリエイター人脈に特別な魅力があるか、同社がクリエイターとの契約でコスト効率を可視化できる仕組みを確立しているなら、それに広告効果測定ツールの機能が加われば、メディアバイヤーにとって納得できるソリューションになりそうだ」。
[原文:How BuzzFeed’s Creator Score is grading the impact of its creator network]
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)