ChatGPT の登場でSEOコンテンツのトラフィック減少は必至:「オリジナルのビジュアルコンテンツを優先させる」

DIGIDAY

スーパーボウルの放送は何時から? パスタの茹で時間はどのくらい? 読者が検索エンジンに入力するシンプルな質問だ。

ジェネレーティブAIチャットボットの登場は、オンラインコンテンツを制作して回答しているパブリッシャーにとって、ほかに類を見ない脅威となっている。

オープンAI(OpenAI)のChatGPTや、そのChatGPTを搭載したマイクロソフト(Microsof)のBingといったチャットボットは、ユーザーが記事をクリックスルーしなくても、プロンプトに対する回答を生成できる。そこには確かに、パブリッシャーの検索駆動型トラフィックの一部を奪うポテンシャルがある。

これを受けて、バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)やリーフ・グループ(Leaf Group)などのライフスタイルパブリッシャーは、リソースをSEO駆動型コンテンツから、オリジナルストーリーやライター個人のものの見方へと移しつつある。バッスルでソーシャルおよびオーディエンス開発部門を率いるウェスリー・ボナー氏によれば、同社の編集は今後、「共感できるユーモラスな共通体験やアドバイス」的なストーリーを中心とした、オリジナルのビジュアルコンテンツを優先させる路線へとシフトしていくという。

脱・検索駆動型コンテンツの動きは加速

リーフが手がけるホームデザインサイト、ハンカー(Hunker)のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるイブ・エプスタイン氏によれば、同サイトは今後、ライターの「好みや意見、専門知識、視点」がわかるコンテンツにフォーカスを絞っていくという。

こうした変化は決して小さなことではない。バッスルにしろ、リーフにしろ、あるいは同じくライフスタイルパブリッシャーであるトラステッド・メディア・ブランズ(Trusted Media Brands)にしろ、ChatGPTがローンチされた昨年11月以降、検索からのトラフィックのシェアに目に見える変化はまだ現れていないものの、検索からの参照トラフィックは、バッスルのトラフィックの25~30%、トラステッドのトラフィックの80%を占めている(リーフについては、回答が得られなかったため、その割合は不明)。

トラステッドの最高コンテンツ責任者であるベス・トムキウ氏は、もしAIチャットボットがGoogle検索の現在担っている役割を引き継ぐなら、これは「我々が解決すべきますます大きな問題」になるだろうと話す。「たとえ小さくなっても、本物の人間による質の高い仕事のための場所が今後も残ってほしいと個人的には思う」と、同氏は語る。これがトラステッドの編集方針にどんな意味を持つのかについてトムキウ氏は語る一方で、現状は何ら変化は起きていないという。

パブリッシャー側から見れば、脱・検索駆動型コンテンツという動きは、必ずしも目新しいものではなく、その変化のスピードが上がっているだけだ。歴史を振り返ると、パブリッシャー各社がオーディエンス拡大のためにクリックを追い求めるというスケールモデルは、通常、ビジネス成功の推進に有効なものではない。パブリッシャー各社が過去数年間、プラットフォームからの参照トラフィックへの依存度を下げるべく、サブスクリプションやニュースレターを介したオーディエンスとの直接的な関係の構築に取り組んできたのには、このような理由もある。

SEOおよびオーディエンス開発コンサルタント企業として、パブリッシャー各社をサポートするクリックシード(Clickseed)の創業者ジム・ロビンソン氏は、次のように語る。「いまも主な測定基準としてページビューにフォーカスしているパブリッシャーにとっては、これがちょっとした問題になるだろう。こうした戦略を取るパブリッシャーならば、いずれにせよ、少し立ち遅れているかもしれない」。

オリジナルの特集記事への投資を強化

AIチャットボットが検索の仕方に及ぼすであろう影響を認識しているバッスルは現在、SEOベースのストーリーやショートニュースのヒットに依存してトラフィックを促進する路線からの脱却に力を注いでいると、同社の最高コンテンツ責任者であるエマ・ローゼンブルム氏は話す。

