ウォルマート、アプリ更新の焦点はパーソナライゼーション:「顧客の購買行動を常に注視している」

DIGIDAY

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ウォルマート(Walmart)は、最新の技術的なアップグレードにおいて、引き続きパーソナライゼーションを最前線に置いている。

同社は9月13日、自社のアプリとウェブサイトを更新すると発表した。この更新には、特定の衣服にマッチする靴、バッグ、アクセサリーを勧めるなど、コーディネートを完成させることができるスタイリング機能が含まれている。また、ギフトレジストリをリストを作成・共有する機能や、他人にEBT対象商品を表示するをフィルタの機能も追加されている。その数日後には、バーチャル試着機能を拡張し、利用者が自分のスマートフォンを使用して、服を着た姿がどのように見えるかを確認できるようにした。

ウェブサイトとアプリのアップデートを説明する動画(ウォルマート)

急速に変化する顧客の需要

大手小売業者であるウォルマートは、利用者がより自信をもって買い物でき、より簡単にショッピングを行えるようにする試みとして、カスタマイズを中心とするテック機能に重点を置いてきた。これらの更新は買い物客の要求が急速に進化したことに対応したものだと、専門家は述べている。同社は、買い物客の個別の好みに合わせてショッピング体験を提供できるようにすることで、急速に変化していく顧客の需要により的確に応じられるようになることを期待している。

ウォルマートeコマース(Walmart eCommerce)のサイトエクスペリエンス担当シニアバイスプレジデントを務めるブロック・メッキール氏は、次のように米モダンリテールに語った。「パーソナライゼーションすることによって、顧客が誰なのか、何を購入しようとしているのかが判明するため、顧客の意思決定を絞り込むことができる。当社は顧客についてよく理解している」。

ウォルマートは、最近の決算発表レポートで、米国部門の在庫が第2四半期に前年と比べて26%増加したと発表した。この増加は、顧客の要求の不一致が一因であるといわれている。結果として、この四半期に同社の営業収入は6.8%減少し、69億ドル(約9870億円)になった。

メッキール氏は、アパレルはパーソナライゼーション可能な機会が多く存在するカテゴリーのひとつだとし、ウォルマートが昨年買収した仮想試着プラットフォームのジーキット(Zeekit)の拡大もそれを目的としていると語る。しかし、ウォルマートが注力しているカテゴリーはアパレルだけではない。6月には、特定の家具や屋内装飾の商品が自宅内でどのように見えるかを確認できるアプリベースのAR機能をリリースした。食料品の分野でも、商品をスキャンして、そのアイテムが自分の食事の好みと合致しているかどうかを調べることができるオンラインおよびアプリ内ツールを1月にリリースした。

メッキール氏は、このサイトの更新が、顧客やウォルマートの提携企業からのフィードバック、さらにウォルマート自身の顧客に対する観察から得られたものだという。同氏は次のように述べている。「当社は、顧客のショッピングの行動を常に注視している。顧客が商品を見つけやすくし、顧客が探しているものを見つけ、適切な品揃え、最良の価格を提示できるようにしたいのだ」。

メッキール氏は、これらの新しいプログラムで達成をめざしている特定のKPIを明かしていないが、これらの新しいテック機能を追加することによって、利用者との信頼を築き上げ、繰り返し購入を促進することに期待していると語る。

「パーソナライゼーション」各社の動き

近年において、小売業者は個別の利用者について、それらの利用者がどこでショッピングを行うかにかかわらず、ショッピングエクスペリエンスをパーソナライズ化するための作業を行ってきた。男性用ボディケアブランドのヒューロン(Huron)は、買い物客が好きな商品の組み合わせをカートに入れ、一定額以上の買い物をすればインセンティブが得られる「ビルド・ユア・オン・バンドル(自分用のバンドルを作る)」機能を提供している。ジェイシーペニー(JCPenney)は人工知能の機能を提供する計画を9月に発表し、顧客がメイクアップを仮想でテストし、特別にカスタマイズされたスキンケアの助言を受けることができるようにするとしている。

カスタマーエクスペリエンス・プラットフォームのエンプリファイ(Emplifi)の最高エクスペリエンス責任者を務めるシェリー・ホルンハーゲン氏は、AR技術などショッピングエクスペリエンスのパーソナライズ化に役立つツールは、返品を減らすための手段となり、小売業者の収益改善にも貢献すると語る。同氏は、顧客が買い物に満足すれば、返品する可能性は少なくなると語る。スナップ(Snap)とピュブリシスメディア(Publicis Media)によって行われたアルターエージェンツ(Alter Agents)の調査によると、回答者の80%はARを使用して購入したものについて、より自信をもって購入できたと回答している。

ホルンハーゲン氏は次のように述べている。「消費者の観点からは、ブランドに共感できることが重要だ。ブランドが自分との一体感のため多くのことを行っていると感じることができれば、それはブランドに対するロイヤルティとロイヤルティのあるファンベースを構築することになる」。

ウォルマートは店舗でも、ショッピングにさらにパーソナライズ化されたタッチを付け加えることを検討している。同社は6月、顧客が商品情報を見る方法をパーソナライズできるARツールを開発していると明かした。たとえば、顧客に食事制限がある場合、食品の原材料をすばやく絞り込むことができるという。

投資に見合うか

しかし、高度なパーソナライゼーションが期待に応えることができるとは限らない。オムニコン・コマース・グループ(Omnicom Commerce Group)のコマース担当シニアバイスプレジデントを務めるブライアン・ギルデンバーグ氏は、小売業者が非常に多くの時間とエネルギーを費やした結果、見返りがほとんど得られないというリスクを冒している可能性があると語る。「ウォルマートが顧客に対して持っている情報は、高度な自動化を使用しなければ、有意義な方法で収益化することは困難だ」と、同氏は述べる。

それでも、ウォルマートのメッキール氏は、同社が近い将来、このような投資をすぐに減らすことは計画していないと語っている。

メッキール氏は次のように述べている。「当社は顧客に耳を傾け続ける。常に顧客を意思決定の中核に置き続け、顧客に従って特長や機能の導入を優先すれば、顧客が当社から期待しているものを提供し続けることができるだろう」。

[原文:‘We’re constantly looking at the customer shopping behaviors’: Walmart hones in on personalization in latest round of tech updates]

MARIA MONTEROS(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)

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