2021年が数々のブランドが独自の再販プログラムを立ち上げた年だったとすれば、2022年は再販事業の地固めの年といえるだろう。
パリの再販プラットフォーム「ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)」は3月に米企業トレードシー(Tradesy)を買収した。5月にはシンガポールに本拠を置くユーザー同士の再販アプリ「カルーセル(Carousell)」がオンラインリサイクルショップ「リファッシュ(Refash)」を、そして10月にはスニーカー再販のゴート(Goat)が競合であるグレイルド(Grailed)を、それぞれ買収している。2021年にはエッツィ(Etsy)がディポップ(Depop)を獲得。2022年10月には韓国のIT大手ネイバー(Naver)が、ポッシュマーク(Poshmark)を12億ドル(約1600億円)で買収した。
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再販を手掛けるヴィヴレル(Vivrelle)、トリート(Treet)、リフラント(Reflaunt)、プラム(Plum)、トレードブロック(Tradeblock)など5社が昨年調達した資金総額は約2億ドル(約264億円)に上る。ケリング(Kering)やソフトバンク(SoftBank)など多額の資金を投じることができる大企業が、再販の領域に関心を示し、出資しているのだ。
しかし2023年にはこれらの資金が、再販業界に問題を引き起こす可能性があると考えられる。
一方で、投資家からの関心は、多くの企業に再販市場への新規参入を促している。数々のブランドが独自の再販プログラムを立ち上げたのに加えて、新たなサードパーティのプラットフォームや、トリートなどRaaS(リセール・アズ・ア・サービス)によって、この領域はにぎわいを見せている。そのため、再販を手掛ける小規模な企業は、新規顧客の獲得においてより戦略的であることが求められる。
「メタ(Meta)での広告スペースははるかに高額だ」と語るのは、設立から1年となる女性のフォーマルウェアに特化した再販プラットフォーム「クイーンリー(Queenly)」で成長担当責任者を務めるレイシー・ナカシマ氏。「探している顧客を見つけることが非常に難しくなり、他の宣伝方法を模索してきた。TikTokとインスタグラムのリールを試している。最終的には新規顧客を、お金を払わずに獲得したいと考えている」。
もう一つの課題は収益性だ。最近では、大規模な資金調達ラウンドは諸刃の剣になる。かつてベンチャーキャピタルの投資家は投資先が利益を出すようになるまで何年も待ったものだったが、状況は変わった。利上げが進み、経済の不確実性がますます高まるなかで、投資家たちがなるべく早い収益化を望むようになったのだ。
このことが、ザ・リアルリアル(The RealReal)のような大企業にも大きなプレッシャーを与えている。当初は2024年に黒字化すると予測していた同社だったが、11月に戦略を変更。黒字化を早めるため、低コストでの取引に課す手数料を引き上げる方針を打ち出した。
同社の暫定共同CEOであるラティ・サヒ・レベスク氏は第3四半期の業績報告で、家庭用品など採算性の低い分野について再考していくと述べた。そもそも採算性が低い分野をなぜ扱うのかという率直な質問が投げかけられ、それに対する回答が同社の優先事項がどのように変化したのかを物語っている。
「私たちは『どんな犠牲を払ってでも成長してきた』ということを、常に話している。あらゆるものを新たな視点から見つめ、一般的に不採算分野と呼ばれるものについても注目してきた。商品分野だけでなく、ダイレクトビジネスについても同様のことが言え、ある価格帯を下回るアイテムは利益を上げていなかった。商品を取り扱い、成長することが本当に重要だったのだ」。
2022年はインフレが、価格に敏感な消費者に中古品購入を促し、この傾向は今後も続くとみられる。だが、再販は2023年も実入りの良い事業であるため、競合がひしめき合う市場と、高まる収益性への期待という2つの難しい課題に直面することになるだろう。
[原文:The state of resale in 2023: Competition, consolidation and a push for profitability]
DANNY PARISI(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)