「多くのデジタルメディア企業は、そうしたサービスストーリーによるベースレベルのトラフィックの上に構築されていたが、そんなものは5年もすれば不要になっていると思う。AIチャットボットなどの技術のほうが、報酬をもらって検索ベースの記事を書く人間よりもずっと上手く、速く、安く、この仕事をやってのけるようになっているからだ」と、同氏は語る。

また、「我々も、こんな記事を書いていたくはない」と続け、「我々が提供している有用性など、すぐに消えてしまうだろう。私はそれが嬉しい、というのも、そもそもそうしたことをやりたくないからだ(中略)今後は、コンピューターでは再現できない領域に資金を投入していくことになるはずだ」と話した。

ローゼンブラム氏によれば、バッスルは現在、オリジナルのビジュアルコンテンツやインタビュー、プロフィール、特集記事への投資を強化しているという。バッスルが制作するコンテンツは今後、全体的に少なくなっていく見込みだが、反対にソーシャルメディアで配信するためのショートフォーム動画は増える見込みだ。チャットボットは「ジーンズの試着」もできなければ、さまざまな体型ごとのジーンズの画像を作成することもできないと、ボナー氏は話す。

オーディエンス開発およびマーケティング企業のトゥエンティー・ファースト・デジタル(Twenty-First Digital)の創業者でCEOのメリッサ・チャウニング氏によれば、ChatGPTが注目されている今、ライフスタイルパブリッシャーの「最も価値のある資産は、コンテンツ内の写真やビジュアルだ」という。

イベントやニュースレターにも注力

バッスルは、こうした変化に伴って予想されるトラフィックの減少を、どう埋め合わせるつもりなのだろうか? 

ローゼンブラム氏にメールで質問したところ、こうした回答が返ってきた。「いまのところ、喫緊の課題としてトラフィック減少の補填に取り組む計画はない(中略)多少の減少は仕方がないと思っている。デジタルメディア企業がGoogleを追いかけたところで、負け戦になるのは必至だ。だからバッスルは、イベントやニュースレターなどのエリアに力を入れている。これらのビジネスなら、外部のプラットフォームに頼らなくてもいい」。たとえば、同社のニュースレタービジネスは、その購読者数が500万人に到達するまでに成長を遂げている。前年比で32%もの成長だ。

トラフィックの減少は、広告配信量の減少を意味する。

となると、バッスルのビジネスも大きな打撃を受ける恐れがある。しかし、同社の売上の大部分はダイレクト広告によるものであり、プログラマティックが占める割合は今後も「小さい」状態が続くことが予想されると、ローゼンブラム氏は話す。「この新しい世界で、イベントやニュースレターによる売上が大きく伸びて、たとえプログラマティックが減少しても、それを相殺してくれると予想している」と、同氏は語る。

現時点では不明なAIチャットボットの採用

リーフのエプスタイン氏は、ChatGPTのローンチはGoogle検索の進化の「延長線上にあるもの」にすぎず、「まったく新しいものでも、驚くべきものでもない」と考えている。パブリッシャーは過去にも、「強調スニペット」への対応を強いられている。パブリッシャーのページから一部を引用して、ユーザーのプロンプトにGoogle検索のページ内で回答するこの機能は、2014年にローンチされた(2020年には、大規模なアップデートが行われた)。

しかし、チャットボットの採用については、現時点では不明な点が多いため、パブリッシャーが「大幅な路線変更を実行に移す」機は「まだ熟していない」と、クリックシードのロビンソン氏は語る。差し当たってパブリッシャーがすべきことは、参照トラフィックの分析結果を注視して、ユーザーの行動に大きな変化が起こっているかどうかを確かめることだと、同氏は話す。

「たとえ構想からChatGPTを外すことになっても、その計画は役に立つ。その力のすべてをGoogleに捧げたい企業など、ありはしない」と同氏は続け、「こうしたことを早急に話し合っておく必要がある」と言い添えた。

[原文:ChatGPT’s arrival accelerates lifestyle publishers’ move away from SEO-driven content

Sara Guaglione(翻訳:ガリレオ、編集:島田涼平)

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